駆動用バッテリーは44.9kWhか60.4kWh
いよいよ英国市場にも参入した、中国のBYD。今回試乗したドルフィンは、この土地でも主要な自動車メーカーになりたいと考える、同社の重要な2歩目の足がかりとなる。
【画像】小さな波は起こせる BYDドルフィンとアット3 競合クラスのBEVと写真で比較 全118枚
既に英国でも、小型クロスオーバーのアット3の販売は始まっている。このドルフィンは、フォルクスワーゲンID.3よりひと回り小さいハッチバックだ。
スペインのサーキットでの試乗レポートはご紹介済みだが、今回はより長い時間、一般道での走行が許された。詳しく実力を評価していこうと思う。
アット3とは異なり、比較的個性の薄いスタイリングが包むアーキテクチャは、BYDのeプラットフォーム3.0と呼ばれるもの。自社製造のリン酸鉄リチウム(LFP)駆動用バッテリーが、フロアに敷き詰められている。
このLFPバッテリーの特徴は、希少なコバルトを使用しないこと。従来の乾電池のようなセルではなく、細長く薄い形状をしており、体積を抑えたことも強みだ。
英国のエントリーグレードとなるアクティブの場合、駆動用モーターの最高出力は95psで、駆動用バッテリーの容量は44.9kWh。航続距離は339kmがうたわれる。ブースト・グレードへ格上げすると、最高出力は176psへ上昇。航続距離は310kmへ短くなる。
コンフォートとデザイン・グレードを選ぶと、駆動用バッテリーは60.4kWhへ増加。駆動用モーターは203psへ強化され、航続距離は426kmへ増える。急速充電能力は、小容量のバッテリーで最大60kWhまで対応。大容量の方では、80kWhへ増える。
アット3に似ているドライビング体験
今回試乗したドルフィンは、203psのコンフォート・グレード。ところが、前回とは異なり加速が不自然に穏やか。疑問を感じ確かめてもらうと、パワーを抑えアクセルレスポンスが緩くなる、工場出荷時のデリバリー・モードになったままだった。
スペインでは充分に活発に感じられ、高速道路の速度域まで加速が鈍ることはなかった。設定ミスということで、動力性能を確かめるのは機会を改めるしかない。
それでも、全体的なドライビング体験はアット3へ近い。サスペンションはソフト志向で、乗り心地は悪くないものの姿勢制御は緩め。カーブ途中の厄介な隆起部分では、安定性が少し崩れる様子もあった。
ドルフィンは、サスペンションのストロークがアット3より僅かに短い。そのため、速度域全般で入力をなだめるのに手を焼いているようでもあった。ステアリングホイールへは、ドライブモードを変えてもほとんど路面の感触が伝わってこない。
試乗したドルフィンが履いていたタイヤは、リンロン社のコンフォートマスター。少なくとも暖かく乾燥した路面では、不満ないグリップ力を提供してくれていた。
トラクション不足やトルクステアは感取されなかったものの、パワーが低いデリバリー・モードなことが影響しているはず。回生ブレーキの効きは、もう少し強い方が運転しやすいと思う。
充分な製造品質に低くない実用性
インテリアには、アット3ほどの斬新さはない。ダッシュボードの見た目はスマートで、英国価格を踏まえると、製造品質は充分。科学物質的な臭いが強めに残っていた。
ドライビングポジションは良好。シートは電動でスライドできるが、ランバーサポートの具合や、座面の高さは変えられない。
実用性は高そうだ。運転席周辺にも沢山の収納スペースが用意され、ダッシュボード中央のタッチモニター下部には、スマートフォンを置くのにちょうど良さそうなトレイもある。
後席側の空間も、高身長の大人でも不満のない広さ。荷室容量は345Lで、このクラスとしてはかなり大きい。荷室のフロアは、高さを調整できる。
12.6インチという大きなタッチモニターは、反応が素早く表示も鮮明。だが、サブメニューの項目が多く、折角の大画面を有効に使えていない印象。エアコンの温度調整も、毎回サブメニューをタップする必要がある。
車線維持支援システム付きの、アダプティブ・クルーズコントロールは標準装備。ほどほどスムーズに機能していた。制限速度を超えると警告してくれるのだが、誤作動も多い。簡単にオフにできてもいいだろう。
小さな波は起こせるお手頃な英国価格
果たして中国からやってきたドルフィンは、このクラスのバッテリーEV市場へ大きなうねりを生み出すだろうか。お手頃な英国価格を見れば、少なくとも小さな波は起こせるように思う。
リア・サスペンションがトーションビーム式になる、エントリーグレードのアクティブの英国価格は、2万5490ポンド(約446万円)から。今回試乗したコンフォートは、2万9490ポンド(約516万円)で、デザインは3万990ポンド(約542万円)となる。
現在販売されている他社のバッテリーEVでは、ドルフィン級のボディサイズと航続距離を同等の価格で得ることは難しい。同じく中国資本の、MGモーター MG4を除いて。
ただし、アット3の結果を踏まえると、BYDが主張する航続距離は少し甘い。今回の試乗での電費は6.6km/kWhとなり、単純計算で400km程度と考えていい。
BYDはお手頃な価格ではなく、スタイリングや完成度などを気に入って、ドルフィンを選んで欲しいと考えている。しかし、インフォテインメント・システムやシャシー、インテリアなどで、強い印象を残せるほどの洗練性は得られていない。
とはいえ、間違いなく価格での訴求力はある。多少至らない部分があっても目を潰れる、という人は少なくないかもしれない。
BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)のスペック
英国価格:2万9490ポンド(約516万円)
全長:4290mm
全幅:1770mm
全高:1570mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:7.0秒
航続距離:426km
電費:7.0km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1658kg
パワートレイン:AC非同期モーター
駆動用バッテリー:60.0kWh(実容量)
急速充電能力:88kW
最高出力:203ps
最大トルク:29.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード/前輪駆動
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みんなのコメント
これでも中国を下に見てる奴ってほんと周りが見えないし頭悪いんだろうね
お気の毒です、、、