もくじ
どんなクルマ?
ー 「GTI」の名が、ポロ/Up!に
ー ポロGTI 2018年型の特徴
どんな感じ?
ー 責任者は「あの男」 ゆえの期待
ー 内装を検証 いざ走りだすと?
ー 新型ポロGTI 気になるところ
「買い」か?
ー 有力候補ほどキャラ立たず ただし正統派
スペック
ー フォルクスワーゲン・ポロGTIのスペック
どんなクルマ?
「GTI」の名が、ポロ/Up!に
自動車レビューの最初の文章に、あるいはハッチバックのグリルでもいいが、「GTI」という文字を見たら、「ゴルフ」を思い浮かべるひとの方が多いかもしれない。
そのとおりだと思うし、それも仕方がない。
何といってもゴルフGTIは昨年40周年を迎えたのだ。けれど、フォルクスワーゲンは20年以上も努力してはいるものの、その明確なホットハッチの遺伝子を下位の高性能モデルにうまく移植できたことはない。
もちろん1990年代の半ば以降、なかなかいいチャレンジもあったし(ルポGTIのこと)、あまり上手くいかなかったこともあった(3代目のポロGTIとか、他にもある?)。
しかしここ最近、フォルクスワーゲンは「GTI」を各モデル共通の独立したブランドにしようとしており、その方針の下、開発されたのが近日発売のUp! GTIと、このクルマ、6代目ポロの強力バージョンなのだ。
ポロGTI 2018年型の特徴
このクルマを開発したキー・パーソンはこういうだろう。「以前のモデルではスーパーミニ・サイズのGTIというものを本気で考えていませんでした。だから、ライフサイクル途中のクルマにちょっと手を加えてGTIでございますというだけで、ゼロから設計するなんてありませんした」
「でも今は違います。このポロGTIは開発に3年をかけています。VWグループの「MQB-A0」プラットフォームの企画設計の初期段階からです。その結果、最高のハッチバックに必要な特別なパワートレイン、サスペンション、ステアリングが最初から組み込まれています」
「準備万端、いつでもどうぞ、です。例えば、シャシーは初めから18インチ・ホイールに対応しているんですよ」
新しいポロGTIはゴルフGTIの2ℓガソリンターボエンジンを搭載している。最高出力200ps、最大トルク32.6kg-mと少しデチューンされているが、パワフルなことに変わりはなく、0-100km/h加速は7秒以下で最高速度は240km/h程度だ。
2018年5月にまず6速デュアルクラッチのATがリリースされ、遅れて6速マニュアルがリリースされる。
サスペンションのスプリングは低く硬くなり、アンチロールバーはレートが高められ、より高級なパッシブ・ダンパーが標準採用されているが、オプションで切り替え可能な「スポーツ・セレクト」サスペンションを選ぶこともできる。ちなみにこれはゴルフの「DCC」適応ダンパー(走行状態でダンピング特性が動的に変わる)ではなく、圧縮とリバウンドのセッティングを2組持つダンパーで(ダンピング特性は固定)、ドライビング・モード・スイッチで電子的に切り替えることができる。
ベースとなった標準のポロと比べると、フロント・サスペンションはまったくの別物。リアのトーション・ビームはより硬くなり、サスペンションのブッシュ類も変更され、ジオメトリやロール・センターも全面的に見直されている。表面上は(もちろん表面上だけではないことを祈るが)正統的な高性能化のやり方である。
どんな感じ?
