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安物買いの銭失い? 100万円台のポルシェ911は買っても本当に大丈夫なのか?

掲載 更新 26
安物買いの銭失い? 100万円台のポルシェ911は買っても本当に大丈夫なのか?

 空冷フラット6エンジンを搭載するタイプ993(1994~1997年)やタイプ964(1989~1993年)の中古車価格は、狂気の沙汰といっても差し支えないほどの異常な暴騰ぶりだ。

 964カレラ2のMT車が800万円オーバー、964RSが3000万円オーバーと天井知らずの状態が続いており、993カレラのMT車についても900万円オーバー、ターボボディのカレラ4Sは1300万円オーバーという、10年ほど前の中古車相場を知っている人にとっては、呆れて買う気も起きないほどの、空冷ポルシェ人気が続いている。

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 しかし、その一方で、空冷エンジンから水冷エンジンに変わった涙目のタイプ996や丸目に戻ったタイプ997の前期型は、空冷911とはまったく逆の、超激安価格で、特に996前期型は170万円から探せる。

 でも、100万円台後半で買えるポルシェ911って大丈夫か? と疑心暗鬼になる人も少なくないはずだ。

 100万円台の激安ポルシェ911を本当に買っても大丈夫なのか、中古車事情に詳しい伊達軍曹が、真相に迫ってみた。

文/伊達軍曹
写真/伊達軍曹 ガレージカレント ポルシェ
取材協力/ガレージカレント

【画像ギャラリー】ポルシェ911、タイプ993/996/997のディテールを写真でチェック!

なぜ水冷エンジンに変わったタイプ996の中古車は激安なのか?

1997年にデビューしたタイプ996。300ps/35.7kgmを発生する水冷3.4Lフラット6を搭載。いわゆる涙目型のヘッドライトが特徴

2001年5月に後期型にマイナーチェンジ。ヘッドライトデザインが911ターボと同形状に変更。エンジンはバリオカムプラスを採用し、3.6Lに拡大、320ps/37.6kgmを発生する

 空冷エンジンを搭載していた往年のポルシェ911は世界的に中古車相場が高騰しており、コンディションの良い個体は1000万円超となる場合も決して珍しくない。

 だがその一方で、水冷エンジンに置き換わったばかりのポルシェ911は今、一部が爆安相場となっている。

 具体的には、911としては初の水冷エンジンとなったタイプ996(1998~2004年)のうち、2001年5月までの前期型カレラは車両170万円前後から探せる状況で、排気量とヘッドライトの意匠などが変わった2001年5月以降の後期型カレラでも180万円前後から。

 そして、さまざまな部分が改良されたタイプ997(2004~2011年)のカレラも、初期年式であれば車両290万円前後から狙えてしまうという状況なのだ。

タイプ996の中古車情報はこちら!

2005年モデルのタイプ997で丸型ヘッドライトが復活。前期型は325ps/37.7kgmの3.6Lと355ps/40.8kgmの3.8Lを用意。2008年6月に発表された後期型は直噴エンジンやPDK(デュアルクラッチ式MT)を搭載

 世界的な名車である「あのポルシェ911」が、100万円台とか200万円台という国産車並みの予算で買えてしまうというのは、ある種の人にとっては「マジか!」と叫びたく話であるはず。

 だが、これらの(ポルシェとしては)格安予算で狙える中古911は、正味のところどうなのか?

 「もちろん中古車なりの難点はいくつかあるけど、決して悪くはない」というのであれば、ぜひ検討対象に加えたいところだが、「いや~、やめといたほうがいいでしょ」というのであれば、そっと記憶から消してしまったほうがいい。

輸入車専門店ガレージカレントに取材!

横浜にショールームを構える輸入車専門店、ガレージカレントさんに取材に伺った。所在地は神奈川県横浜市青葉区美しが丘4-52-16

 で、実際のところはどうなのか? 空冷モデルから水冷モデルまでの歴代ポルシェ911を数多く取り扱っている横浜市の輸入車専門店「ガレージカレント」の栗田佳祐店長に、“正味のところ”を聞いた。

――一部の996前期カレラは車両価格170万円ぐらいから探せるわけですが、ああいうのって買っちゃっても大丈夫なんでしょうか?

