6月15日に発表された日産の新型コンパクトカー「ノートオーラ」。ノートをベースに「乗る人の感性に訴える本質的な上質さ」を求め、こだわりのアイテムが満載されており、もはやノートとは別物といった雰囲気さえ感じられる仕上がりとなっている。
そんなノートオーラのこだわりのなかでも、特に目を惹くのが、「和」を感じさせるインテリア。輸入車の豪華絢爛さとはちがう、落ち着きのあるインテリアが、このノートオーラ最大のポイントとなっている。
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「和モダン」をコンセプトに取り入れてきたクルマは他にもあり、今回このノートオーラが取り入れたことによって、注目が集まっている。
はたして「和モダン車」は、どれほどユーザーに受け入れられるだろうか。
文/吉川賢一
写真/NISSAN、LEXUS、奥隅圭之
【画像ギャラリー】「和モダン」なデザインが素敵な日産ノートオーラ+αをみる
「和モダン」に挑んだティアナとキューブ
2003年2月に登場した初代ティアナ
和モダンと聞いてまず思いつくのが、初代ティアナのコンセプト「モダンリビング」だ。1990年代末の日産の澱んだ流れを変えた、ひとつのキーコンセプトだった。
1990年代までの日産は、901活動などを通して培った「走行性能の高さ」を根拠に、自らを「技術の日産」と呼び、最大のセールスポイントとして打ち出していた。
その「走行性能の高さ」をアピールする戦い方が「正しい」と信じていた日産だが、初代ティアナでは「走行性能の高さ」よりも、「インテリア」を一番に強調した。
まるで、リビングにある家具のような木目調パネルが、ダッシュボード全面とセンターコンソール上に貼られており、シンプルなボタン配置も相まって、まさにリビングにいるような雰囲気を感じることができた。
フロントシートのパールスエード素材の手触りは評価が高かった。ちなみにこのシートは初代ティーダにも搭載された。助手席パワーオットマン機構も秀逸だった
エクステリアもおとなしめであったことから、当時は「こんな軟弱なクルマは日産車ではない」と思った方もいたようだが、実は、走りについて手を抜くことはなく、3.5L・V6エンジンを搭載し、その気になれば鋭い加速と、上質な走りも実現していた。
2代目、3代目も、モダンリビングを謡ってはいたが、ライバルメーカーが目指した高級インテリア路線へと変化しており、個人的には初代ほどの「モダンリビング」感のインパクトはなくなってしまったように思う。
また、「キューブ・マイルーム」のキャッチコピーで有名となったキューブも、モダンリビングを感じさせるモデルだった。
1998年の初代発売から、2020年まで販売されていた日産キューブ(※写真は3代目キューブ/販売期間:2008~2020年)
キューブは、2003年から2004年にかけて、年間で約14万台も売り上げており、1990年以降の登録車販売台数ランキング(年間)でトップ3にランクインした日産車はマーチとノート、そしてこのキューブの3台だけという、日産を代表するモデルだ。
初代キューブは箱型カーであったが、2002年に登場した2代目キューブ以降は、初代の「キューブらしさ」は継承しつつも、特徴的なリアの非対称デザインと丸みを帯びた四角が、絶妙に「タイムレス」なデザインとなっており、日本国内で大きく売れた。特に、ソファーのような見た目のベンチシートは、当時の若者たちを魅了した。
キューブのインテリアには、ソファーのような見た目のベンチシートが採用された。そのほかに波紋のような模様がデザインされた小物入れなどがあり、当時の若者たちに人気だった
3代目キューブも、2代目の長所をさらに磨き上げており、大開口のグラスルーフには、障子越しの優しい光をイメージした「SHOJIシェード」や、車内の天井や、カップホルダーの底、フロントシートのセンタートレイなどに付けられた、波紋のような模様もオシャレであった。
といったように、過去の日産には、モダンリビングや和モダン、といったコンセプトがぴたりとハマるクルマがあったのだが、昨今、「和モダン」と聞いてイメージする日本車メーカーは、間違いなく「レクサス」だろう。
