一般社団法人日本損害保険協会が毎年公開している「全国の交通事故状況と事故多発交差点ワースト10」。ここでは最新のランキングとともに、交差点を走行する際に気を付けるべきポイントをチェックしていく。
※本稿は2023年10月のものです
文/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、Adobe Stock
初出:『ベストカー』2023年11月10日号
全国の「危険な交差点ランキング」発表!! 1位は東京……兵庫も多数!? 事故原因は右折時の「安全不確認」にアリ!?
■人身事故の半分は交差点や交差点付近で発生
人身事故の半数以上が交差点・交差点付近で発生している(hallucion_7@Adobe Stock)
最新ランキング(令和4年データ準拠)についてはのちほどご覧いただこうと思うが、まずはこのランキングがどのようなものなのか説明しておきたい。
下の表の数字を見てもらいたいが、2022年の交通事故状況は、30万839件でそのうち交差点の事故件数は17万665件。
交差点の事故割合は56.7%(死者数は46.4%)となっており、人身事故の半数以上が交差点・交差点付近で発生していることがわかる。
令和4年の全国の交通事故状況
このランキングはここに着目し、全国の地方新聞社の協力を得て、2022年の交通事故データをもとに作成したもので、全国の人身事故件数が多いワースト10交差点(令和4年は12カ所)の特徴や件数の多い事故類型の主な要因・予防策などを紹介している。
毎年ランキングに登場する交差点は入れ替わりを見せるが、よく登場する危険が常態化している交差点も見受けられる。その代表的な交差点が大原交差点(東京都杉並区和泉)だ。
令和3年のデータでは全国ワーストで、断トツの事故件数29件を記録。分析結果を見ると追突事故が多く、周囲に気を取られて、ブレーキがおろそかになりやすい場所であることがわかる。
もちろん全国の危険スポットすべてを憶えておくことは難しいが、自分がよく通る道の危険スポットについては、ぜひ確認してみてもらいたい。警戒すれば、自分の運転も慎重になり、無用な事故を起こしにくくなる。
■最新の交通事故多発点ランキング
令和4年の全国の事故多発交差点ワースト10(同数のため12カ所)
ここでは令和4年データ準拠したランキングを見てもらいたい。
今回は事故件数の多い3カ所について、その傾向と原因を個別に紹介したい。
また、最も事故件数が多かった熊野町交差点(東京都板橋区熊野町)については、担当が現地の様子を取材してきたので、実際に見て感じたポイントをお伝えする。
・熊野町交差点(東京都板橋区)……事故件数:19件
上部に首都高速5号線が走っており、その支柱がドライバーの視認の妨げになっているとされている
熊野町交差点の事故の内訳を見ると、右折時の事故が14件とほかの類型をぶっちぎってワーストとなっている。
交差点の構造としては、基本的には歩車分離、右折時は矢印信号となっているのだが、山手通り(側道、南下方向)から、川越街道(練馬方向)へ右折する際だけは歩行者の横断と重なることになる。
厄介なのは、歩行者も自転車も往来が多いことだ。
川越街道への右折時、信号が変わるタイミングで無理な横断をする自転車も多い。特に死角から急に現れるため事故を起こしやすい
取材時も右折しようとしたクルマの鼻先をギリギリで走り抜ける自転車がいたが、左折車両の影から来る歩行者の見落としや、左折車の動きに意識が向いている時に右方向から接近する自転車に気づかなかった場合、事故につながると考えられる。
・事故種別
死亡事故……0件
重傷事故……0件
軽傷事故……19件
・事故類型
追突……0件
右折時……14件
右折直進……1件
左折時……2件
出会い頭……0件
その他……2件
・東天満交差点(大阪府大阪市北区)……事故件数:18件
大阪市中心部を縦断する主要幹線道路である国道1号と府道30号(大阪和泉泉南線)とが交わる四差路交差点。東西道路は、交差点東側付近から北側にカーブしている。
