BMW社製のV8エンジンを搭載
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
【画像】モーガン・エアロ8 最新のプラス・シックスと比較 全71枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
21世紀のモーガンとしてやや遅れて登場した、最新のプラス・シックス。軽量なアルミニウム製シャシーに、パワフルな直列6気筒ターボエンジンを載せ、独立懸架式のサスペンションを採用している。
英国マルバーンを拠点とするモーガンの設計思想を、正常進化させたモデルとはいいにくい。初代のモーガン・プラス・フォーとは大きく異なるクルマだが、それでもモーガンの魅力は備わっている。
一方で、2000年のジュネーブショーで発表されたのがモーガン・エアロ8。伝統主義を貫くという姿勢は、スポーツカーの成功を継続させるには不可欠な要素でもある。しかし、寄り目のニューモデルは、期待以上にモダナイズされていた。
エアロ8は、正真正銘のモーガンによる現代的なスポーツカーだ。BMW社製のV8エンジンを搭載し、0-100km/h加速は4.8秒と競争力も充分にある。
インボード・レイアウトのショックアブソーバーに、ダブルウイッシュボーン式のサスペンション、APレーシング社製の高性能ブレーキも獲得。動的な性能にも不足はない。
さらにエアコンやクルーズコントロール、ヒーター機能付きのフロントガラスなども獲得し、装備も充実。従来のモーガンとは別の次元のクルマに仕立てられていた。
ただし、モーガンらしさも健在。シャシーはセイヨウトネリコの木枠が主要構造をなし、左右非対称のダッシュボードは金属製。メーターやスイッチが盛大に並ぶ様子は、1960年代の飛行機のコクピットに見えなくもない。すべてが正常に動いていれば。
シリーズ4からは4.8Lへ排気量を拡大
2000年から2004年に生み出された、シリーズ1のエアロ8の台数は200台ほど。今でも英国の中古車サイトには、定期的に販売希望のクルマが出てくる。
その後シリーズ2へバトンタッチ。わずかな設計変更を受けアメリカの安全基準にも準拠し、車内空間も拡大された。エンジンもかなりのパワーアップを実現していたが、生産はわずか1年のみ。多くが個人のコレクションと化している。
シリーズ2を挟み、2005年にフェイスリフトを受けたシリーズ3が登場。それまでフォルクスワーゲン・ニュービートル用のヘッドライトを流用していたが、この代からミニのものへスイッチ。レトロな魅力を保ちつつ、現代化された雰囲気になっている。
メカニズム関係はシリーズ3までほとんど手つかずだったが、2007年、367psを発揮するBMW社製4.8L V8エンジンを搭載してシリーズ4が登場。この年からはロードスターも追加された。
BMWは、自社の搭載モデルが生産終了となっても、V8エンジンをモーガンのために製造し続けた。なんと親切な会社なのだろう。
シリーズ4では6速MTに加えて、6速ATも登場。スポーツモードも備え、MTより優れた直線加速性能をエアロ8へ与えている。
これ以外のモデルバリエーションとして、ボートテールを備えるエアロ・マックスやタルガトップのスーパースポーツなど、少量の高級モデルもモデル末期に登場した。
シリーズを通して進化や改良は限定的
モーガン・エアロ8の最後形として、シリーズ5が登場。2016年から2018年にかけて生産されている。有終の美を飾るべくエアロGTも投入されたが、生産台数は非常に限定的なものだった。
18年間のモデルライフを通じて作られ続けたエアロ8だが、進化や改良の範囲は限定的。どのシリーズを選択するべきかは、予算に応じて決める程度で構わないだろう。
初期のエアロ8の場合、英国のスターティングプライスは4万ポンド(616万円)くらいから。走行距離の短いシリーズ5や特別仕様車の場合、12万ポンド(1848万円)位の価格が英国では付いている。
専門家の意見を聞いてみる
メルビン・ラッター:メルビン・ラッター社代表
「市場規模は小さく、流通台数も多いとはいえません。モーガンが好きで乗っていて、運転して楽しんでいるケースが多いためでしょう」
「モーガンが難しい時代のモデルで、大きな利益を出せたとはいえませんでした。エアロ8を購入したドライバーの多くは、モーガンにこだわって登場を待った、強い意志を持つ人に限られたといえます」
