現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ホンダ技術者に愛されてきた「トラサン」とは? トライアンフ「TR3」を毎日使えるようF1開発者が施した改良点に注目【旧車ソムリエ】

ここから本文です

ホンダ技術者に愛されてきた「トラサン」とは? トライアンフ「TR3」を毎日使えるようF1開発者が施した改良点に注目【旧車ソムリエ】

掲載 6
ホンダ技術者に愛されてきた「トラサン」とは? トライアンフ「TR3」を毎日使えるようF1開発者が施した改良点に注目【旧車ソムリエ】

1957年式 トライアンフ TR3

「クラシックカーって実際に運転してみると、どうなの……?」という疑問にお答えするべくスタートした、クラシック/ヤングタイマーのクルマを対象とするテストドライブ企画「旧車ソムリエ」。今回セレクトしたクルマは、かつてブリティッシュ・ライトウェイトスポーツカー代表選手の座をMGと争ったトライアンフ。わが国の英国車愛好家の間では「トラサン」なる愛称で呼ばれている「TR3」を、秋の軽井沢にて存分に走らせてみた。

ランボルギーニ「カウンタック」が破格の1125万円! 中身は399ccのエンジンを搭載した「キッズカー」でした

50年代ブリティッシュ・ライトウェイト「西の横綱」

トライアンフTR3は、MGと並ぶブリティッシュ・ライトウェイトスポーツの雄として世界的な人気を誇る「TR(トライアンフ・ロードスター)」の第2世代にあたる。また、ヴィンテージ期に端を発するイギリス製スポーツカーの伝統たる、上部を深くカットアウトした左右ドアを持つモデル、英国式にいうところの「サイドスクリーンTR」第2世代でもある。

サイドスクリーンTRは、2シーターのオープンスポーツを渇望する当時の北米市場のリクエストに応えたモデルだった。まずは1950年に社内のスタイリスト、ウォルター・ベルグローヴのデザインによる未来的ボディを持つコンセプトカー「TRX」が試作されたものの、このプロジェクトはあまりに重くてスポーツ性に欠けるとの判断によりキャンセル。その2年後となる1952年には、より現実的なプロトタイプ「TR」が発表された。

現在ではさかのぼって「TR1」と呼ばれるこの試作車は、当時の写真を見ると前半部はのちのTR2とほぼ同一のスタイリング。ただしリアエンドは露出したスペアタイアを取り込むような、古典的なラウンドテール型とされていた。

ところが、一説によると「ジャガーXK120に似ている」という手厳しい評価を受けたことから、ベルグローヴはテールを延長するとともに、ラゲッジスペースも稼げる角ばった意匠へと再デザイン。それが1953年に「トライアンフTR2」として正式発売されるに至った。

こうしてトライアンフ・ロードスター初の市販車として登場したTR2は、最大の仕向け地であるアメリカおよび母国のイギリスでも一定の人気を得た。ところが、クーリング不足が指摘されたラジエーターグリル(日本では「おちょぼ口」と愛称される)の改善をはじめ、パワーアップなども求める市場のリクエストに応えるかたちで、発売2年後にあたる1955年、マイナーチェンジを施した後継車「TR3」がデビューすることになる。

ここに至るいずれのトライアンフ・ロードスターも、搭載されるエンジンは当時トライアンフの親会社だったスタンダード社の中型サルーン「ヴァンガード」用から発展した水冷直列4気筒OHV 1991cc。TR3では前任モデルTR2から4psアップの95psとされた。

そして、この時代のライトウェイトスポーツカーとしては若干重め、900kgを大きく超えるウェイトを持ちながらも、0-400m加速は18秒前後と、当時の2L級スポーツとしてはなかなかの快速ぶりを示した。

いっぽう、剛性の低いラダー式フレームに固く締め上げられた前:独立/後:固定式サスペンションの組み合わせは、旧き佳き英国製スポーツカーの典型的なもの。旧式なステアリングギヤボックスも相まって、その乗り味はあくまでワイルドなものと評された。

それはラジエーターグリルをさらに拡幅し、2138ccエンジンも選択可能となった改良版「TR3A」となっても変わることはなかったのだが、それでもTR3/3Aを合わせて7万5000台近くが生産される大ヒット作となったのである。

