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ジープ ラングラーをイタリアの森林ステージで試乗。クルマとしての“旬”を山田弘樹が語る

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ジープ ラングラーをイタリアの森林ステージで試乗。クルマとしての“旬”を山田弘樹が語る

CAMP JEEP 2019

キャンプ ジープ 2019

ジープ ラングラーをイタリアの森林ステージで試乗。クルマとしての“旬”を山田弘樹が語る

ヨーロッパ随一のジープイベントの会場で試乗

私は昭和に生まれ、1989年に始まった自動車黄金期にどっぷりと浸かったスポーツカー世代だが、いまジープ・ラングラーというクルマに大きな魅力を感じている。

そのきっかけをくれたのは、イタリアで開催された「CAMP JEEP(キャンプ・ジープ)」というイベントだった。これはヨーロッパ中から約700台のジープとそのオーナーが集まるイベントで、今回はトレンティーノ アルト・アディジェ州にあるリゾート地、「サンマルティーノ・ディ・カストロッツァ」で開催された。

いまやジープはクライスラーを傘下に収めたフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のブランドだが、やはりイタリアの地でジープに乗るというのは一種独特な感覚だった。共通言語は英語だが“R”の発音は巻き舌で、陽気に“Ciao,ciao!”とスタッフが語りかけてくる。

ピックアップの“グラディエーター”と限定車の“1941”を発表

プレゼンテーションでは巨大なステージが設置され、日本には未導入の「グラディエーター」と、MOPA(モパー)が手がけた「ラングラー1941」が発表された(1941台の限定車)。

グラディエーターはピックアップスタイルのジープ。そして1941は既にジュネーブショーでも発表されたモデルだが、数字の意味は初代ジープが誕生した年を表している。2インチリフトされた車高や、シュノーケリングを装着した姿が印象的な一台である。

ちなみにモパーはクライスラー系の純正パーツ及びアクセサリーを扱うブランド。そしてジープオーナーの実に9割以上が何かしらのモディファイを行うことから、今回もこれを大々的にコマーシャルしたのである。

試乗は翌日から開催されるキャンプ・ジープのアトラクションコースを使って行われた。特設ステージにはスウェイバー(スタビライザーのことだ)をオフにして接地性を確保する丸太越えや、登坂/モーグル系アトラクションが用意されていたが、圧巻だったのは森林ステージだった。

イタリアの森林ステージをラングラーで攻める

「RUBICON WAY IN」。ジープの中でもラングラー・アンリミテッド・ルビコンだけが入ることを許されたコースに行くと、入り口ではオフィシャルが「ここからは“4L”に入れてね」とだけ付け加え、笑顔で送り出してくれた。副変速機で最も低いギヤ比を選んで走ってくれという意味である。・・・それだけ?

本当にそれだけなのだ。目の前に見えるのは、オフロード初心者なら絶対に躊躇するほど狭くて急な林道。「ここを入って行くの?」と聞くとやはり彼は「そうだよ!」と言う。よほどラングラーの性能に自信があるのか、天性のラテン気質なのか。きっとその両方だろう。意を決してアクセルを踏み込むとラングラーは、私の気持ちとは裏腹に意気揚々と森の中へと入って行った。

2種類のエンジン、2種類のボディタイプを試す

今回試乗したのは3種類のルビコンだった。欧州仕様ということか3.6リッターV6モデルは用意されておらず、2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ(272ps)を搭載する2/4ドアと、2.2リッター直噴ディーゼルターボ(200ps)を搭載する4ドアを交互に乗り比べた。ちなみにディーゼルは、アルファロメオにも搭載されるアルミブロックの最新ユニットだ。

ネバダ州からカリフォルニアへと続く、世界一過酷といわれるオフロード「ルビコントレイル」。ここから名前を取ったルビコンは、遠く離れたイタリアの山道を苦もなく駆け上った。見晴らしの良さは悪路でラインの自由度を増やし、適度にタイトなコクピットは操縦性の高さに貢献する。

エンジン特性は甲乙付けがたいというのが本音だ。2.2リッターディーゼルターボの450Nm/2000rpmという最大トルクは、粘り強く4ドアモデルの車体を押し上げる。右足の親指に僅かに力を込めるだけで推進力の調整が可能なアクセラレーションは、初めて見る天然のモーグルを乗り越える際にも心強い味方となる。

しかし2.0リッター直列4気筒ガソリンターボもその最大トルクは400Nm/3000rpmと過不足ない出力特性で、多少強引にアクセルを踏み込めば絶対的なパワーの差で悪路にタイヤを食い込ませる。ここにローギヤード化されたギヤ比を用いれば、ターボの低速トルクをそつなく補うのである。むしろそのラフささえもが、アトラクションだと感じた。

スポーツの2ドア、利便性の4ドア

それにも増して驚いたのは、2ドアモデルの小回り性能だった。4ドアモデルでは切り返しが必要なほど回り込んだカーブをものともせず、なんと斜面にアウト側の前輪を乗せながら、壁を登るようにしてこれを旋回してしまったのだ!

