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2代目ポルシェカイエンではオンロードでの高性能化が重点的に行われた【10年ひと昔の新車】

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2代目ポルシェカイエンではオンロードでの高性能化が重点的に行われた【10年ひと昔の新車】

2010年3月のジュネーブオートサロンで2代目ポルシェカイエン(958)がワールドプレミアされて登場した。初代ではまったく新しくSUV市場に参入するため本格的なオフロード性能を備えていることが必要であったが、この2代目では、よりスポーティでポルシェらしい価値の実現へ重点は移された。ここではドイツ・ライプツィッヒで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年7月号より)

ユーザーは「よりスポーティでオンロード志向のモデルを望んでいる」
新型カイエンの開発をとりまとめたDr・ミハエル・ライター氏によれば、そのテーマは、第一に「オンロードのパフォーマンスにおいてベストクラスであること」だったという。

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なぜなら、実際にカイエンを購入したユーザーを対象とした同社の調査によれば、これまでに28万台販売された初代カイエンで、実際にオフロード走行を行っていたのはわずか1%。ほとんどのユーザーは「よりスポーティでオンロード志向のモデルを望んでいる」という結果が出ていたからだという。

そこで新しいカイエンでは、オフロードでの性能に関しては、初代モデルに近いレベルは確保するものの、オンロードでいかにスポーティかつ快適な性格を実現できるか、そしてどれだけ高効率で優れた燃費を実現できるのかということが最前面に打ち出されたのだ。

ホイールベースは40mm延長されて、後席の居住空間が拡大、ボディサイズはやや大型化された。4WDシステムは副変速機がなくなり、プロペラシャフトや前後ファイナルドライブユニットの軽量化と合わせて約33kgの重量を低減。ボディ構造でも大幅な軽量化が図られて、初代カイエンとのボディ比で111kgも低減された。また燃費性能向上のために、エンジン本体の効率化と軽量化は当然のこととして、さらに8速ATや緻密なサーマルマネージメント制御なども採用された。

エクステリアのデザインは、ポルシェらしく全面的に曲面を活かした女性的な優美さが取り入れられたものとなった。室内の雰囲気や質感も、パナメーラで先行して展開されたイメージと、911との関連性を印象づけるメーターパネルなど、ポルシェならではの演出がふんだんに盛り込まれた。これまでのカイエンで課題と言われていた、インテリアの質感も大幅に向上されたのだ。

軽量化と8速ATの採用、よりポルシェらしい走り味
最初に試乗したのはカイエンS。ライプツィッヒ市内の道は、路面電車の軌道と、旧東ドイツ領内ということを感じさせる荒れた舗装路面がしばしば現れる。オプションのエアサスペンションとPASAM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム)、295/35R21サイズのタイヤを装着した試乗車は、硬めのセッティングのサスペンションによって細かな上下動で揺さぶられるものの、それは「ガツン」とではなく、衝撃のカドが取れて伝えられてくる。その意味で、乗り心地は悪くない。ただし21インチサイズの足まわりは、やや重たい印象を受ける。 

最高出力が従来型より15psアップの400psとなり、パナメーラS用と同仕様となった4.8L V8エンジンは、気持ちいいエンジン音を発しながら回っていく。スムーズさがより増した印象で、力強さが際立つ。

8速ATは、従来の6速ATよりも、右足のペダル操作とクルマの動きにダイレクト感が強まった印象。100km/h時のエンジン回転数は8速で1600rpmほどで、静粛性や燃費面で大きな効果がある。

従来型カイエンが採用していたPTM(ポルシェトラクションマネージメントシステム)は、前後で38:62の基本駆動力配分比を備えた電子制御多板クラッチ式だった。それが新型のカイエンターボ/カイエンS/カイエン用のPTMでは、911ターボやパナメーラで採用されている、前後の駆動力配分を走行状況に応じて任意に可変させるアクティブ4WD方式となった。そのため、前後駆動力の定まった配分比というものはないが、基本的に駆動力はリア寄りで、運転している感覚としてはFRの2WFDモデルに近い印象だ。

アウトバーンでコーナーを抜けていく際も、ハンドルの操作に合わせてノーズが素直にイン側へと入っていく感じである。ハンドルのセンター付近での操舵感はしっかりと締まっていて、ハイスピード巡航時にも余計な不安感は覚えない。

また試乗車にはオプションのPTV plus(ポルシェトルクベクトリングプラス)も装備されていた。

これは、必要に応じてコーナリング中のイン側リアホイールに軽くブレーキをかけるシステムと電子制御式リアデファレンシャルが加わるもので、PTMやスタビリティコントロールと統合制御されて、よりダイナミックな走りと安定性を実現してくれるという。その効果も相まって、スポーティなFRモデルであるかのようなドライビングフィールを実感させてくれたのだろう。