事故類型では左折時の件数が最多(8件)となっており、交差点を左折する際に横断歩道上やその付近を通行する自転車や歩行者の安全確認が不足していることが原因と推察される。
・事故種別
死亡事故……0件
重傷事故……2件
軽傷事故……16件
・事故類型
追突……5件
右折時……3件
右折直進……2件
左折時……8件
出会い頭……0件
その他……0件
・長田交差点(兵庫県神戸市長田区)……事故件数:18件
国道28号と県道が交わる四差路交差点で、交差する道路の車線数が多く、面積も大きくなっている。
交差点を南進右折する車両が特に多く、右折レーンを2車線設けているが、併走する車両が死角となり、対向車が確認しづらい。右折先横断歩道の歩行者にも気を取られ、安全確認を充分行わず進行することが最大の要因だ。
・事故種別
死亡事故……0件
重傷事故……4件
軽傷事故……14件
・事故類型
追突……3件
右折時……2件
右折直進……5件
左折時……2件
出会い頭……1件
その他……5件
■年齢問わず安全不確認が事故原因
四輪車同士の車両相互事故における第1当事者の人的要因〔交通事故統計データ(2009~2018年)〕
交通事故統合(マクロ)データベースおよび交通事故例調査(ミクロ)データベースを有し、交通事故例調査を行う交通事故総合分析センター(イタルダ)のまとめによると、「四輪車同士の車両相互事故における第1当事者の人的要因」で最も多いのは「発見の遅れ」で、発見の遅れ(安全不確認)65.9%+発見の遅れ(前方不注意)12.4%を併せると約8割に上る。
事故類型別で「右折対直進(いわゆる右直事故)」に絞って見てみると、右直事故の要因は99.9%が人的要因であり、この傾向については、65歳以上(高齢者)と64歳以下でほぼ同様で、年齢層によらないことも判明している。
(※ただし右直事故の件数については、65~75歳以上が若年層と比較して、右折側当事者になる件数が増加する傾向にある)
対向直進車の「発見の遅れ」に起因したとみられる右直事故の具体的な人的要因
では、そもそもなぜ右折車による対向直進車の「発見の遅れ」が発生するのか?
その具体的な人的要因については上の表にまとめているが、「右折先に気を取られた」、「対向直進車は来ないと思った」、「前車が右折し自車も行けると思った(前車追従)」の3つで全体の約8割(36件/46件)を占めることがわかる。
■右直事故の防止は右折側がカギに!
右直事故の要因の約8割は「発見の遅れ」だ。前走車が行ったからと確認せずに進行すると事故を起こす(beeboys@Adobe Stock)
「右折対直進」の事故は、「右折」するドライバーがカギを握る。対面する直進車に対して無理はせず、安全なタイミングを待つことが重要となる。曲がった先にある歩道の状況を忘れずに確認することもポイントだ。
右折側のドライバーは、対向直進車線→右折先→対向直進車線と繰り返し確認し、交差点内に急いで進入せず、一旦停止もしくは最徐行することを徹底してもらいたい。
ちなみに、右折車と直進車が対面した場合、優先すべきは直進車というのが当たり前の原則だ。ところが、たまにそのルールを守らない人もいる。
そのため、自分が直進側のドライバーであっても相手を過信せず、慎重に交差点に入るように心がけたい。
またトヨタではヤリスから搭載されているが、直進車を感知して警報を鳴らす、もしくは右直事故防止ブレーキを作動ささせるというシステムを搭載している車両を選ぶことも、対策として期待できる。
「発見の遅れ」は命にかかわる重大なミスなので注意をしてほしい。
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みんなのコメント
東から来る側の右折車線を直進も可にしてるせいで、対向側の右折待ち車が危険に晒されている。
スマホイジりのクズが前も見ないで直撃しても過失割合は右直扱いにされる理不尽な交差点。