27年もの歴史を持つオデッセイが年内に販売終了する。近年は販売台数が落ち込んでいたとはいえ、もともとヒットモデルで歴史があるため、多くのユーザーをもつホンダミニバンの象徴的な存在だ。
そんなオデッセイがなくなってしまうということは、ホンダにとってそのダメージは小さくないと考えられる。
ついに開発終了宣言!! “エンジン屋”ホンダの名機をフェラーリ目線で評価する!
オデッセイの販売終了は今後、ホンダにどのような影響を与えるのか? 国内新車販売は大丈夫か? など、ホンダのこれからをカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が考察する。
文/渡辺陽一郎 写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】2021年いっぱいで販売終了が決まった最後の「オデッセイ」を写真でチェック!!
■車種ラインナップは市場戦略のチームワーク
自動車メーカーは、複数の車種を用意している。いずれも市場戦略に基づき、各車種が異なる役割を分担している。いわばチームワークで、車種同士が互いに協力しながら、その国や地域の販売台数、あるいはシェアを拡大していく。
その意味で注目されるのが、最近のホンダの動向だ。狭山工場の閉鎖に伴い、そこで生産されるオデッセイ、レジェンド、クラリティを廃止する。ステップワゴンも狭山工場が生産するが、2022年3月頃にフルモデルチェンジを実施することもあり、ほかの工場(おそらく寄居工場)に移転して生産を続ける。
狭山工場の閉鎖にともなって、そこで生産されるオデッセイのほか、レジェンド、クラリティも廃止される
クルマの市場戦略は、前述のとおり複数の車種によるチームワークだから、3車種も抜けると大きな影響が生じる。特にオデッセイは、2020年11月に、比較的規模の大きなマイナーチェンジを実施した。その効果もあり、2021年上半期(1~6月)の登録台数は、1カ月平均で1754台となっている。
この販売規模はN-BOXの約10%だが、売れ筋価格帯が350万~450万円の上級車種としては、ホンダ車のなかで最も多い。登録台数はトヨタのC-HRやマツダ3と同等だ。
■乗り換えのきかない『オデッセイ』の個性
オデッセイの販売動向を販売店に尋ねると、以下のように返答した。
「オデッセイは2021年12月まで生産する。現在の納期は約2カ月だから、おそらく9月下旬から10月上旬に、受注を締め切ると思う。その後の予定はわからない。工場を移転して生産を続ける可能性もゼロではないが、今のところその話はなく、オデッセイは廃止されると見られている」。
顧客の反応はどうか。この点も販売店に尋ねた。
「オデッセイは2020年のマイナーチェンジで、フロントマスクを大きく変えた。この時に、新たに現行型へ乗り替えたお客様も多い。また20年以上にわたってオデッセイを乗り継ぐお客様もいる。ホンダの国内販売を支えてきた大切な車種だから、廃止されては困る」。
1994年から約27年販売され続けている『オデッセイ』。かつてはミニバンブームを牽引し、大ヒットした(写真は5代目の現行型オデッセイ)
オデッセイを廃止すると、当たり前の話だが、ホンダ車の売れゆきが下がる。しかもオデッセイは価格帯が350万~450万円だから、N-BOXやフィットの2台から3台分に相当する。
しかも軽自動車やコンパクトカーは、価格に占める粗利の比率が低いが、オデッセイは比較的高い。オデッセイの1カ月平均登録台数が前述の1754台であれば、1台当たりの粗利を軽自動車やコンパクトカーに置き換えると、4000台以上を販売したのと同等の価値が得られる。
そうなるとオデッセイを廃止すれば、販売会社の痛手も小さくない。
オデッセイが廃止されたら、ユーザーは次にどの車種を買うのか。ステップワゴンへのダウンサイジングも考えられるが、Lサイズミニバンを乗り続けるとすれば、アルファード以外には考えられない。エルグランドは発売から約11年を経過して古さが目立つ。
従来のオデッセイオーナーはホンダ車ではなく、トヨタのアルファードなどのライバル車に買い換える可能性が高い
