ハードウエアとしてはもちろんのこと、ソフトウェアとしての魅力を高いレベルで備える最新のクロカン計SUV、3台をピックアップしてテスト。どのモデルも、ガレージに収まった瞬間からライフスタイルを変える力を秘めています。今回はいわゆる「SUVブーム」でひとくくりにできそうにないトヨタ ランドクルーザー70をご紹介。(MotorMagazine8月号より再構成)
新型ランドクルーザー70「ハード&ソフトウェア」の魅力【概説】
ランドクルーザー70(以下、ランクル70)があったら、自分のライフスタイルはどのように変わるのかを想像するのが楽しい・・・それは間違いないでしょう。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
本格的なオフロード向け設計、強靭なフレーム、高い基本性能、シンプルなパーツ構成ゆえの絶対的信頼性というシリーズならではの魅力は、1984年のデビュー以来変わっていません。
そんな事情もあって、ポジション的には「再デビュー」として扱われているようですが、「らしさ」はそのままに現代のクルマとしての進化を強く感じさせる側面ももちろんあります。それが、運転支援装備のイマドキ感です。
2014年から2015年にかけて、70シリーズ誕生30周年記念車として1年間限定販売されたダブルキャブ仕様車のトリセツを読んでみると、「4-5 運転支援装置について」の項目で「運転を補助する装置」として紹介されているのは・・・なんと「ABS(アンチロックブレーキシステム)」だけでした。
一方、2023年11月からとなる現行型のトリセツでは、「4-5 運転支援装置について」の項目内にずらりと最新運転支援システムの名前が並んでいます。総論的Toyota Safety Senceに続いて各論としてPCS(プリクラッシュセーフティ)、LDA(レーンディパーチャーアラート)、クルーズコントロール、バックモニター、RSA(ロードサインアシスト)、先行車発進告知機能が「運転支援装置」の括りで解説されています。
ちなみにそれに4WDシステムとデフロック、そしてダウンヒルアシストコントロールシステムの項目が続きます。
各項目の中には、低速時加速抑制(誤発進抑制)や横断歩行者検知もできる交差点右左折支援、ふらつき警報機能に至るまで含まれていて、まさに隔世の感のある充実ぶりです。まあ、10年近くが経過しているのですから、「覚醒」するのも当たり前と言えば当たり前なのですが・・・。
グローバル、とくに道路環境が整っていない未開拓地帯の比率が高いエリアでは「ランドクルーザーならどこを走っても、生きて帰ってくることができる」と言われるほどの絶大な信頼を受けています。ある意味それは、チート級。新時代の70シリーズは最新の運転支援システムによって、さらに「帰ってくることができるスキル」のレベルアップを果たした、と言えるでしょう。
実際にそのハンドルを握った自動車評論家 山崎元裕氏は、ランクルの「世界」がより洗練されつつあることを、実感したようです。(ここまで文:Webモーターマガジン編集部)
ニューモデルとしての進化を、確実に感じさせる
ランクル70は、まさに陸の王者ともいえる、卓越したオフロード走破性を誇る一台。2014年にはその発売30周年記念限定モデルも誕生しているが、こちらも7000台以上を販売する人気車となった。
今回試乗するのは、トヨタが久々に復活(再デビュー)させたニューモデルのランクル70。十分な視界を確保するために、直線を基調としたボディデザインを採用しているのは、従来のランクル70に等しいが、ヘッドランプにはバイビームLEDが新たに採用され、それをフロントグリルと一体化させるなど、ニューモデルとしてのディテールの変更は確実に行われている。
実際にコクピットに収まってみると、それは明らかにランドクルーザーの世界そのものだった。ハンドルの背後に位置するメーターパネルはアナログ式のシンプルなものだが、その視認性は素晴らしく、走行中でも瞬時にそれを読み取ることができる。
合成皮革とファブリックのコンビネーションで統一されたインテリアも、その仕上がりはオフローダーには十分すぎるハイクオリティで、とくにシートはその座り心地やホールド性も抜群だ。これならば、ノーズを向けることを躊躇するオフロードにも、余裕で足を向けることができるだろう。
オフロードでの安全性を考慮したステアフィール
エンジンのキャラクターも素晴らしい。搭載されるのは2.8Lの直4ディーゼルターボで、注目すべきはその最大トルク。500Nmという数字を、わずかに1600rpmから2800rpmの間で均一に発揮する。
これだけのトルクがあれば、オンロードでの発進加速はもちろんのこと、オフロード走行でもエンジンストールを気にすることなく、積極的な走りが楽しめるはずだ。
前後のサスペンションは、オフロードでも抜群の走破性を実現する重要なパートだが、今回の新型ではリアのリーフスプリングがやや柔らかめにセッティングされ、オンロードでの乗り心地も重視しているのが印象に残った。
一方ステアフィールは、市街地レベルの速度域では、センター付近においてその反応に物足りなさを感じる部分もあったが、これもオフロードでのキックバックなどを考慮した結果といえるのだろう。
高速道路ではその領域でもきちんとした手応えが感じられ、直進安定性に不安を感じることはなかった。
ランクル70は、最近では珍しくなったラダーフレームを基本骨格に用いるモデル。それだけにサスペンション、フレーム、ボディ、そして最終的にはシートで、走行中の不快な振動を巧みに軽減してくれる。
実際の使い勝手は実に素晴らしいものなのだが、この伝統のオフローダーを、最近流行のSUVの仲間に入れるべきなのかどうか。これもまたオーナー自身のライフスタイルに影響されるのは当然といえる。(文:山崎元裕/写真:永元秀和)
トヨタ ランドクルーザー70 主要諸元
●Engine
型式:1GD-FTV
エンジン種類:直4DOHC ディーゼルターボ
排気量:2754cc
エンジン最高出力:150kW(204ps)/3000-3400rpm
エンジン最大トルク:500Nm(51kgm)/1600-2800rpm
燃料・タンク容量:軽油・130L
WLTCモード燃費:10.1km/L
●Dimension&Weight
全長×全幅×全高:4890×1870×1920mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:2300kg
●Chassis
駆動方式:4WD
トランスミッション:6速AT
サスペンション形式 前/後:コイルリジッド/リーフリジッド
ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク
タイヤサイズ:265/70R16
●Price車両価格:4,800,000円
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