責任者は「あの男」 ゆえの期待
このクルマのサスペンション・チューンの責任者は、VWのシャシー開発のチーフであるカルステン・シェプスダートである。素晴らしいゴルフGTIクラブスポーツSのハンドリングを担当した人物だ。
もしこのポロGTIがそのバッジに真にふさわしい最初のポロであるならば、主な理由はおそらくカルステンそのひとだ。従ってGTIについて詳細に触れる前に、彼の経歴を説明することが適切だろう。
シェプスダートのキャリアは1990年代半ばのフォードで始まった。リチャード・パリージョーンズやロータスのジョン・マイルズらそうそうたる人物から仕事を学んだ彼が、初めて一から開発にかかわったクルマがエポック・メーキングな最初のフォーカスであった。
彼は2000年代の初めにフォルクスワーゲンに入社したが、このときの経験は5代目ゴルフの開発にとても役に立った。10年後にはポルシェに移籍し、997世代ポルシェ911のGTバージョンのフェイスリフトにすべて関わった。
わたしの知るところでは、3つの違ったクラブで優勝したサッカー選手はクラレンス・セードルフだけであり、カルステンに匹敵する経歴を持つサッカー選手は彼だけだと断言する。
閑話休題。シェプスダートはルノースポールやフォードSTではなく、GTIを作ってきたのだということを忘れてはいけない。ここ10年以上にわたり、GTIの3文字は運転が楽しく、実用的で、手ごろな価格のバランスの取れた高性能車の代名詞になってきたのだ。これは偶然ではない。
したがって、この新しいホット・ポロの乗り心地がフィエスタSTほどほど硬くなく、ハンドリングもそれほど鋭く活発でないことは当然かもしれない。しかし、だからといって運転がつまらなかったり、ダイナミックな高性能を思う存分発揮させるのを邪魔するようなこともない。とんでもない。
これは単に、大多数のGTIオーナーがこのクルマをどう使おうとするのか、フォルクスワーゲンがよくわかっているからである。毎日、いろんな旅行で、どんな天候や道路状況でも。彼らは運転の楽しみのために我慢をするなんてことはしたくないのだ。
内装を検証 いざ走りだすと?
すでにご存じのように、新しいポロのキャビンはとても広々として高級な感じ。装備も十分である。しかしGTIは一段上の高級感をまとっている。
「クラーク・プレード」タータン・クロスのスポーツ・シートはもちろんお約束。ポロのはちょっと小さめでクッションも短めだが、背中とお尻をとても快適/安全にサポートし、見た目も立派だ。
目の前には(有料のオプションではあるが)VWアクティブ・インフォ・ディスプレイと呼ばれる新しい第2世代のデジタル計器盤が備わる。技術的には他のゴルフ、ティグアン、アルテオン、パサートなどよりも進化した計器盤である。
ドライビング・ポジションはちょうどよい低さで、コンパクト・ハッチバックというクルマの性格に合致している。備え付けの装備(6.5インチのタッチスクリーン・インフォテイメント・システムが標準、8インチはオプション)やとても印象的な品質レベルの高さには文句のつけようがない。
ポロGTIのエンジンは静かに粛々とスタートし、コンフォート・モードで走ればミッドレンジ・モデルのごとく、とがったところは微塵もない。オプションの切替ダンパーをノーマルにすれば、乗り心地は静かでスムース、ステアリングは少しだけ重くなるが、走りはまったく平穏だ。
もしそうでなかったら、現代のGTIとしては失格だろう。昨今のGTIドライバーは、クルマの走りにたくさんお金をかけるにしても、時にはのんびりと快適に走りたいものだからだ。
しかしスポーツ・モードに切り替えると少しばかり変化する。スポーツ・エグゾーストは大げさに吠えたり唸ったりはしないが、ちょっとしたノイズを奏で始める。少しペースを上げるときにはぴったりだ。ステアリングは重くなってダイレクトで正確な感じになる。ボディ・コントロールはしっかりとしてソリッドな感覚に変わる。
GTIの6速DSGギアボックスには使いやすいマニュアル・モードがあり、シフトはクイックだ。アクセルを踏みこんでいるときでもそうでないときでも、フロント・アクスルにかかるパワーをしっかりコントロールしているという信頼感をつねに与えてくれる。前輪駆動の高速走行ではこれが重要だとわたしは常々思っている。
