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TNGAがいよいよ手に負えなくなってきた【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

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TNGAがいよいよ手に負えなくなってきた【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

車の最新技術 [2023.08.04 UP]


TNGAがいよいよ手に負えなくなってきた【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●トヨタ

【ランドクルーザー 250】プラドから250へ。原点回帰でさらに信頼できる存在に

 トヨタ自動車がランドクルーザー250を発表したことが話題になっている。本格的なクロカンモデルを300系、250系、70系と3種もラインナップする。しかも頭の2車種にはレクサスモデルまであるのだ。そのパワープレイぶりには、もはや競合各社が気の毒になる。


世界初公開されたランドクルーザー 250が加わることで、日本でランドクルーザー全3シリーズが揃う。写真はプロトタイプ
 なんとなく気づいているだろうが、もはやグローバルで見ても、総合自動車メーカー各社ではモデルの整理が進んでおり、特に本格クロカンモデルとスポーツカー、大型セダン、それにハッチバック系コンパクトカーはこのままだと絶滅しかねない勢いである。

 トヨタだけ、なんで涼しい顔でそんな大量リリースができるのかと言えば、それは15年デビューの先代プリウスから着々と進めてきたTNGAの戦果である。今月1日に発表された第1クォーターの利益に具体的な数字が表れている。4-6月の利益は1兆1209億円。4倍したら年間利益ということになるが、だとすると、雑な計算上、今期は4兆5000億円の利益が出るわけだ。

 知っている人は知っているだろうが、TNGAはプラットフォームのことではなくトヨタそのものの強靭化プロジェクトであり、製品の魅力を向上させながらコストを落とし、作る側だけでなく、売る側でも直す側でも全てにおいて、真の意味で高効率化を進める改革である。


トヨタによる「TNGA」の概念図(2022年4月公開)。体制については、2023年5月に電気自動車の専任組織「BEVファクトリー」が加わっている
 例えばヴィッツとヤリス。販売上ではヤリスはヴィッツの後継車だ。しかし乗ったことがある人なら分かる通り、クルマの出来は段違い。別のメーカーのクルマかと思うほどレベルが違う。言うまでもないがヤリスの圧勝だ。にも関わらず、シャシーのコストはヤリスの方が安い。「性能を向上させながらコスト低減」と聞くと、「そんな都合のいい話があるわけない。結局コストダウンの言い訳だろう」と思うのが普通で、筆者だって最初はそう思っていた。

 けれど現実に次々と出てくる新型車に乗ると、認めざるを得ない。ちなみに「ヴィッツよりヤリスの方が高いじゃないか」というのはその通りだが、装備も環境対策も安全対策も大幅に進歩しており、そのコストの一部がオフセットされていると考えるべきだろう。

 トヨタは毎年3000億円の原価低減を進めながら、商品力を向上させてきた。10年続ければ3兆円のコストダウンである。それがラインナップの差となって表れている。利益の薄いモデルをどんどん廃止せざるをえなくなるメーカーと、むしろラインナップが増加して行くメーカーに分かれつつある。というか増えているのはトヨタ1社ではあるのだが。

 具体的にその差がどこにあるのかと言えば、トヨタ自身が6月のテクニカルワークショップで明らかにしている。そこで発表されたのは「工程1/2」「工場投資1/2」「生産準備1/2」という恐ろしいまでの低コスト化計画である。


トヨタの資料より。トヨタは次世代型電気自動車の開発を通じて、ものづくりの仕組みと工程を変革しようとしている
 コンピュータとロボットを上手く使った標準化を進めることで、これまでの車種ごとに特化した設備を止め、汎用化していく、モデルチェンジしても同じ生産設備を使って、同じラインで作れるようになれば、新型車をたくさん出しても出費が少ない。

 ちなみにこれは設計でも同じだ。数理モデルを徹底的に使ったコンピュータシミュレーションで基礎を共通化してしまえば、開発速度が上がりコストが下がる。それらの合わせ技ですでにトヨタは損益分岐台数をピーク時の6割まで下げている。だから儲かる。

 仮に競合他社がトヨタのヒットモデルを潰そうと、戦いを挑んでも、トヨタは相手の出方を見ながら次々と改良モデルを出したり、モデルチェンジをする手が打てる。競合社がその手に乗せられたら地獄が待っている。何しろそういう作業をトヨタは、より短い期間で、かつコスト1/2でできる。正面から戦ったら消耗率があまりにも違う。なのに相手の方が資本規模がデカい。絶望しかないではないか。

 ということで、トヨタのTNGA改革の成果は、いよいよ結果にはっきりした形に現れ始めた。筆者としてはトヨタの一人勝ちが進みすぎるのは決して望ましいとは思えない。多くの自動車メーカーがその個性を競いながら、多様な製品からクルマが選べる時代が続いて欲しい。各社の一層の奮起を是非とも期待するところである。

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  • 手に負えないのは貴方のこの文面じゃないでしょうか
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