ホンダのレジェンドたちが愛したTR3は、人の心を癒やしてくれる

今回ご紹介する1957年式トライアンフTR3は、かつて本田技研にデザイナーとして在籍し、今やバイクファンの間では伝説と化している「CB400F」や「CBX400F」、スクーターの人気を復活させた「タクト」、さらには現代のビッグスクーターの元祖ともいえる「フュージョン」などをデザインされた故・佐藤充弥さんが、晩年に愛用していた個体とのこと。

しかも佐藤さんの前のオーナーは、第1期ホンダF1をエンジン開発者として主導したのち、1980~90年代の第2期には社長としてF1参戦を支えた川本信彦さんだったという。つまり、往年のホンダのレジェンド的エンジニアたちに愛用された、この上なく由緒正しいTR3なのだ。

現オーナーの才門勇介さんは、佐藤さんが2015年に逝去されたのち、ご遺族および佐藤さんがTR3とともに過ごした長野県某所のクルマ仲間たちからも引き受けを要請されていたという。しかし、この個体が紡いできた歴史を受け継ぐ重圧から悩みぬいたのち、ようやく3年後に入手を決意するに至ったとのことである。

才門さんとは長年の友人である筆者も、じつは彼がTR3を引き受けることについて「背中を押した」ひとり。それゆえ、この個体のステアリングを握る機会はこれまで幾度となくあったのだが、そのたびに乗りやすさに感心させられてしまう。

でも、この乗りやすさには理由がある。「毎日アシとして乗りたい」という前オーナーの佐藤さんの意向で、トランスミッションは1速がノンシンクロのスタンダード製4速MTから20世紀末の英フォード社製、ケータハムなどにも使用されてきた5速フルシンクロMTに換装してあり、オリジナルよりも格段にスムーズで、しかも確実なシフトフィールを体感させてくれる。

また、やたらと操舵が重いうえに正確性にも劣るウォーム&ローラー式のステアリングギヤボックスも、より近代的なラック&ピニオン式に換えられていることからハンドル操作はとてもラクで、コーナーでも狙ったラインに前輪をつけることができる。

とはいえ、持ち前のワイルドな乗り味をもたらしているシャシーは不変ということで、乗り心地はかなりハード。緩いシャシー/ボディは、不整地ではギシギシと音を立てるほか、1950年代においても旧式になりつつあったリーフリジッドのリアサスペンションは、荒れた路面でカーブを回りながらスロットルを開けてしまうと容赦なく横に飛んでしまうことから、筆者ごときのドライビングスキルでは思いっきりスロットルを踏み込むことに躊躇してしまう。

でも、今どきのスポーツカーであれば弱点として指摘されるべきこれらの古臭い特質が、なぜか「トラサン」では楽しくて仕方がない。

2基のSUキャブレターを組み合わせたロングストローク型の4気筒OHVは、当然ながら高回転までスカーンと気持ちよく回るタイプではない。また、パワー感もほどほどのレベルに留まるが、その代わりに低中速域から豊かなトルクを発生し、アップダウン強めのワインディングロードでも力強い走りを見せてくれる。

くわえて「ヴォロロロロッ」という、ちょっと劇画チックな4気筒サウンドや、スロットル操作を素直に反映するレスポンス。そして「コクコク」と決まるシフトフィールに至るすべてが心地よい。だからサイドスクリーンを外し、左肘をドア上縁に乗せて、秋の風を全身で浴びながらのドライブは、ある意味ヒーリング的な行為ともいえるのだ。

武骨で古臭いと思っていたキャラクターが、じつは乗り手の心を癒してくれるもの。正統派・優等生のMGに対して、ちょっとアウトローなキャラもあるといわれてきたトライアンフながら、この時代の英国製スポーツカー特有の温かみは、間違いなく共有していることが実感できたのである。