動力性能と燃費性能を両立させるハイブリッドの存在意義
続いて試乗したのは、カイエンSハイブリッド。基本システムをトゥアレグハイブリッドと共用するこのモデルは、わかりやすく言えば、アウディS4で採用された3L V6スーパーチャージドエンジンの後ろにクラッチ機構を挟み47psのモーターと8速ATを組み合わせたパワーユニットを搭載している。センターデフはトルセン式で、前後駆動力の基本配分は40:60、パワーステアリングは唯一、電動油圧式となる。

基本的にスタートは、モーターのみのEVモードである。アクセルペダルをゆっくりと踏めば60km/hまでそのまま行ける設定だが、試乗時はそこに到達する前でエンジンが始動していた。ちなみにEVモードでの走行可能距離は数kmという。

アクセルペダルを深く踏み込んだ加速は、エンジンのスーパーチャージャーによる過給とモーターのアシストが合わさり、実に力強い。

そして大きな特徴は、燃費向上のためにアクセルオフ時にエンジンとモーター間のクラッチが切れると同時にエンジンがストップ、惰性で走っていく「セーリングモード」を備えることだ。

アウトバーンでの走行時には、巡航状態に入り、下り坂などでアクセルオフにすると瞬時にクラッチが切れてエンジンストップ。転がり抵抗は小さく、平坦路では少しずつ速度が落ちていくが、惰性で走り続ける。このモードは、最高で156km/hまで動作する設定となっている。

速度を回復させるためにアクセルペダルを踏めば、瞬時にエンジンが始動してクラッチがつながり、加速できる。この接続時の挙動は、高速時はほぼスムーズだった。

ATにはオイル循環用の電動オイルポンプも備えるので、エンジンオフ時でもATの作動に問題はない。またパワーステアリングも電動油圧式なので、セーリング状態でもアシストが効く。

ただし、ハイブリッドに標準装備となる、速度によってアシスト量を変化させるサーボトロニック機構は、そのアシストの仕方にやや不自然な印象を受けた。通常の油圧式パワーステアリングを備えるSやターボにも、これらではオプション設定となるサーボトロニックが装備されていたが、それはごく自然な操舵フィーリングだった。

圧倒的な加速力を備えるカイエンターボ
カイエンターボは、まさに最強モデルらしく圧倒的な加速力を備えていた。最大パワー/トルクともにこれまでのターボとスペック上の値は変わらないが、8速AT化も含めて燃費性能は従来型比で23%もの向上が実現されているという。

一般道の試乗では、20インチホイールを装着するエンジニアお勧めのモデルを選んだ。なるほど、一般道での乗り味としてはこちらの方がスムーズで走らせやすい。乗り心地も快適である。ターボはエアサスペンションとPASMが標準装備となるが、その設定はノーマルがもっともバランス良く感じられた。

カタログ値では0→100km/h加速が4.7秒、最高速度278km/hを誇るが、さすがに速度無制限区間のアウトバーンといえども、交通量の多い金曜午後の状況下でそれを確認することはできなかった。

それでも、前方が空いた状況で少し踏み込んでいくと、速度計はアッという間に240km/hオーバーの値を示していた。またカイエンS/カイエンSハイブリッドでも同様の機会に試してみたところ、ともにやすやすと220~230km/hでの巡航を実現してみせてくれた。

今回ハンドルを握ることのできた3モデルの中では、カイエンSのシャープなドライビング感覚が最もポルシェ的な存在だと思えた。また燃費面では、渋滞に遭遇するなどはあまり好条件ではなかったが、各モデルとも平均して7~8km/L前後という値を示していた。

日本への導入は、まずカイエンターボとカイエンSからで、今年の夏過ぎ頃から上陸する予定だという。なおカイエンSハイブリッドと、今回用意されていなかった3.6L V6エンジン搭載のカイエンは、それより遅れての導入となる。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁)

ポルシェ カイエンS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4846×1939×1705mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2140kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4806cc
●最高出力:294kW(400ps)/6500rpm
●最大トルク:500Nm/3500-5300pm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:258km/h
●0→100km/h加速:5.9秒
※EU準拠 

ポルシェ カイエンS ハイブリッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4846×1939×1705mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2315kg
●エンジン:V8DOHCスーパーチャージャー+モーター
●排気量:2995cc
●エンジン最高出力:245kW(330ps)/5500rpm
●エンジン最大トルク:440Nm/3000-5250rpm
●モーター最高出力:34kW(47ps)/1150rpm
●モーター最大トルク:300Nm/1150rpm
●システム最高出力:279kW(380ps)/5500rpm
●システム最大トルク:580Nm/1000pm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:242km/h
●0→100km/h加速:6.5秒
※EU準拠 

ポルシェ カイエンターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4846×1939×1702mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2245kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4806cc
●最高出力:368kW(500ps)/6000rpm
●最大トルク:700Nm/2250-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:278km/h
●0→100km/h加速:4.7秒
※EU準拠 

[ アルバム : 2代目ポルシェカイエン(958) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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