Cセグメントのコンパクトなハッチバックボディに3L級の大排気量エンジンを搭載したBMW130iとゴルフR32。コンセプトは似通っているが、目指した方向は実は少し異なっていた。BMWが130iに与えたもの、フォルクスワーゲンがゴルフR32に与えたものはなにか。2005年に行われた興味深い比較テストから、BMWとフォルクスワーゲンの「スポーツ観」の違いを見てみよう(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年12月号より)
ゴルフR32やBMW130iが生まれる、ドイツの特別な事情
ドイツメーカーのプログラムの中ではしばしば観察されるが、日本メーカーではあまり見られない面白いカテゴリーがある。それは、外観は普通のクルマだが中身、つまり性能がワンクラス上の実力を持っているモデル、いわゆる「羊の皮をかぶった狼」のことである。
超高速通信“5G”の本格導入がクルマ社会に与える影響とは?【2020 自動車キーワード】
日本にもスバルのインプレッサSTIや三菱ランサーエボリューションなども存在するが、これらはモータースポーツへの参加を前提としたもので、明らかに「狼の牙」が見えている。それら日本のコンペティションベース型モデルとは性格が多少異なるのが、ドイツのオオカミなのだ。
さて、フォルクスワーゲン ゴルフR32とBMW130iである。2台はともに、外観はベースとなったシリーズと大きな違いはないが、その性能は標準仕様から大きくかけ離れている。R32は250psの3.2L V6エンジン、130iは265psの3L直列6気筒エンジンを搭載。これらは、ベースエンジンの実に2倍以上のパワーに相当する。
しかもそのベーシック価格はR32が3万2200ユーロ(約435万円)、130iが3万2500ユーロ(約439万円)。この値段であれば、確実にワンランク、あるいはツーランク上のモデルが買える。それどころかオプションを節約すればZ4やボクスターさえ買える価格帯に入ってくる。
それではなぜ小さくて目立たないクルマに、そんなスペシャルモデルが必要なのだろうか? これは、ドイツ人が自動車とヒトの関係までとやかく言う性格を持っているからだと私は思う。たとえZ4やボクスターを買える余裕ができても、周囲(インフラ)の条件、たとえば屋根つきガレージの有無や休暇先のホテルの格などを考えると、少なくともゴルフにしか見えないR32の方が、あるいは同じ理由でBMWのエントリーモデルである1シリーズの方が、周囲の人たちからとやかく言われないからだ。そんな人間臭さのために、こうしたスペシャルモデルが生まれるということが、ある意味面白い。
専用装備が奢られたR32と過剰な演出のない130i
こうした事情があることをまず知ってから、2台を検証することにしよう。そのR32だが、ベースになっているのはどこにでもあるゴルフである。しかしよく見ると、グリルには幅広いクロームアプリケーション、そして誇らしげなR32エンブレムが与えられる。
このR32エンブレムはリアトランクリッドにも発見され、この下方中央からは2本出しのマフラーが覗いている。足まわりも、標準より20mローダウンしたスポーツサスペンションに18インチタイヤとスポークタイプの軽合金ホイールでかためられている。
これだけではない。キャビンには本格的なバケットシート、グリップのいかにも良さそうなステアリングホイールなど、ドライバーをワクワクさせるような演出で一杯である。こうした大がかりな変更は、R32がフツウ過ぎるゴルフベースであることから、どうしても必要だったものだと推測できる。
しかしいずれにせよスポーツ心を刺激するという点では、BMW130iに対する明らかなポイントである。一方、BMW130iの外観は、まったく素っ気ない。今回のテスト車はMスポーツパッケージ仕様であるが、それでもフロントに大型エアインテーク、そしてマットブラックのリアエンドガーニッシュ、ツインのマフラーカッター、Mデザインの18インチホイールくらいが他の1シリーズと見分けられるポイント。しかも、これらはオプション(欧州仕様)なのだ。
このポリシーは、インテリアでさらに明らかになる。グリップに優れたMスポーツのレザーステアリングホイール以外では、スポーツシート、そしてスケールの広がったスピードメーターとタコメーターくらいしかスタンダードモデルとの差は見当たらない。ここでBMWは、「中身で勝負」と自らがプレミアムに属していることを主張したいのだろうが、せっかくもっともスポーツ性の高い1シリーズを選択したユーザーには物足りないだろう。
スペックは似た値の2台だが、ワインディングで性格の違いが見えた
R32に搭載されるエンジンは3.2L V6で最高出力は250ps/6300rpm、最大トルクは320Nm/2500-300rpmを発生する。そしてこの標準ゴルフの2倍以上に相当するパワーは、6速DSGミッションを介し、ハルデックスクラッチによって4輪に配分される。
130iは、3Lの排気量から最高出力265ps/6600rpmと最大トルク315Nm/2750rpmで、R32に比べれば排気量が小さい分、やや高い回転ポイントで発生させる。
ちなみにBMWの直列6気筒エンジンは、クランクケースなど主要パーツが超軽量マグネシウム/アルミ合金で出来ており、重量は116kgと軽量のV6エンジンに相当する。またエンジン搭載位置はフロントアクスル後方、つまりフロントミッドシップなので、BMWの主張する前後アクスル50対50の重量配分を実現している。
