幼少期より我が家の愛車がマツダ車だったのもあって、今のこの盛況ぶりは何とも嬉しい限りです。昔家のクルマがマツダ車だというと、「変わり者だ」とか「わからない」といった暴論に、時に甘んじてはならなかった場面も少なくありませんでした。どこか日本臭さは薄いものの、かといって輸入車のような完成された世界がある訳でもなく、しかし、お出かけするときは、家族折り重なってでかけた傍らにはいつもマツダ車がいたのです。そして実際自分でクルマを運転するようになってからも低く見るような向きも少なくなく、販売に携わってからは時に「なんでマツダ車なんか乗らなければならないのですか?」とエスティ○を購入するのには少ない予算でいいクルマをとすすめたMPVに対して、そう怒り混じりに反論されたことなどもあったほどです。
デミオ、CX-3、ロードスター…限られたラインナップながら話題の途切れないマツダ
素朴な定食屋さんのちょっと盛りがいい感じ!千葉市にある「二丁目食堂」のオムライス
べつだんマツダと利害関係を持ったことはないですが、「乗らずに馬鹿にする」向きの多いことに故無きいらだちを覚えたりしたものです。だからそんなMPVを「エステ○マ希望の方に」蔑んでいわれたときには、ゴングが鳴る訳であります。当然「お客様の予算がないから仕方ない」というNGワードをうまくすりぬけて「あなたは乗ったことがあるのですか?」「どうして私が強くすすめるかおわかりでおっしゃってますか?」「エ○ティマより高いものをお勧めしている訳ではないじゃありませんか!」と40分~1時間ほど私のお説教を聞いて、アエラスより安い価格で2代目のMZR2300エンジン搭載のMPVとかをすすめて納めたあかつきに「中込さん、あれ、いいですね。」といわれたことは一度ではありません。
乗ってから言え!
と思っていたマツダ、今、見た目も輸入車に引けを取らず、低燃費。選ばない理由が見出しにくいそんなクルマだらけになってしまいました。正直かつてのマツダ車では考えられないような華やかなクルマで価格も上等。しかし、依然見ているのは日本のマーケットだけで通用するクルマではない走りを、国内マーケットでも十二分に説得力をもたせてラインナップを整えていると言ってよいでしょう。そして、皆が乗るクルマになったマツダ。なんだか自分のことのように嬉しかったりする、というのが率直な感想なのです。
そんな今のマツダ車をしっかりと乗ってみたい。そう思ってご相談したところ、今回マツダ株式会社様のご厚意でアクセラXDの6速マニュアル車を拝借して、最近図らずも恒例となった「春だから九州に行ってきました」的なロングドライブに出かけることにしたのです。車種選定は、どこのメディアでも近々扱うクルマではないモデルで、なおかつ、数字上は他の2200ccスカイアクティブDを搭載していながら、若干セッティングが違うというアクセラに興味があった為です。
そのときの感想をここに記したいと思います。
燃費はいかに
拝借したときの燃費計が指していたのは「13.2km/l」…最高では大山~川崎まで840km無給油で走行「22.0km/l」
横浜の子安でソウルレッドプレミアムメタリックの広報車を受け取ったとき、そんな数字が目に入りました。皆さんの感覚ではどうでしょう。私は手元に比較的低年式のクルマに乗ることが多いので、これを悪いとかは思いませんでしたが、おそらくそんなによくはないのでしょう。でも、その数字自体は、私が少し前まで乗っていたシトロエンBXの燃費程度でした。ただ、シトロエンは同じ燃費でも一リットルあたり40円くらい高いハイオクガソリン指定。きっと普通の媒体では「いじわる試験」的な走りもテストするだろうけど、これよりは多少よくなるだろうか。軽油でその燃費ならまあ、いいかな…そんな風に感じて出発したものです。
しかし、走り出してみると、街中で信号のたびにアイドリングストップなども作動しながらぐんぐん改善しあっという間に15km/lを超えてきました。出発初日は静岡の島田で一泊、二日目は広島の尾道まで寄り道をしながらの旅、走りきりました。結局700km少々、満タンベースでは16km/lほどで走りきりました。東京からでもふるさと広島にはかえって来られる燃費なのでしょうか。広島市内もうろうろして牡蠣小屋で牡蠣三昧などをしたあとで夕方向島ドックのナトリウムランプが見えてきた頃、アクセラの燃料警告灯も同じ色で点灯を始めました。
伊勢湾岸自動車道の長島パーキング。このルートって本当の元祖東海道に近いんですよね。この角度からのアクセラ、一番好きかもしれません。
明石の標準時子午線の下を通過!