栗田店長 う~ん……。人様の買い物に口出しをしたいわけではないのですが、私、個人的にはお薦めしていませんし、当社としても、その価格帯の前期996は取り扱っていませんね。

――それは例のインタミ問題があって、996前期はポルシェジャパンがやっている「サービスキャンペーン」の対象外だからですか?

(※編注:インタミ問題というのは、タイプ996とタイプ997前期のエンジンで使われていた「インターミディエイトシャフト」のボルトとベアリングが走行中に破損し、エンジンが壊れてしまうという問題。タイプ996後期型以降の正規輸入車は、ポルシェジャパンのサービスキャンペーンによる無償の点検を受けることができ、場合に応じて対策修理やエンジンの交換などが行われている)

栗田店長 いや、必ずしもそうではありません。996前期がサービスキャンペーンの対象外であることは事実ですが、私がこれまで販売させていただいた数多くの996前期、つまり「整備履歴と現状のコンディションを見極めたうえで仕入れ、そしてしっかり整備をしてご納車した前期996」では、お陰さまで今まで1台もインターミディエイトシャフトの破損を起こしていないんですよ。1台も、です。

――そうなんですか? なら、996前期を買っちゃってもいいような気もしますが?

栗田店長 しかしですね……具体的な価格を言うことはできませんが、オークション会場でかなり安いプライスで出品されている996前期は……、まぁちょっと大変ですよ。

 エンジンからものすごいうなり音が発生していたりしますから。あれは仕入れられませんね。ウチでは無理です。

――やっぱそうなんですか……。

栗田店長 クルマに限らず何でもそうだと思いますが、安いモノには「安い理由」があるんですよ。

 「状態のいいモノをたまたま安く仕入れることができた」という可能性もゼロではないでしょうが、もしも本当に状態がいいのであれば、わざわざ安くしないで普通のプライスで売りますよね? そうすれば、販売店としては儲かるわけですから。

ヘッドライトレンズに透明感があるかどうかもチェックポイントになる

―― “うまい話”はないってことですね……。サービスキャンペーンの対象となっている996後期(2001年5月~)の、100万円台とか200万円ちょいの中古車はどうでしょう?

栗田店長 これもインタミ問題の以前に、かなり安い個体はメンテナンス状況が最低であることが多いため、当社ではお取り扱いできない場合が大半です。

 先日も、996後期の買い取り依頼でいらっしゃったお客様がいたのですが、正直申し上げてメンテナンス状況は大変よろしくなく、エンジンはぜんぜんフケませんし、例のうなり音もすごい……ということで、申し訳ないのですがお断りしました。

 そういった個体は、例の「6番シリンダー問題」が今後発生するか、もしくはすでに発生している可能性も大ですし。

――「6番シリンダー問題」というのは、996と997前期のエンジンでしばしば発生するという、右バンクの6番シリンダーに傷が入ってエンジンがブローしてしまうという問題ですね?

栗田店長 今「しばしば発生する」とおっしゃいましたが、実際はそんなこともありません。私がこれまで販売させていただいた996後期や997前期は、1台も「6番シリンダー問題」が発生していません。

 まぁ正確な原因が100%は特定されていないため断言はできないのですが、結局はこれも「メンテナンス次第」なのだと私は思っています。

 冷却水やオイルなどがしっかり管理されてきた個体であれば、そう簡単に起こる問題ではないんですよ。

超格安996はサイドステップ付近がキズだらけな個体が多く、そういった個体は全体のコンディションもイマイチである場合が多い

――しかし爆安な個体の場合は?

栗田店長 これまた断言はできませんが、爆安な個体はメンテナンスがイマイチだった場合が大半であるため、シリンダーに傷が入ってしまうこともあるでしょうね。

 その場合、ポルシェジャパンはこの問題をサービスキャンペーンの対象外としているため、自費での修理となります。数百万円レベルの修理代がかかることもありますよ。

――996後期あるいは997前期を購入する際に、「6番シリンダー問題」を回避するコツのようなものはあるんでしょうか?