一方で気になるところもある。
新型ポロGTI 気になるところ
気になるところといえば、マニュアル・モードでも高回転をホールドすることはできず、6500rpmのレッドラインのずっと手前で自動的にシフトアップされてしまう。そして、マニュアル・モードでもアクセル・ペダルを踏み込んだ時のキックダウンはキャンセルされない。こういうシフト・マナーは余計なお世話というべきもので、VWらしからぬ過ちだ。
卓越したパフォーマンスは十分に速いと感じさせるが、もちろん、息を止めるような種類のものではない。5000rpmを超えてもポロGTIよりエンジンの吹け上がりが鋭いライバルはいる。
しかし、このクルマよりピーク・トルクが大きなクルマは多くない。これで吹け上がりの多少の鈍さは帳消しになり、ポロGTIはほとんどのライバルよりも簡単に速く走ることができる。
かなりマイルドにチューンされた、スポーツモードでもしなやかな乗り心地は、そこそこのスピードで飛ばすにはぴったりである。しかも、タイトなサーキットでもソフトすぎるとか鈍いとか感じさせることもない。ハードウエアに十分投資したおかげで、ドライでもウェットでもグリップは十分。走りは安定しており、そのためポロGTIは真のドライバーズカーになり得ている。
高速コーナーではハンドリング・バランスを崩すことなく好きなだけ外側のタイヤに車重をかけることができる。ブレーキを残してより低速なコーナーに飛び込めば、リアは穏やかだが明確に外側に膨らみ、結果としてコーナリングはニュートラル・ステアになる。アスファルトを鷲掴みにする感覚を感じながら、針に糸を通すような正確さでクルマを操ることができるのだ。あるいは、リアの荷重を抜いてブレーキを酷使することで、サーキットを楽しく暴れまわることもできる。ブレーキは優秀でフェードの心配もない。これは完ぺきなしつらえの高性能車だ。
ゴルフGTIと同じく、ポロのスタビリティ・コントロール・システムも完全にオフにはできないが、ESPをスポーツモードにすれば、余計なお節介を受けることなく自由にサーキット走行を楽しむことができる。
32.6kg-mのトルクがフロントにかかっている以上、アクセル・ペダルを急に踏みすぎればホイールスピンは避けられないが、時にだらしなくなることはあるものの、ほとんどの場合クルマをしっかりと制御することができる。
「買い」か?
有力候補ほどキャラ立たず ただし正統派
ゴルフを除けば、フォルクスワーゲンで最良のGTIベースのドライバーズカーであることは疑いようがない。以前のどのポロよりもGTIという名に相応しいホットハッチだ。ただ、よく聞いてほしい。ポロGTIは改善の余地の全くないクルマではない。
また、カルステン・シェプスダートや彼のチームが目指していたクルマそのものであるにしても、あなたの週末ドライブを活気づける最良のホット・スーパーミニでもないかもしれない。
お財布にやさしいお手頃なホットハッチならば、わたしにはもう少し小さい方がベストだ。わかりやすい走りのスリル、溢れんばかりの高性能、通常速度での惚れ惚れするようなハンドリング。偉大なクルマはこれらをみな兼ね備えている。
ゴルフGTIのダイナミックな性能を小型化すること、その企みはこのポロGTIで初めて見事に成功したわけだが、そうすることでスーパーミニのライバルたちを出し抜くようなクルマが作れるのかどうか、わたしにはわからない。
手短に言えば、わたしはフォード・フィエスタSTやミニ・クーパーSを差し置いてこのクルマを選ぶことはないだろう。またより大きなクルマやゴルフGTIのように、毎日使うために、あるいはすべての旅行に使うためにこのクルマを買うことも想像できない。仮にそうすれば、おそらく新しい魅力も見えてくるのだろうが。
もしフォルクスワーゲンがクラス最高のクルマ作り競争に勝っていれば、めでたしめでたしとなっただろうが、一方で、フォルクスワーゲンはスーパーミニのカテゴリーに新風を吹き込んだのだのは事実。高級、魅力的、実用的、GTIバッジにふさわしい均整といった新風を。
決して姑息なやり方ではない。
フォルクスワーゲン・ポロGTIのスペック
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