■「旧車ソムリエ」連載記事一覧はこちら

文:Auto Messe Web 武田公実
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

メルセデス・ベンツGLE&GLSに、Night Edition登場!──GQ新着カー
メルセデス・ベンツGLE&GLSに、Night Edition登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN
新しい日産アルティマ登場へ──GQ新着カー
新しい日産アルティマ登場へ──GQ新着カー
GQ JAPAN
77周年を記念し、新旧ロータスがサーキットでお祝い
77周年を記念し、新旧ロータスがサーキットでお祝い
レスポンス
レッドバロン、外為法違反で警告 ロシアにバイク輸出 経産相の承認受けず
レッドバロン、外為法違反で警告 ロシアにバイク輸出 経産相の承認受けず
日刊自動車新聞
新型「“6速MT”コンパクトカー」公開に反響殺到! “軽”並みのサイズに「小さいエンジン&MTはイイ」の声も! “観音開き”ドアもあるフィアット「500ハイブリッド」伊国で登場が話題に
新型「“6速MT”コンパクトカー」公開に反響殺到! “軽”並みのサイズに「小さいエンジン&MTはイイ」の声も! “観音開き”ドアもあるフィアット「500ハイブリッド」伊国で登場が話題に
くるまのニュース
スーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストの初日はTOM’Sから参加の卜部和久がトップタイム
スーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストの初日はTOM’Sから参加の卜部和久がトップタイム
AUTOSPORT web
ミスヒットしても飛距離をキープできる秘密は? “スイングの常識”を塗り替えるPXGの新メタルウッド「ライトニング」シリーズは何がスゴい?
ミスヒットしても飛距離をキープできる秘密は? “スイングの常識”を塗り替えるPXGの新メタルウッド「ライトニング」シリーズは何がスゴい?
VAGUE
午後の眠気の正体とは? 昼食後の睡魔を追い払うコツを専門家に訊く
午後の眠気の正体とは? 昼食後の睡魔を追い払うコツを専門家に訊く
GQ JAPAN
ラジアル=表面パターンではなく、一番下の層を指すって知ってた!? バイクのタイヤの種類「ラジアルタイヤ」とは?
ラジアル=表面パターンではなく、一番下の層を指すって知ってた!? バイクのタイヤの種類「ラジアルタイヤ」とは?
バイクのニュース
一目惚れ注意! 今見ても異端で目を惹く“特別なドゥカティ”がオークションで落札 銀と赤のボディが魅力的な2002年式「MH900e」の現在の価値とは
一目惚れ注意! 今見ても異端で目を惹く“特別なドゥカティ”がオークションで落札 銀と赤のボディが魅力的な2002年式「MH900e」の現在の価値とは
VAGUE
トヨタ斬新「ちいさなクラウン!?」 全長4.2mボディに「豪華内装」採用! 「大排気量V6」エンジン搭載&専用装備もり沢山! 高級感マシマシな爆速ハッチバック「ブレイドマスター」って?
トヨタ斬新「ちいさなクラウン!?」 全長4.2mボディに「豪華内装」採用! 「大排気量V6」エンジン搭載&専用装備もり沢山! 高級感マシマシな爆速ハッチバック「ブレイドマスター」って?
くるまのニュース
三菱『トライトン』を手軽にUSスタイルに変身! IPFが専用「LEDグリルマーカー」発売
三菱『トライトン』を手軽にUSスタイルに変身! IPFが専用「LEDグリルマーカー」発売
レスポンス
5000個限定! TOYOTA AE86「頭文字D」キーチェーンがついに一般販売開始
5000個限定! TOYOTA AE86「頭文字D」キーチェーンがついに一般販売開始
ベストカーWeb
まるでカートのような原付3輪!? ホンダ「ロードフォックス」の悦楽的スイング機構とは!!
まるでカートのような原付3輪!? ホンダ「ロードフォックス」の悦楽的スイング機構とは!!
バイクのニュース
“静粛性×走り×環境”を追求 ブリヂストンからSUV向けプレミアムタイヤ「ALENZA LX200」が2026年2月登場
“静粛性×走り×環境”を追求 ブリヂストンからSUV向けプレミアムタイヤ「ALENZA LX200」が2026年2月登場
くるまのニュース
“新年らしくておめでたい!” シチズンのブランド横断コレクション「KIZASHI」は漆黒のダイヤルにゴールド煌めく限定モデル
“新年らしくておめでたい!” シチズンのブランド横断コレクション「KIZASHI」は漆黒のダイヤルにゴールド煌めく限定モデル
VAGUE
京商とMOONEYES、1970年代風フルサイズバンのR/Cカー共同開発…「マッドバン」2026年2月発売へ
京商とMOONEYES、1970年代風フルサイズバンのR/Cカー共同開発…「マッドバン」2026年2月発売へ
レスポンス
ヒョンデ、オートバックス28店舗に試乗車配備…ダイレクト販売とリアル店舗を融合
ヒョンデ、オートバックス28店舗に試乗車配備…ダイレクト販売とリアル店舗を融合
レスポンス

みんなのコメント

6件
  • sho********
    タイトルに何の関連もない
    ただの釣り記事
    こう言うの載せないでほしいですね
  • マキトシ
    お~れ~がいたん~じゃ、お嫁にゃ行けぬ♪
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村