尾道のを走る
燃料タンクは51リットルと比較的小振り、だからゆとりを持って1000kmを確約された容量とはいえないでしょう。しかし、軽油で満タンにすると、ランプが点くかどうかのところで、そんな需要地ではない「安くないスタンド」で給油してもせいぜい5000円前後。やはり絶対的にはエコノミーだと言えると思いました。
尾道で給油してからその翌日の宿泊地門司、そして今回日程の都合でその翌日には九州を離れねばならず岡山県の蒜山高原に向かったがその終着点の手前、蒜山高原にあがる手前で(大事を見て)給油。そこからはその翌日下道を姫路から神戸まで通り、お天気がよかったもので、阪神高速を調子に乗って泉州まで走ったため、そこから天理あたりまで、大阪の渋滞も経験し、名阪国道から伊勢湾岸・新東名/東名で川崎に到着したときにはまだ警告灯が点く前で、39リットルの軽油を飲み込みました。
尾道にきたら「渡船のあるくらし」も体感。アクセラ君も乗せてみました。向島(むかいしま)に渡る渡船は200円以下。ところでどこか「広島と世界」だけを見て作っているような匂いのするマツダ車、最近ワールドワイドな大きさなのですこし大きいともっぱらの評判ですが、広島では持て余さないのか?と思って尾道市内をうろうろ…やっぱりでかいものはでかいですね。しかし、案外なんとかなってしまうのも事実、でしたw
牡蠣小屋でお昼ご飯。焼くのは誰か焼いてくれると楽でいいのですがwしかし、一度はやってみるものですね。一緒に出てきた牡蠣ご飯がものすごく美味しかったですね。一人一キロくらいはぺろりでございます!
大山から帰ってきて燃料代が4000円行かないというのは、正直明確に嬉しいという気持ちになりました。
美祢のカーブを走ったか?
このクルマに乗っていて感じたことは「マツダのクルマに期待するものとしてはこれ以上のものはないのではないか」ということです。この直前に点いていたメルセデスベンツよろしく車線変更時、後方から接近してくるとアラームが鳴ったりもしますし、サンルーフもボーズのサウンドシステムも付いています。アクセラと言えば今の「マツダ3」昔の323…ファミリアのクラスを担っていますが、かつてのマツダ車で言えばルーチェくらいが提供していたホスピタリティはあると思います。ただ、かといってクラウンに求めるような世界観をこのクルマに求める人もいないでしょう。同じサイズでもXDだけは銘柄が違うとはいうもののロードノイズも小さくはありません。今時やかましいと思います。
件のエンジンのセッティングに関して。明確にマニュアルで乗るとわかりますが、決して、トルクフルな今までのディーゼル車でになって来たであろうキャラクターや、エコに終始したくるまがつくりたかったのではないと思うのです。わりと一般道では、きっちりギヤを選んであげないとクルマがぐずります。トルクバンドはそんなに広くないのです。だからあまりダルに「3速4速あたりに入れておけばズブブブブ」とトルクフルな走りができるだろうと思ったら大間違いです。
だから、そんな大きすぎず「ほどほど」のサイズ感にトルク番長のディーゼルエンジンを積んだクルマをきたいしている向きにはちょっと違和感を覚えることがあるかもしれません。
ですが、このクルマを避難する気にならないのです。連日300~400キロのドライブをしたあとに、恐ろしくアップダウンの激しいカーブの続く中国道の美祢カーブを走ったとき、このクルマはこういうことだったのだ、と気づかされたのです。5速、最悪でも4速くらいを使ってあげると、あれは「末脚」といわねばなりません。強烈な末脚を見せるのです。降りてくるときも実にシュアなステアリングを見せ連続カーブの続く下り坂でもひらりひらりとかわしていくのです。「難所で心地いい」それはプレジャーのための仕上がりではなく、グランツーリズモとしての必要条件なのではないでしょうか。そして壇ノ浦から視界が開けて関門海峡が見えたときの喜びはちょっとしたものです。
XDだけは同じサイズでもダンロップ!
