メルセデス 市場環境が許す限りEVに
執筆:Masayuki Moriguchi(森口将之)
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編集:Tetsu Tokunaga(徳永徹)
舞台をフランクフルトからミュンヘンに移して、IAAモビリティと呼ばれるドイツのモーターショーが9月に開催された。
コロナ禍ということもあり開催期間は6日間、入場者数は40万人に留まったが、地元ドイツの自動車メーカーは多くのニューモデルを出展。ほぼすべてがEVであり、たしかにエンジンショーではなくモーターショーになっていた。
その中からここではメルセデス・ベンツとBMW、プレミアムブランドの両雄の主要車種を紹介しながら、彼らのEVシフトの共通点・相違点などを見ていきたい。
メルセデスは開幕前日にプレイベントを開催し、オンライン配信もされた。
冒頭ではEVファーストからEVオンリーへと加速していくことを宣言し、2025年までに3つの新しいEV専用アーキテクチャを導入予定で、2台に1台は電動化とすることを目標に掲げた。
そして2030年までに“市場環境が許す限り”、すべての新型車をEVにする準備が整う予定ともアナウンスした。
前半の威勢の良さに比べると、後半の歯切れの悪さが気になった。
EVに力を入れるのに、2台に1台は電動化という表現に留めていたり、市場環境が許す限り準備が整う予定としていたり、かつては「最善か無か」という強烈なスローガンを掲げたこのブランドらしからぬ表現が目立つ。
欧州委員会は今年7月、2035年にすべての新車乗用車をゼロエミッションにすると発表しているが、メーカー側は完全なEV化は難しいと考えているのかもしれない。とはいえ欧州委員会に正面から反論することもできないためか、ワールドプレミア・モデルの多くがEVという力の入れようだった。
BMW EV専用車でメルセデスに先行
具体的にはEクラスに相当するEV専用車であるEQEをはじめ、すでに発表されているEQSのAMG版であるメルセデスAMG EQS 53 4マティック+、GクラスのEV版として2025年頃に市販予定というコンセプトEQGを世界初公開した。
本拠地ミュンヘンでのモーターショー開催となったBMWは、ショー開幕日に日本で発表会を開催した。
そこでは今年日本でも販売を開始するEV専用車iXをお披露目するとともに、欧州ではすでに発表されているiX3およびi4を、日本でも来年導入予定とアナウンスした。
ここで両ブランドのEVラインナップをもう一度おさらいしておくと、導入が早かったのはBMWで、2013年に発表したEV専用車i3を、PHV(プラグインハイブリッド車)のスポーツカーi8とともに発表しており、iXはEV専用車としては第2弾となる。
メルセデスの市販EVは2019発売のEQCが最初で、エンジン車のGLCとプラットフォームを共有している。第2弾として今年日本に導入されたEQAも似たような成り立ちだ。
メルセデスを擁するダイムラーはこれ以外にマイバッハとスマート、BMWはロールス・ロイスとミニというブランドを持っている。
このうちスマートとミニはどちらもEV専用ブランドに特化することが発表済みで、ロールス・ロイス以外はIAAでコンセプトカーを発表しているが、ここではメルセデスとBMWに絞って話を進めていくことにする。
「EQ」と「i」 専用設計車に2社の色
どちらのブランドも、現状ではEVに独自のサブネームを与えている。BMWはi、メルセデスはEQだ。
ちなみにPHVはBMWでは「330 e」、メルセデスでは「A 250 e」などと、既存の車名の末尾にeをつけて区別しており、EVが特別な車種であることが伝わってくる。
でもすべてのiモデル、すべてのEQがテスラのようなEV専用設計というわけではなく、すでに一部は紹介してきたように、エンジン車のプラットフォームを共有する車種も多い。
EVシフトは最近になって急に決まったものであり、コストの関係もあって全車種を一度に切り替えるのは不可能なのだろう。
そこでどの車種がEV専用設計かを見てみると、メルセデスのEQSとEQEはともに4ドアセダンで、流れるようなプロポーションをはじめパッケージングも近い。
一方BMWのEV専用設計はi3とiXで、コンパクトなシティコミューターとラージサイズSUVという違いはあるが、短いノーズにスクエアなキャビンという幾何学的な造形は似ている。
トヨタの車種に当てはめれば、メルセデスのEV専用車は燃料電池を搭載しつつセダンに仕立てた「ミライ」を思わせるのに対し、BMWのそれは先進的なメカニズムにふさわしい斬新なデザインを組み合わせる「プリウス」に近いと感じる。
メルセデスとBMWはガチンコのライバルでありながら、これまでも独自の方向性を提示して、それぞれのファンに応えてきた。それがEV専用車にも当てはまるのは興味深い。
メルセデスがセダンにこだわるのは保守本流を貫くブランドイメージに合っているし、iシリーズのラディカルなデザインはBMWらしい。
日本での売り方/サポートの工夫
BMWについては日本での説明会ということで、この国でEVをどうやって売っていくかという説明もなされた。そこで感じたのは、最善か無かのメルセデスに対し、柔軟な対応を考えていることだ。
そもそもEVの歴史で見れば、BMWはメルセデスより長い。メルセデス初のEVは2019年発売のEQCだが、i3はそれより6年前の2013年に発売している。
BMWはi3のサポートを行う中で、電動車への対応を考えてきたという。
その中で考えたのが、航続距離に関する不安の解消。
バッテリー容量100kWhを燃料タンク100Lと考えてもらい、急速充電1時間で100L入ると説明している。このあたりはドイツ本国とは違う説明だそうだ。
また急速充電では、80%まで何分という表現を多く使うが、実際は10分間の充電で100kmぐらいは走れるので。10分単位で十分ではないかとメッセージするなど、不安を和らげる取り組みを進めているとのことだった。
メルセデスも日本市場では、EQCの大幅値下げに加えて、充電用ウォールユニット1基無料提供、設置費用一部負担などのサポートをしている。EV経験の違いが、モノで攻めるか、コトで誘うかという違いに現れている。
それは最善か無かのメルセデス、駆けぬける歓びのBMWという、両者のブランドイメージにも通じるものだ。
日本ではどちらのアプローチが支持されるのか、数年後にはある程度の結果が出ているかもしれない。
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