同じく超格安で状態イマイチな996は、シフトコンソールの樹脂パネルがキズだらけである場合が多い。要するに「扱い方が雑だった」ということ

栗田店長 まずは「あまりにも安い中古車には手を出さない」というのが重要となります。先ほど申し上げたとおり、安いモノには安いだけの理由が必ずありますからね。あとは「前兆」を見極めることでしょうか。

――前兆というと?

栗田店長 経験上、エンジンの右バンクに問題が生じる996後期/997前期はたいていの場合、以下のような前兆が認められます。

●右側のマフラーにだけカーボンが付着している
●エンジン始動時、水蒸気ではなく、オイルが燃えた「白煙」が上がる
●アイドリング中、エンジンから「タンタンタンッ」という打音のような音が聞こえる

 こういった個体は、避けたほうがいいでしょう。

ワイパー下にある樹脂パネルの状態も、保管状況の良し悪しを知る手がかりのひとつ

――なるほど……。「安いモノには安いだけの理由が必ずある」というのはわかりましたが、具体的には「いくらぐらい」を目安とすれば、比較的安価であっても安心して乗れる中古の水冷911が探せるのでしょうか?

栗田店長 中古車のコンディションは個体によって千差万別ですので、一概に「いくら」とは言いにくいのですが……。あくまでも目安としては、以下のニュアンスになるかとは思います。

●996前期AT:車両価格200万~300万円くらい
●996前期MT:車両価格250万~400万円くらい
●996後期AT:車両価格250万~370万円くらい
●996後期MT:車両価格300万~450万円くらい
●997前期AT:車両価格380万円~
●997前期MT:車両価格450万円~

――う~む、やはり「100万円台の予算でポルシェ911を買う!」というのはちょっと無理があったようですね……。

栗田店長 そのあたりは考え方次第ではないでしょうか? と言いますのも、コンディションや装備レベルが良好なポルシェ911は、世代を問わず「リセール相場」がかなり高いですから、安めの難アリ物件を買って二束三文で手放すより、ちょっといいやつを買って数年後に高く売るほうが、結局はおトクなんですよね。

エンジンルーム内の手前左側にある冷却水のサブタンク。本来は白いはずのこのタンクが黄色に変色している場合は注意が必要

――そんなもんですか?

栗田店長 そんなもんですよ。例えばこちらのオレンジレッドパールの996カレラは、前期型ですがコンディションも整備履歴も上々で、この希少色もハマる人にはハマりますから、例えば2年後も、けっこういい値段をお付けできるはずです。

――ほほう……。

580万円で販売されている997カレラS

上記911カレラSの内装。ただの黒革内装ではないこういった色の革内装は、高く売れる場合が多い

栗田店長 そして997のカレラであれば、例えばこちらの物件のような紺系の外装色(アトラスグレー)+タンレザー(テラコッタ)内装」だったり、また例えばこちらのように純正カップエアロが付いていたりすると、将来的にもかなり高く買い取らせていただくことが可能です。

 さらに「スポーツクロノパッケージ」や「スポーツエキゾースト」などといった超人気オプション装備も、付いている個体のほうがリセール価格は圧倒的に上ですよね。

 つまりポルシェ911は「最初の安さ」だけを考えるのではなく、所有期間中の満足度や売却価格まで含めた「総合的なコストパフォマンス」を重視していただくのが、結局は正解なんです。

――なるほど……。「安物買いの銭失い」になりがちな自分をいさめるためにも、ちょっと冷静に考え直してみることにします!

こちらの3連のプーリーは樹脂製。年式的に、一度も交換されていない場合は走行中に破損してしまうおそれあり

取材協力/ガレージカレント

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みんなのコメント

26件
  • 大丈夫だと思います。
    自分のモノになってから1000万円ぐらい掛けて、メンテすれば良いだけだから。
  • まぁでもいくら内外装やエンジンの状態が良くても年式が古くて長期間動かしてない車は半年くらい一気に乗ったらどっかしら交換修理は必要になるよね
    古いポルシェを通勤で毎日乗るような人はあんまおらんとは思うが
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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