ただしアルファードは、オデッセイに比べて床が高い。乗降性に不満があり、3列目シートも、床と座面の間隔が不足している。そのためにアルファードの3列目は、オデッセイに比べると、足を前方に投げ出す座り方になりやすい。走行安定性も低重心のオデッセイに比べて見劣りする。
アルファードは内外装が立派で、乗員の着座位置が高いから、周囲を見降ろす感覚もある。乗り心地も快適だから、アルファードの登録台数はオデッセイの5倍以上だ。売れゆきには圧倒的な格差があるが、オデッセイでなければ得られない価値も多く、ユーザーが困ることも考えられる。
オデッセイは先に述べたホンダ車のチームワークにおいて、ステップワゴンやCR-Vなど、ほかの車種では担うことのできない役割を担当している。戦力外の車種ではないため、生産を終えると、チームワークが崩れてユーザーや販売店も困る。
■ホンダのブランドイメージ向上を『シビック』に期待するしかない
オデッセイは、国内におけるホンダのブランドイメージを保つうえでも大切だ。2021年上半期に国内で売られたホンダ車のうち、N-BOXが1車種だけで35%を占めた。軽自動車全体では57%になり、そこにフィットとフリードを加えると78%に達する。
このように今のホンダの国内販売は、軽自動車と1.5L以下のエンジンを搭載する小型車が支えている。ホンダのブランドイメージも影響を受け、以前のようなスポーツカーの印象は薄れた。スズキやダイハツのような小さなクルマのメーカーになりつつある。
そこに歯止めを掛ける存在がオデッセイだ。本来ならスポーツカーのNSX、上級Lサイズセダンのレジェンド、あるいはアコードなどがホンダのブランドイメージを牽引すべきだが、これらは壊滅的に売れていないからオデッセイがこの役割を引き受ける。
350万円以上のホンダ車では唯一月販1000台以上を売り上げる『オデッセイ』。ホンダの売れるクルマはさらに小型車にシフトしてしまうのか
シビックも有力候補だが、国内販売を一度終了しながら、その後に復活させ、セダンは改めて廃止する場当たり的な経緯を辿った。シビックにはスポーツモデルのタイプRもあるから、ブランドイメージの小型化を防ぐために大切な存在だが、力を発揮できていない。
シビックは優れた商品だから、先ごと披露された新型では、ホンダの基幹車種であることを改めて訴求したい。優れた走行安定性は、衝突被害軽減ブレーキとの相乗効果により、安全性を一層高められる。上質な乗り心地も、運転支援機能と結び付いて快適性をさらに向上させ、疲労を抑えることによって安全性に結び付く。
このようにシビックには、今のクルマに求められる「安心と快適」が備わる。先代型ではハッチバックの6速MT比率も30%と高いから、かつてのホンダが特徴としていた運転の楽しさやスポーティ感覚も味わえる。
中高年齢層とって、シビックは馴染み深い車種だが、30歳以下の人たちには存在感が乏しい。日本では2000年に3ドアのシビックが消滅して、2001年には初代フィットが発売され、ホンダ車のコンパクト化と低価格化が始まったからだ。
シビックの受け止め方は、世代によって大きく異なり、多角的な練り込んだプロモーションが必要になる。それを成功させると、ホンダのブランドイメージもバランスが保たれる。
■ホンダの上級車は『フリード』と『ヴェゼル』!?
一方のオデッセイは、先代型の4代目まではワゴン風のミニバンで、現行型の5代目はエリシオンと統合されてスライドドアを備えるハイルーフタイプに発展した。それでも27年間にわたり、ホンダが手掛けるミニバンの代表であり続ける。
オデッセイで上級車種の普遍的な価値を受け継ぎ、シビックで従来とは違う新しい価値を生み出せば、ホンダのブランドイメージが極端に小型化するのを防げる。
それをしないとホンダのブランドイメージはさらに小型化して、ホンダの上級車種は、実質的にフリードとヴェゼルに置き換わってしまう。
オデッセイ不在の置きかえ車種を考えないと、ヴェゼルなどのコンパクトクラスがホンダの上級モデルというイメージになってしまう
ホンダは国内市場をどのように発展させたいのか。現状ではそれが見えない。オデッセイの廃止を含めて、今の場当たり的な対処が続くと、国内で堅調に売られるホンダ車は、N-BOX+N-WGN+フィット+フリード+ヴェゼルに集約されてしまう。
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