走り出すとすぐにわかるのは、両メーカーの主張である。R32は主に4WDシステムのために空車重量が1594kgと130iよりも144kg重く、そのパワーウエイトレシオは6.38kg/psとなる。一方130iは5.47kg/psと、フットワークの良さを最初から暗示している。
ところがR32をスタートさせてみると、その加速フィールは決して侮れない。それどころかフルスロットルを試みると、後輪へのトルク移動で前輪がスリップすることなく背中から突き飛ばされるような感覚を味わえる。ただし0→100km/hは6.5秒と、130iの6.1秒にはやや劣る。
130iのエンジンは回転にメリハリがあり、スロットルを開くと、タコメーターの針が生き物のようにメーターを駆け巡る。さらに前方からの吸気サウンドはいかにも緻密なハイテクエンジンを彷彿とさせる。
反対に、幅広い範囲で厚いトルクを発生するR32のエンジンは回してもドラマチックな展開はないが、追い越し時などの中間加速は頼もしさを感じる。計測はできなかったが、80→100km/h加速はおそらくR32の方が上手、あるいは同等かもしれない。またR32では130iと対照的に、後方からのエキゾーストサウンドが勇敢に響いてくる。ややアナクロな感がしなくはないが、スポーツドライブを楽しむ際の伴奏にはなる。高速時のブレーキ性能は、共にパフォーマンスに見合った能力を発揮していた。
やはり、2台が大きく異なるのはワインディングを含む一般道路での印象である。駆動力から解放された130iのニュートラルなステアフィールは鮮明で、路面からの情報、そしてステアリングによってクルマの進むべき方向をリアルタイムで伝えてくれる。
もちろんR32も負けてはいない。320Nmの大トルクにもかかわらず、不快なトルクステアはミニマムで、十分にスポーティなドライブが可能である。またコーナリングは終始安定した弱アンダーステアを保っている。
ただし、これは路面がドライな状況に限っての話。ウエットになるとパワフルな後輪駆動の130iは、より慎重なスロットルワークが要求される。4輪駆動のR32はその点、ウエットを意識した運転をする必要はない。実際、我々のテストした数日間、早朝は常に露で濡れており、ここでは130iがお尻を振っている横を、R32が何の問題もなくスッと通り抜けて行った。
BMW130iは、骨の髄からドライビングマシンである。フロントエンジン&リアドライブ、駆動力から解放された素直なステアリングフィールは、何者にも代えがたい。腕に自信のあるドライバーには、こんなに面白いクルマは他には存在しない。リアシートの窮屈さが気になるのだったら、最初から2+2のスポーツクーペを買ったのだと考えれば、大いに納得できる。もともと、エモーショナルな買い物と割り切るべきモデルだ。
一方、フォルクスワーゲンR32は、理性的なスポーツコンパクトモデルである。3.2L V6エンジンから発生する250psのパワーは4輪に伝達され、いかなるドライビングコンディションでもシュアな操縦安定性を約束する。このクルマを購入すると、自分よりも周囲の人達から「うんそうか、あなたはやっぱり合理的な考えの持ち主だったのだ」と感心されるに違いない。そういうモデルなのである。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年12月号より)
フォルクスワーゲン ゴルフR32(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4246×1759×1465mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1594kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3189cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●駆動方式:4WD
※欧州仕様
BMW 130i M-Sport(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1750×1415mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1450kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:265ps/6600rpm
●最大トルク:315Nm/2750rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR※欧州仕様
[ アルバム : ゴルフR32とBMW130i はオリジナルサイトでご覧ください ]
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
一般車両侵入でSS12中止のラリージャパン、主催者に約800万円の罰金! 執行猶予付き1600万円の追加罰金も
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
レクサス新型「小型スポーツカー」がスゴい! “テンロクターボ”×初の6速MTを搭載! 最小SUV「LBX MORIZO RR」どんなモデル?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
いろいろ不満もあるけど、今じゃ価格も安くなってきたし、買って良かった!大満足です。