とにかく生理的な眠気の前に疲労が押し寄せてくることはないし、最終日、蒜山高原から800kmのドライブから帰宅し、もし、悪友が「今から櫃まぶしを食べにいくから熱田まで行くけど来るか?」とか「餃子ツアーをするので宇都宮へ行くので参加すべし」との連絡が入ったとしたら、たぶん「800キロのドライブからかえって疲れているので行かない」とは返事しないに違いありません。「少し仮眠させて。そしたらぼくも行く」というのがおそらく想定される答えに違いありません。
少なくとも名古屋から手前くらいのドライブではなかなかわからない点かもしれません。
エコロジーでエコノミーなだけのディーゼル車ではない
いうなれば「Felice」な「Fenice」であるこのクルマには今を解決する「取り繕い」ではなく、ここから先乗っていく上でのサスティナビリティのようなものを感じるのです。例えば、それこそ昔ファミリアを買って青春を謳歌した人が、いろいなクルマに乗ったけど、リタイアして一台、使い勝手もいいけど、遠くまで旅行もできるクルマ、そして操る悦びも譲れない。そういう人がこのクルマを買ったら感慨深いものがあるのだろうなと思ったものです。現在並行輸入車をのぞいてディーゼル×マニュアルという選択肢はほぼマツダのクルマになるでしょう。アテンザは大きいけど、デミオやCX-3は小さい、若作りな印象…という人も、このクルマならと「手を伸ばしたところにいる」かのようなちょうどよさがあるでしょう。マツダスピードアクセラの後継としての立ち位置とはいえ、シックなデザインのホイールはそういうことのトリガーのように感じます。
そういう人が乗ったら、あのくらいのトルクバンドの狭さは許容範囲でしょうし、高回転型にしてパワーを稼いでいたエンジンよりはずっとマイルドに、そしてずっと余裕を持って使うことのできるエンジンだと思うのです。
だから、ディーゼルというくくりでエコノミーでエコロジーという今年かも停めない人のクルマではなく、その先にある悦び、満足がこのクルマの本質のように思うのです。だから「エコロジーでエコノミー」に対比させるような単語で強いていうとすれば「FeliceなFenice」。イタリア語ですがフェリーチェ(Ferice幸福)なフェニーチェ(Fenice不死鳥)ではないかと思うのです。
何かのヒエラルキーの呪縛からも一線を画し、ずっと、どこまでも走るんだ。最初300万円か、と思いましたが、この内容なら致し方のないことだと思います。強いて言えば、現行ランチア・デルタのマルチジェット(ディーゼルモデル)が近いかもしれません。しかし、あれよりは外観はマイルドですが、乗り味もあちらにはこのクルマほど強烈に射す末脚は期待できないかもしれませんが(私のビトルボ系マセラティくらいがやりたいことは、もっと涼しい顔でやってのけるでしょう。)そしてあちらはコンベンショナルな「ディーゼルエンジンモデル」の範疇のクルマですが、こちらは、既存の価値観ではくくりがたいドライバーズカーであるように感じます。
だから退職金が出たお父さんたちはまず「300万円握りしめてマツダのお店にGo!」だし、他に代えの思い当たらないという意味と、そうはいっても十二分に良好な燃費、節度あるアピアランスなどから、この価格帯なら、欲しいと思った一台です。返却する際に妙にやり場のない不機嫌さを誘引したのはその性だと思います。
毎年思うのですが、クルマで走ってみると「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」とかいいますが、そんなに狭くないと思うのです。しかし、狭くないですが、このクルマなら、この大地をなぞり味わうのは容易いだろうな。そういう実感を2200kmほど乗せていただき実感したものです。
繰り返します。ディーゼルの割りにはトルクは細いし、ロードノイズも大きいですが、それでも欲しいと感じた一台です。また、萩の道の駅であったお父さんのように「このクルマいい色よのー」なんて会話の弾む出会いのある旅をして「そうでしょー」と言ってやりたい。そんなクルマでした。(家に帰らなくなるだろうなあ…)
今のクルマの例に漏れず後方視界はこんなもの。でも心強い装備のおかげで楽。
[ライター・画像/中込健太郎]
※当記事は過去公開した記事の再編集版です
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