4ドアの3008mmに対して、2ドアは2459mmのショートホイールベース。計算されたアプローチアングルの確保と(34度)、余裕あるグランドクリアランス(255mm)。こうした要素が走りに貢献するのはわかっていても、それを実際に体感するとしないとでは大きく違う。

日常での利便性を問うなら当然4ドアモデルの方が使い勝手が良く、押し出しだって効いている。しかしラングラーをスポーツギアとして捉えたとき、この小ささは運転の面白さに直結する。オフロードもオンロードも、小さいクルマは楽しいのだ。

森林を抜けるとそこはグラベルロードだった。ルビコンの走破性に嬉々としてアクセルを踏み込み、ときに4輪を滑らせながら走っていたが、ふと我に返って凍り付いた。視界が開けた場所はまさに断崖で、遠くには山々がそびえている。下を向けば先ほど登ってきた獣道と林が小さく見える。

「落ちたら一巻の終わりだな」。本気でそう思える山道を、なんの迷いもなく誰にでも走らせる大らかさ(?)には、日本との違いを痛感した。全ては自己責任であり、迷惑をかけないことはマナー。だからこそテスターは自分の度量の範囲内で、本物のアドベンチャーを体感できるのだ。

道具を使いこなす喜びを感じられるラングラー

何度も“おかわり”をするにつけ、ジープの良さが脳みそとカラダにしみこんでくる。リサーキュレーティングボール式のステアリングは確かにオンロードでの緩慢さを許すが、だからこそ岩場でもキックバックを和らげながら、タイヤの接地状態を伝えてくれる。

急な下り坂はファーストアタックをヒルディセントコントロールでこなしたおかげで、二回目以降は自分の力で下ることができた。走れば走るほど、ジープの性能が理解できてくる。道具を使いこなす喜びを、久々に味わった気がする。

こうした恵まれた環境を日本で見つけることは難しい。またエクストリームスポーツへの理解度の浅さも、こうしたイベントを実現することへの大きな壁となるだろう。しかしFCAジャパンには、これほどの規模とは言わないまでもジープの魅力を、そのオーナーや潜在オーナーに伝える努力をして欲しいと感じる。

ちなみに今回の森林ステージは、台風で被害にあった森林の木々をFCAが協力して撤去したところから使用許可が下りたのだという。イベント用のアトラクションや会場に敷き詰められたウッドチップは、こうした木々を使ったもの。互いが協力しあうことでこのキャンプ・ジープが成り立っていると考えると、日本でも何かができそうな気がした。

8速ATにより日常性を獲得し次世代へと進化

ラングラーとしては4代目となるこの最新モデルは、本格的なオフローダーとしての性能を保ち続けながらも、より日常性能を高めてきた。その最たるシステムは「セルフトラック」と呼ばれるセンターデフ式のフルタイム4WDシステムだが、これはアンリミテッド・ルビコンにはつかない。代わりによりリジッドな4WD性能を発揮するための「ロックトラック」システムが装着される。

それでもルビコンは副変速機を2H(FR駆動)へ切り替えるだけで、プッシュアンダーの少ない素直な操作性を得た。もちろん基本的なハンドリングはスロー。しかし屈強なラダーフレームと足長なサスペンションのバランスはオンロードでも快適で、ロングホイールベースの4ドアであれば前後のピッチングも、完璧ではないけれど上手にバランスされていた。

そして8速のギヤを持つトランスミッションが次世代を切り開いた。これを得たことでラングラーはおっとりとしたキャラクターを卒業し、オンロードでの市民権、つまり敏捷性を得た。

ラングラーに乗れば毎日がアドベンチャーだ

私はいまこそが、ラングラーの旬だと思う。クルマの性能が向上し、どれに乗っても際だって悪いものはなくなった、と言われる今。裏を返せばそれは「どれに乗ってもつまらない」と言うこともでき、だからこそ誰もが心の奥底では個性溢れる一台を欲しているのだと思う。

そんな今にあって、「本物の性能」と「日常の快適性」が高レベルに歩み寄ったラングラーは、最高に趣味性の高い実用車になる。そんな難しいことを言わずとも、ジープ・ラングラーに乗れば毎日がアドベンチャーだ。

その証拠にミラノでは、驚くほどにラングラーが走っていた。ときにはスーツを着て、ときにはカジュアルに着飾ったミラネーゼたちが、性別に関係なくこれをミラノの石畳で走らせていたのである。その姿は、見とれるほど決まっていた。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

【SPECIFICATIONS】

ジープ ラングラー ルビコン 2ドア ガソリン2.0L

ボディサイズ:全長4334 全幅1894 全高1879mm
ホイールベース:2459mm
最低地上高:255mm

車両重量:2050kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0×90.0mm
最高出力:200kW(272ps)/5250rpm
最大トルク:400Nm/3000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD(選択式)

ステアリング形式:電動油圧式パワーステアリング
サスペンション形式:前後コイルリジッド
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

※欧州仕様

ジープ ラングラー ルビコン 4ドア ディーゼル2.2L

ボディサイズ:全長4882 全幅1894 全高1838mm
ホイールベース:3008mm
最低地上高:242mm

車両重量:2044kg

エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2143cc
ボア×ストローク:83.8×99.0mm
最高出力:147kW(200ps)/3500rpm
最大トルク:450Nm/2000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD(選択式)

ステアリング形式:電動油圧式パワーステアリング
サスペンション形式:前後コイルリジッド
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

※欧州仕様

【問い合わせ】

ジープ・フリーコール

TEL 0120-712-812

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