「モーガン3ホイラーなどは、新しいユーザー層を広げることにつながっています。近年では、モーガン仲間も増える傾向にありますね」
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
オプションのサイドエグゾーストは非常に貴重。2004年以前のモデルに限られ、迫力のあるノイズを楽しませてくれる。BMW由来のV8エンジンは個性があり堅牢。整備スケジュールは守り、純正部品を用いたい。
トランスミッション
BMWより防音性が低く、MTからのノイズは大きい。クイックシフターを取り付けることで、よりスムーズな変速が可能になる。
ボディとシャシー
シリーズ1と2は、ルーフまわりから雨漏りしがち。ガレージ保管が望ましい。シャシーは木質構造で、クラッシュ時の修理やメンテナンスは難しく、職人の技術が必要。モーガンのディーラーに任せた方が賢明だろう。
ボディパネルはシリーズによって異なる。特にトランクリッドは変化が大きく、交換時は気をつけたい。フロントスプリッターは位置が低く、飛び石キズをもらいやすい。
電気系統
フェンダー内のウインカー用コードなど、露出した配線が切れることがある。目視で確認したい。ニュービートル用のヘッドライトは、内部に水が侵入し曇ることがある。パワーステアリング・ポンプが弱点。交換部品は簡単に見つかる。
シリーズ1は、しばらく乗らないとスターターモーターが固着することがある。専用バッテリーの状態を保つため、専門ショップではコンディショナーを接続することが多い。
インテリア
後期型の方が車内はモダンだが、メンテナンスを怠ると摩耗や劣化は進む。モトリタ社製のステアリングホイールや、アルミニウム製のボスは人気の改造アイテム。アップデートされたステレオも、うれしい装備となるだろう。
知っておくべきこと
英国には現在、11のモーガン・ディーラーが存在する。各地にうまく分布しているから、メンテナンスのために長距離を移動するという悪夢は避けられる。しかし、すべてのディーラーでシャシー構造の修理が可能なわけではない。
ピッカーズリー・ロードのモーガン本社では、全面的なメンテナンスやレストアも請け負ってくれる。価格体系は固定で、わかりやすい。
英国ではいくら払うべき?
2万ポンド(308万円)~3万9999ポンド(615万円)
傷んだシャシーやボディなど、リビルドの必要なエアロ8が中心。手を出すには勇気がいるはず。
4万ポンド(616万円)~5万9999ポンド(923万円)
走り込んだシリーズ2のMT車などが英国では出てくる。執筆時に一番安かったのは、9万4900kmを走った2004年式だった。
6万ポンド(924万円)~7万9999ポンド(1231万円)
状態の良いエアロ8が欧州全域で見つかる。走行距離の多いシリーズ3などもちらほら。
8万ポンド(1232万円)以上
シリーズ4か5が混ざってくる。執筆時は、2010年のスーパースポーツが11万9950ポンド(1847万円)で売りに出ていた。
英国で掘り出し物を発見
モーガン・エアロ8 シリーズ5 登録:2017年 走行:2414km 価格:8万7995ポンド(1355万円)
筆者が発見した、最も年式の新しいモーガン・エアロ8。2017年式で、ボディはポルシェと同じクリーム・ホワイトで塗装されている。タンで仕上げられたインテリアの状態も良く、ほとんど未使用状態。ボディカラーとのマッチングもいい。
走行距離は2500kmにも達していない。恐らくパワートレインやシャシーの状態も、非常に良いはずだ。
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みんなのコメント
今の新世代モーガンをベースに、またあのコンセプトで作ってくれないかな。
買えるかどうかはわからないけれど。。。
アルミ製バスタブ型シャシーに一部木製のボディを架装してるだけ。
エアロ8開発当初は当時のレース車両からシャシーを転用しようとしたが、アルミハニカム製で構造が複雑過ぎたためとても量産できる代物では無かった。そこでアルミ押し出し材を使い大幅に簡素化した構造のシャシーを開発、ロータスで実績のあったサプライヤーに製造を委託したのが本当のところで、見た目の印象ほどローテクな成り立ちではない。
それでも捻れ方向の剛性不足や衝突安全性を考えると残念ながら生き残るのは難しいだろうな。