2021年上半期(1月~6月)に、もっとも売れた輸入SUVは、フォルクスワーゲン「T-Cross(以下、Tクロス)」となった。Tクロスは、欧州地域で爆発的なヒットとなっているVWのSUV 3兄弟(ティグアン、T-Roc、Tクロス)の末っ子である。
2020年1月、日本市場に登場。2020年は、上半期、下半期ともに輸入SUVカテゴリで、1位を獲得するなど、大人気となっている。人気輸入SUV「Tクロス」の魅力とは!? 国産のライバル車と比較しつつ、Tクロスの魅力、そして弱点についても、せまってみよう。
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文/吉川賢一
写真/池之平昌信、平野 学
[gallink]
コンパクトなボディに凝縮された「質実剛健」感
フォルクスワーゲンの SUVシリーズの中で最も小さなコンパクトSUVとして、2020年1月に日本導入されたTクロス
VW「Tクロス」の2021年上半期の新車登録台数は、5193台。冒頭でふれたように、SUVカテゴリでは1位、輸入車全体でみても、1位のMINI(9135台)に続く2位となる好成績だ。「MINI」の数字の中には、3ドアや5ドア、そしてクロスオーバーなど、数車種が含まれているので、1車種で最も売れた輸入車は、Tクロスということになるかもしれない。
2021年上半期輸入車登録台数ランキングで衝撃的なのは、Tクロス躍進の陰で、同ブランド「ゴルフ」がトップ10から抜けてしまっていることだ。
かつては、フォルクスワーゲンといえば「ゴルフ」というほどに、圧倒的な強さを誇っていたが、2016年に、ランキングでMINIに抜かれたあとは、メルセデス・ベンツCクラスとの2位争いを繰り広げていた。2020年下半期には、3位に位置していたが、2021年上期ではなんと11位以下にまで落ちてしまっている。
コロナ禍によって、新型ゴルフ8の日本導入が大きく遅れたことや、半導体不足なども影響しているだろうが、TクロスやT-RocといったSUVがのびたことで、ゴルフが圧迫された、ということが大きな要因であろう。
<2021年上半期SUV登録台数トップ3(1-6月)>
1位(総合2位) フォルクスワーゲン「Tクロス」 5193台
2位(総合5位) フォルクスワーゲン「T-Roc」 3854台
3位(総合7位) ジープ「ラングラー」 3749台
<2020年下半期SUV登録台数トップ3(7-12月)>
1位(総合5位) フォルクスワーゲン「Tクロス」 4065台
2位(総合9位) メルセデス・ベンツ「GLB」 3512台
<2020年上半期SUV登録台数トップ3(1-6月)>
1位(総合4位) フォルクスワーゲン「Tクロス」 4865台
やっぱり小ささは「正義」!! ヤリスクロスよりも実はコンパクト
Tクロスの欧州地域でのライバルは、ルノーキャプチャー、ダチアダスター、プジョー2008、トヨタヤリスクロス、といったところだ。全長4115mmという、非常にコンパクトなサイズは、ハッチバックのポロ(全長4060mm)に次ぐ小ささ
全長4115×全幅1760×全高1580mm、ホイールベース2550mmのコンパクトなボディサイズは、VWではハッチバックのポロ(全長4060mm)に次ぐ小ささだ。ヤリスクロスとサイズはほとんど変わらず、むしろ65mm短い。
しかし、Tクロスのほうが角の立ったボクシーなスタイリングのため、ヤリスクロスよりも車室内の広さは勝っている。四角いリアサイドウインドウも、前後席からの見晴らしがよく感じる。最小回転半径も、5.1mとコンパクトSUVの中でも小さく、これも嬉しいポイントのひとつだ(※ヤリスクロスは5.3m)。
パワートレインは、排気量999ccの直列3気筒インタークラー付きターボ(最高出力85kW(116ps)、最大トルク200Nm)と7速DSGの組み合わせのみ。本国ドイツでは、ハイパワーな1.5LのTSIもラインナップにあるが、常用速度域がドイツよりも低い日本市場には不要、ということだろう。
WLTC燃費は16.9km/L(市街地13.2、郊外17.1、高速19.1)と、国産のコンパクトSUVと比べていいとはいえないが、ドイツのメーカーらしく、高速巡行での燃費を優先したセッティングとなっている。
ドア閉じ音からも伝わる「質実剛健なつくり」
コンパクトだが、スクエアなフォルムで広い室内空間と荷室スペースを実現している
ドアを開けた瞬間の「バスッ」という音の質は、「つくりの良さ」を感じさせてくれる。近年は、国産車であっても、ドア開閉時の音にこだわるようになってきたが、Tクロスのは、やはりドイツ車らしさを感じさせるものだ。
久しぶりに見た手引きのサイドブレーキもいい。ただ、ACC(先行車追従型クルーズコントロール)の停車時のホールド時間が5秒程度しかない、というのは、もう少しなんとかしてほしかったところだ。
