現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ロータリーターボを世界初搭載したファン・トゥ・ドライブ マツダ コスモ試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

ここから本文です

ロータリーターボを世界初搭載したファン・トゥ・ドライブ マツダ コスモ試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

掲載 更新
ロータリーターボを世界初搭載したファン・トゥ・ドライブ マツダ コスモ試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

 徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回取り上げるのは、世界初となるロータリーターボが搭載された 3代目マツダ コスモ(’82年)。’81年ソアラが誕生すると、世界基準をターゲットとした日本車の高性能化が加速しました。マツダのロータリーエンジンも、この時期に大きく進化。ついに世界初のロータリーターボエンジンが誕生しました。徳さんが新しい時代の到来を予感したロータリーターボの「原点」マツダ コスモの試乗記を振り返ります。

※この原稿は1982年に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年1月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です

デ・トマソ・パンテーラGTS 試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】


■「世界基準」に躍り出た「ロータリー + ターボ」

 コスモの開発グループは’78年よりロータリーとターボの組み合わせについて、その可能性を研究しはじめ、’80年頃から本格的に取り組み始めたという。ただでさえ、パワフルでスムーズかつ高回転まで回るロータリーとターボの組み合わせは、ツインカムとターボの組み合わせと同じようにひとつの理想であった。160psという絶大なパワーに胸をふくらませながら乗り込んだ。

 12A EGIユニットにロータリーターボをドッキングしたコスモ・2ドアハードトップは、谷田部の1周5.5kmのコースを平均約211km/hのスピードで何周も走ったのだ。2つの大きなバンクがあり、縦横両面のGがかかり、若干の抵抗になる。そのことを考えると最高速は優に215km/hを超えると思われる。また、0~400m加速タイムは最高で15秒16、3度試して3度とも15秒台に収まる俊足ぶりだ。加速のレスポンスがとにかくすばらしい。

サバンナ(右)以来、待望のスポーツモデル。リトラクタブル4灯のユニークなフロントマスクを持ち、Cd値は0.32と世界的に見てもトップレベルだった

 これは国産車としては最速の部類となる。ちなみにこのデータは欧州仕様のポルシェ924ターボにほぼ匹敵し、BMW635CSi並みといえば、その韋駄天ぶりがおわかりだろう。

 今回の12Aの中身についてメーカーの説明によればあまり変わっていないという。そのなかでも大きな変更点といえばEGIの採用であろう。EGIの採用はターボ化をやさしくし、かつ燃費に貢献する。この燃料噴射はポート近くに噴射するセミダイレクトタイプであり、レスポンスがいい。

’82年当時直6、2.8Lのソアラ(170ps)に次ぐ160psを発生した12Aロータリーターボエンジン

 ターボ本体は日立製でタービンは62φ、コンプレッサー側は63φと比較的大型だ。むろんウエストゲートを備え、320mmHgで作動する。メーカー側の説明ではロータリーユニットは吸・排気ヴァルブを持たないためタービン周りの効率がよく、過給もスムーズと説明している。

 12Aターボに与えられたスペックは160ps/6500rpm、23.0kgm/4000rpmである。これはノンターボの6PIの12Aと比べてパワーで23%、トルクで40%のアップになる。車重の増加はターボの重量程度の20kg増加で1145kg。それゆえパワーウェイトレシオは7.16kg/psになる。

ターボ化に伴う足回りの変更はスタビライザーなどにとどまるが、4輪ベンチレーテッドディスクになり、フィールも向上した

■速さだけでなくハンドリングも第一級

 お断りしておかなければならないのは、私がテストしたコスモロータリーターボはピレリP6の205/60HR15を履いていた。このイタリアの名品はコスモターボのフットワークをしなやかですばらしいものにしてくれたが、この60%タイヤの装着は役所の認可の関係で、遅れてしまうのが残念だ。

 40%近いトルクの増大にもかかわらず、ロータリー・ターボコスモの足回りは大きな変更を受けていない。それにもかかわらず、ロータリー・ターボコスモのハンドリングはピレリP6を得て、第一級のものになった。

 これはターボのうまいコントロールとあわせて話しをする必要がある。このターボは2000回転あたりから強力なトルクを発生し始めるが、そのつながりはとてもスムーズだ。さらに、一度スロットルを閉じて、コーナーのアペックスを狙い、再びスロットルをガバッとばかり開けた時のターボのつながりが実にいい。もちろんターボラグは存在するが、ドライバーに焦燥感を与えるものではない。

