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唯一のマラネロ・コンバージョン フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー フィアット会長の愛車 後編

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唯一のマラネロ・コンバージョン フェラーリ・テスタロッサ・スパイダー フィアット会長の愛車 後編

内装やメカニズムはベルリネッタと同じ

フェラーリ・テスタロッサで圧倒されるのが、1980mmある全幅。スパイダーはルーフがなく低く見えるため、一層ワイドだ。ところが実際は、メルセデスAMG GT クーペと大きくは違わない。ステアリングホイールを握っても、扱いにくさはない。

【画像】フェラーリ・テスタロッサ ベルリネッタとスパイダー 最新のオープン・フェラーリも 全148枚

試乗したのはフランス・パリの郊外で、見慣れた景色が広がる。アルプス山脈の峠道を駆け登ったり、南部の海岸線をマレッラ婦人と一緒に流した、ジャンニ・アニェッリ氏の体験を想像することは難しい。

インテリアは、ベルリネッタのテスタロッサとほぼ同じ。ダッシュボードは直線基調で、センターコンソールにはオレンジの目盛りが振られた水温計と燃料計が並ぶ。

手前側には、沢山のスイッチが整列している。どんな機能なのか表示が曖昧で、最後まで何用かわからずじまいのものもあった。

メカニズムも基本的には変わらずで、3枚のペダルが中央側にオフセットしている。低速域では、アシストのないクラッチとステアリングホイールが重い。それ以外、驚くほど運転しやすいことも共通している。

5速MTは、伝統的なオープンゲートのドックレック・パターン。1速が左下にある。それに慣れてしまえば、5.0Lの水平対向12気筒が生み出す豊かなトルクに乗れる。変速もサボり気味でいい。

今日の路面は湿っていて、リアのミシュランTRXタイヤは簡単に空転する。優しくアクセルペダルを倒しても。静止からの加速は、期待ほど鋭くない。

テスタロッサが得意としたのは、長距離を一気にこなすグランドツアラー的な走り方。どこまでも、高速で走り続けられそうな気になる。

スタイリングやソフトトップの見事な処理

自然吸気のフラット12は、4000rpm以下でもタービンのように滑らかに回転。フランスの一般道では賢明といえない速度域まで、簡単に到達してしまう。エンジンとエグゾーストのサウンドは控えめ。トンネルで吹かしてみても、意外なほど静かだった。

速度域に関わらず、テスタロッサ・スパイダーは安定している。160km/hを超えても、不安感は一切ない。アニェッリも、気ままに高速道路を飛ばせたことだろう。

乗り心地はしなやかで、ボディはソリッド。ルーフがなくなることへの強化対策を、フェラーリは入念に施したに違いない。

スタイリングも、ダイナミックなサイドデッキがエンジンカバーに融合する処理や、白いソフトトップの収まりまで、見事に整えられている。フロントガラスの上部には、クリップでウインドディフレクターを取り付けられる。

ちなみにアニェッリは、電気機械式のアクチュエーターでクラッチを操作する、ヴァレオ社製のセミ・オートマティックに換装したF40を所有していた。1952年の自動車事故で、左足が義足だったためだ。

これは、ランチアのラリーカー用に開発されたもの。数年後に、2+2のフェラーリ・モンディアルでも採用されている。左足を動かすことなく、シフトレバーを傾けるだけでクラッチが自動的に切れ、繋がる。

テスタロッサ・スパイダーのセンターコンソールにあれこれ触っていたら、偶然にもクラッチペダルが奥まって固定されるボタンを発見した。このフェラーリも、F40と同じシステムが組まれているようだ。

豪華で快適、卓越したグランドツアラー

テスタロッサのスパイダーは、アニェッリ以外にも欲しいと考えた人がいた。東南アジア、ブルネイの王族も2台を所有していた。ピニンファリーナ社によって改造された例もあったが、多くは非公式にルーフが切り取られたものだった。

アニェッリが2003年にこの世を去るまで、シルバーのスパイダーは手元に残されていた。彼は1996年にフィアットを退いていたが、訃報を受け工場の生産ラインは一時止まり、喪に服したという。

1990年代に厳しい状態にあったフィアットのように、1人息子のエドアルドは自身の生き方を発見できなかった。父の後継者になる可能性を得ることなく、2000年に自殺している。

1980年代のスーパーカーで、頂点の1つに数えられるフェラーリ・テスタロッサだが、優れないイメージが足を引っ張った。それでも豪華で快適な、卓越したグランドツアラーであることは間違いない。

このシルバーのテスタロッサは、近代のイタリアで最も影響力を持つ人物の1人がオーダーし、フェラーリが製造した唯一のスパイダーだ。その価値は、通常のベルリネッタとは比べ物にならないだろう。

陽気なアメリカ・マイアミ半島のイメージに引っ張られそうだが、目の当たりにするとクールでスタイリッシュ。落ち着いたボディカラーは、思慮深さも漂わせている。初代オーナーの姿が重なるからかもしれない。

「プレイボーイになりたいと考える人は少なくありません」。とアニェッリは言葉を残している。「それをたしなむ人もいれば、できない人もいるものです」

フェラーリ・テスタロッサ(1984~1991年/欧州仕様)のスペック

英国価格:6万2666ポンド(新車時)
販売台数:7177台(ベルリネッタ)
全長:4500mm
全幅:1980mm
全高:1130mm
最高速度:292km/h
0-97km/h加速:4.7秒
燃費:5.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:1506kg
パワートレイン:水平対向12気筒4943cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:390ps/6800rpm
最大トルク:49.8kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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