走り始めれば、軽い身のこなしで運転がとても楽に感じる。軽自動車に毛の生えた程度の排気量で、どうしてこれほど力強い加速や巡行走行ができるのかと驚く。7速DSGについては、低速発進時の動作を気にされる方も多いが、最近のVW車のDSGにケチをつけることはごく稀だろう。
エンジンの回転数をさほど上げずに、「クン!! クン!! 」とシフトアップをしていくので、イメージ通りの加速に乗せやすい。そのため、中低速で走るワインディングや高速巡行は大の得意だ。その半面、段差乗り越し時の突き上げは大きめ。
「ドタン! 」といったインパクトノイズと鋭いショックは、後席だと少しきつい。筆者が試乗したのが、45扁平の18インチタイヤをはいたモデルだった、ということが原因であろう。購入される方は、上級グレードを欲張らずに、16インチや17インチタイヤを選んだ方が、幸せになれると思う。
「使い勝手の良さ」と「新世代のデザイン」がTクロスの魅力
このTクロスのライバル、といえば、国産コンパクトSUVのヤリスクロスやホンダヴェゼル、といったところだ(キックスは、パワートレインがe-POWERのみとなるので今回は除外)。ただ、比較するにあたって、どうしても割高となる輸入車と、コストで有利な国産車たちとを、コスパで比較してもしょうがない。パッケージングや使い勝手、性能に特化して考えてみようと思う。
となると、Tクロスの勝ちポイントは2つ、「使い勝手の良さ」と「新世代のデザイン」だ。Tクロスは、パッケージングが秀逸。全長はヤリスクロスよりも短いのだが、VDA方式による荷室容量は、ヤリスクロスが371L、ヴェゼルは390Lであるのに対し、Tクロスは455L。もっと大きなカローラクロスの 487Lに迫る勢いだ。
これは、傾斜の少ないリアウインドウや、しっかりと確保した全高など、Tクロスの荷室形状が大いに関係する。また、荷室口の幅がしっかりと広めにつくられており、容量だけでなく、荷物の乗せ降ろしについてもしっかりと考えられている。
また、最小回転半径5.1mも、地味だがものすごく効くポイントだ。「転回まであと少し!! 」の先に曲がる余裕があることで、駐車場やUターンのシーンで大いに役立つ。
ドイツ車は全般的に小回り性能に優れているが、なかでもTクロスは秀逸だといえる。ちなみにヤリスクロスは5.3m、ヴェゼルも5.3m(18インチだと5.5m)、0.2mの差だがその差は大きい。ちなみにTクロスは、16インチでも、17インチでも、18インチでも5.1mだ。
デザインについては、これまでVWのデザインは、よくいえば「質実剛健」、悪くいえば「真面目過ぎてつまらない」と、いわれてきた。
しかし、Tクロスのデザイン、特にボディーカラーに関しては、明るい緑の「マケナターコイズメタリック」や、鮮やかなオレンジ色の「エナジェティックオレンジメタリック」など、華やかで若々しい。
Tクロスのインテリア。助手席側のダッシュボード上の模様などは、オシャレなポイントだ
インテリアは、ステアリングホイールやシフトノブ、ハード樹脂を多用したインパネやダッシュボード、センターコンソールなどは、これまでの「質実剛健なVW」を感じさせるものだが、助手席側のダッシュボード上の模様など、(若干安っぽさはあるが)オシャレなデザインも織り込まれており、こうしたことも、Tクロス飛躍の一因となっているであろう。
輸入車としては頑張った「価格の安さ」
2020年12月4日に一部仕様変更を行っており、新エンブレム・ロゴへの変更、新オンラインサービス「We Connect」に対応したインフォテイメントシステム「Discover Media」のアップデート、Tクロスへのデジタルメータークラスターが導入された
現在、日本で販売されているTクロスは、大きく分けると「TSI Active」(286万円~)、「TSI Style」(312万円~)、「TSI R-Line」(350万円~)の3バリエーションだ。
ここに、インフォテイメントシステムのDiscover Pro(SSDナビ、オーディオ、TV、ジェスチャーコントロールなど)が約15万円、セーフティパッケージ(全車速追従機能付ACCやレーンキープアシストシステムなど ※R-Lineは標準装備)が約17万円、テクノロジーパッケージ(デジタルメータークラスターやスマホのワイヤレスチャージングなど)が約9万円、これらのパッケージオプションをお好みで選ぶことになる。
非ハイブリッドのピュアガソリン車と考えると、やはり「輸入車」といった価格であり、国産SUVと比べて割高な印象は否めないが、プラス40万円程でフルオプション状態になると考えれば、輸入車としては、良心的な価格だといえる。
このように、しっかりと中身を確認すると、Tクロスが売れている理由もよく分かる。また、Tクロスの兄貴分である、「T-Roc」も躍進しているようだ。Tクロス・T-Rocの兄弟は、当面のあいだ、輸入車ランキングでその名をとどろかせることだろう。
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