■オールシーズンタイヤが使われる場面は9割以上がドライ・ウェット路面
2019年も早いもので10月の半ばを過ぎました。日本全国をみるとすでに初雪を観測した地域もあり、そんなニュースを見ると「そろそろタイヤ履き替えの時期か」と思う人もいるのではないでしょうか。
冬といえば真っ先にスタッドレスタイヤへの履き替えが思い浮かびますが、非降雪地域ではその性能をほとんど使うことなくシーズンが終わってしまうことも少なくありません。
そんな非降雪地域のユーザーの間で近年話題になっているもうひとつのタイヤジャンルがオールシーズンタイヤ(全天候タイヤ)と呼ばれるタイヤです。
オールシーズンタイヤは、その名の通り一年中さまざまな路面状況において走行できるタイヤとされています。タイヤを履き替える手間もなく、外したタイヤの保管場所も不要。そして夏用と冬用をそれぞれ揃える必要もないので、コスト的にもお得です。
オールシーズンタイヤは意外と古くから存在しており、日本では2008年から発売されたグッドイヤーの「ベクターフォーシーズンズ 」が有名ですが、2018年にはミシュランが「クロスクライメート」を発売。2019年にはダンロップが「オールシーズンマックスAS1」を発表しました。
これらのメーカーサイトを覗いてみると、ドライ路面やウェット路面では夏タイヤと同等の性能を有し、ちょっとした雪やシャーベット路面ならばそのまま走行可能。冬タイヤの証である「スリーピークスノーマウンテンマーク」や「M+S(マッド+スノー)マーク」も取得し、高速道路冬用タイヤ規制でも通行可能とされています。
では、オールシーズンタイヤのドライ・ウェット路面の実力はどうでなのしょうか。
それを確かめるため、今回はグッドイヤーから発売されている「アシュアランスウェザーレディ」を試してみました。ドライ・ウェット路面を2カ月ほど使用してみたので、その印象をお届けします。
■グッドイヤーの「アシュアランスウェザーレディ」の夏タイヤ性能は
オールシーズンタイヤが実際に使用されるシチュエーションは、9割以上がドライ・ウェット路面での使用になるはずです。そうなると、夏タイヤとしての性能は非常に重要であることはいうまでもありません。
今回使用するアシュアランスウェザーレディは、グッドイヤーのオールシーズンタイヤのSUVサイズと考えて良いでしょう。
使用するクルマはマツダ「CX-8 XD LパッケージAWD」。タイヤサイズは235/55R19で、空気圧はメーカー指定の前後250kPaに合わせました。
タイヤを実際に見てみると、やはり夏タイヤとはちょっと違った印象です。トレッドにはスタッドレスタイヤの特徴でもある細かい「サイプ」が無数にあり、ブロックの溝も夏タイヤに比べると深く、いかにも雪をひっかいてくれそうです。
このようなトレッド形状のため、見た目からは「ロードノイズがうるさそう」と思ってしまいますが、走り出してみるとそのイメージは180度覆りました。
ロードノイズはゴムが路面を叩く「ブロックノイズ」とゴムやタイヤパターンに含まれた空気がはじける「パターンノイズ」に大きく分かれますが、アシュアランスウェザーレディのロードノイズは純正の夏タイヤと同等です。
これであれば、オールシーズンタイヤを選んだがばかりに「車内の会話がしずらくなった」なんてことは無いでしょう。同様に、ウェット路面でもロードノイズが大きい印象は受けませんでした。
続いて乗り心地です。あくまでも純正の夏タイヤとの比較ですが、この性能については「純正以上に快適」といって過言ではありません。
純正の夏タイヤは小さな段差を乗り越えたときに「三角形」を乗り超えるような突き上げを感じていましたが、アシュアランスウェザーレディでは「かまぼこ型」を乗り越えたような印象なのです。
フィーリングの部分なので表現が難しいのですが、全体的に突き上げ感がマイルドなので、ほとんどの人が「乗り心地の良いタイヤ」だと感じることでしょう。
■スタッドレスタイヤにありがちな車体のふらつきは一切ない
こうなると気になるのが操縦安定性。スタッドレスタイヤにもいえることですが、路面のアタリが柔らかいタイヤはふらつきや直進安定性が損なわれがちです。
郊外にある山道を走ってみましたが、まず感じるのは素直なステアリング特性。ステアリングの切りはじめからヨーが自然に追従し、車体が遅れて着いてくるような感覚はありません。
少々速いと感じる速度でコーナーを曲がってみると、グッと粘るような感覚で重い車体がコーナーに沿ってキレイにトレースします。タイヤのたわみによる出口での振り返しや挙動の乱れもなく、雨の日に同じ道を走っても印象が変わることはありませんでした。
軽快というよりは粘りのある手応えなので、決してスポーティではありませんが高い安心を感じることができます。
高速道路では優れた直進安定性を発揮します。スタッドレスタイヤではありがちなステアリングのセンターがあいまいになる感覚はなく、ワインディングで感じた印象と同じように非常にニュートラルな特性で、レーンチェンジでも狙ったラインにピタッと移動することができます。
ここでのロードノイズも非常に少なく、クルマの特性かもしれませんが、風切り音の方が気になるほどでした。荒い路面では「ゴーッ」という音がそれなりに聞こえますが、純正の夏タイヤでも同じ道で聞こえていたので同等と考えて良いでしょう。
ここまでは良い部分を書きましたが、もちろん気になる部分もあります。まずはトレッド面のブロックパターン間隔が広いため、小石が詰まりやすいこと。次に見た目で、夏タイヤよりも少々ゴツい印象になること(人により好き嫌いは分かれると思いますが)。
そして最後に市場での価格が高いことです。同社のスタッドレスタイヤと比べても、市場価格は約1.4倍まで上がります。とはいえ、スタッドレスタイヤと冬用ホイールを用意する必要がなく、保管場所や交換費用も必要ないと考えれば断然リーズナブルではあります。
ですから夏タイヤとオールシーズンタイヤを持つという考え方はせず、あくまでも夏タイヤとの置き換えで、スタッドレスタイヤいらずと考えることです。そうすれば、価格のことも納得できるはずです。
今回オールシーズンタイヤを履いてみた印象は、「確かに夏タイヤの性能と遜色なかった」です。むしろ、秀でた性能の方が多かったように思います。
このタイヤ性能であれば、雪が降っていない時期にずっと使っていてもストレスを感じることはまずないでしょう。タイヤを知らせることなく人に運転させたならば、オールシーズンタイヤだと気付く人はまずいないはず。
それほどに、今のオールシーズンタイヤの性能は上がっていることを今回感じることができました。もう少し長く乗ってみた後、ライフ性能や低燃費性能も検証し、雪が降ったときは雪上性能も試してみたいと思います。
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