メーカーオプションとなるが、気品がある上質な着物のような雰囲気のLSのドアトリム素材。触るのが憚られるほどで、思わず言葉を失うほどの出来の良さだ
なかでも、現行LSには、日本の伝統工芸の職人たちが細工した素材が使われており、世界に向けて日本の文化の美しさを発信している。
例えば、金箔で名高い金沢の職人の手によって、極薄のプラチナ箔を手貼りしたというオーナメントパネルや、京都の老舗で細工した銀箔糸の入った西陣織のドアトリムなど、「和」のテイストを強く表現したものだ(EXECUTIVE/EXECUTIVE Advanced Driveにメーカーオプション)。
ティアナを再現してきたノートオーラ
インパネやセンターコンソールなどの表面が、格段にクオリティアップしたノートオーラ
ノートオーラが狙うポジションは、「CセグメントやDセグメントの国産車に乗っていたユーザーのダウンサイズ先」だ。
ノートオーラ開発マーケティング担当者によると、これらのダウンサイザーの多くは、プリウスや輸入コンパクトカーへ流れることが多かったそうだ。
ノートオーラは、ライバルである輸入コンパクトカーよりもひと回り大きなTFT液晶メーターに加えて、ダッシュボードやセンターコンソールの木目調トリム、ツイード調織物で覆ったダッシュボードなど、初代ティアナにも通じる「和モダン」なテイストに近いものを感じる。
センターコンソール周りの作りこみの高さは、ノートオーラの魅力だ
出来がいいだけにさらに欲しくなってしまうのだが、シート素材は初代ティアナにも使われた手触りの良い「パールスエード」を使用するなど、さらに踏み込んでほしい、と思ってしまったくらいだ(非常に汚れやすい素材のためメンテナンスは大変なのは承知している)。
トヨタのクラウンやハリアー、ホンダのアコード、日産のスカイラインなど、いわゆる「高級車」といわれることが多いクルマのインテリアは、一見「豪華」に見えるが、どれも同じようなインテリアで、当たり外れなくクオリティは高い反面、インパクトという面では弱い。
「ちょっといいクルマに乗りたい、でも大きなクルマはもう嫌」と考えるダウンサイザーにとって、このノートオーラのインテリアは新鮮で、魅力的に見えるはずだ。初代ティアナが、「和モダンなクルマの答え」とはいいきれないが、ノートオーラはティアナを再現してきた、といっていいだろう。
ダウンサイザーを狙ったノートオーラ
日産ノートオーラのデザインコンセプトは、日本文化の美しさを感じ、落ち着きのある上品な高級感のある大人向けのになっている
「流行は繰り返す」とはいうが、ファッション業界の場合 「デザインの流行は20年周期で繰り返す」という。商品開発するメーカーの中心人物たちが、若いころに憧れていたものを思い出しながら、最先端の情報とテクニックを織り交ぜて、新たな商品を仕掛けているからだ。
そしてもうひとつが、トレンドの中心となる若者たちにとって、そうした商品は初見となり、斬新に映るから。
そう考えれば、初代ティアナが発売されたころ若者だった方たちにとって、今回のノートオーラのコンセプトは魅力的に映るかもしれない。日本文化の美しさを感じさせる、落ち着きのある上品な高級感、というのは、まさに大人向けのコンセプトであり、爆発的な人気とはならないであろうが、ダウンサイザーを狙ったノートオーラには、ぴったりだと思う。
しかし「ちょっと和テイストを織り込みました」というレベルでは、かえってダサくなるだけ。日本文化の奥深さが感じられるものでないと意味がない。また、20代~30代の若者にとっては、退屈に映るものかもしれない。
そのため、ノートオーラのような、ターゲットの年齢層の高いクルマや、高級車に限られるであろうが、「和モダン」車は一定の支持を得て、今後も登場するのでは、と考えられる。
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みんなのコメント
それ以前に無駄に高すぎ
ふた昔前のサニーに勝てそうですね。