 逆にコーナーリング中、例えば3速でスロットルを深々と踏み込んでいくと、どんどんトルクが湧いてきて加速し、さしものP6もパワーオーバースティア気味になってしまう。

 200km/hオーバーの直進安定性はBMWやベンツに比べるともう一歩だ。これほどのクルマならば、もう少しドンとしていてほしい。

ラグジュアリーなコックピット周り。発売当初は5MTのみで、3ATが追加となった

■スタイリングに注文がある

 すばらしく速く、ファントゥドライブなロータリーコスモをどう評価したらいいだろう。いかにロータリーターボとはいえ、0.32のCd値の力を借りなければこれほどの動力性能は記録できなかっただろう。それを知りつつ、私はコスモのスタイルに少なからず疑問を持っている。

 動力性能と高いハンドリング性能に見合う美しいスタイリングをGTカーに求めてしまうことは欲張りすぎというものだろうか。

 それはともかく、このコスモロータリーターボをできれば100kgほどストリップダウンさせられないか、もっと走りに徹したモデルにできないか、そんなモデルがあってもいいと思う。

 ソアラに始まった国産車の高性能化は、驚嘆するレベルにある。これからもどんどん高性能なクルマが出現するであろう。

 私は、これらの高性能車を技術的に精神的にコントロールできるよう自分を鍛えておく必要性があることを痛感している。

取材中の徳さん

◎マツダ コスモ2ドアHTGTターボ 主要諸元
全長:4640mm
全幅:1650mm
全高:1340mm
ホイールベース:2615mm
車重:1145kg
エンジン:2ロータリーターボ 573cc×2
最高出力:160ps/6500rpm
最大トルク:23.0kgm/4000rpm
トランスミッション:5MT
10モード燃費:10.2km/L
価格:188万2000円
※グロス表記

コスモ2ドアHTGTターボ 本誌テスト結果
0~400m:15秒16
0~100km/h加速:7.7秒
最高速:211km/h

【キャンペーン】マイカー・車検月の登録でガソリン・軽油7円/L引きクーポンが全員貰える!

こんな記事も読まれています

退任は本当だった… レッドブルF1技術責任者、エイドリアン・ニューウェイ氏 来年チーム離脱へ
退任は本当だった… レッドブルF1技術責任者、エイドリアン・ニューウェイ氏 来年チーム離脱へ
AUTOCAR JAPAN
RB角田裕毅、F1中国GPで謎の失速。チームが原因究明も「完全には理解できていない」気持ち新たにマイアミへ
RB角田裕毅、F1中国GPで謎の失速。チームが原因究明も「完全には理解できていない」気持ち新たにマイアミへ
motorsport.com 日本版
「GRスープラ」で小林可夢偉と3名の若手ドライバーがノルドシュライフェ初挑戦! 初ニュルの感想を現地で聞いてきました
「GRスープラ」で小林可夢偉と3名の若手ドライバーがノルドシュライフェ初挑戦! 初ニュルの感想を現地で聞いてきました
Auto Messe Web
富士で好調シビック、追い上げもイケる!? ARTA佐藤蓮「ストレートで4~5キロ早そう。レースに向けてポジティブ」
富士で好調シビック、追い上げもイケる!? ARTA佐藤蓮「ストレートで4~5キロ早そう。レースに向けてポジティブ」
motorsport.com 日本版
元王者イングラムが逆襲の連勝発進、トヨタのモファットもリバースから開幕勝利/BTCC開幕戦
元王者イングラムが逆襲の連勝発進、トヨタのモファットもリバースから開幕勝利/BTCC開幕戦
AUTOSPORT web
【勢いの鈍るBEVモデル】 それでもステランティスが盤石な理由とは? EV拡販のスタンスを聞く
【勢いの鈍るBEVモデル】 それでもステランティスが盤石な理由とは? EV拡販のスタンスを聞く
AUTOCAR JAPAN
ペレス、レッドブル離脱のニューウェイは「どのチームでもすぐに良い影響を及ぼすはず」
ペレス、レッドブル離脱のニューウェイは「どのチームでもすぐに良い影響を及ぼすはず」
motorsport.com 日本版
アルファロメオ、主力『ジュリア/ステルヴィオ』に各41台の限定車“ヴェローチェ・スペリオーレ”を導入
アルファロメオ、主力『ジュリア/ステルヴィオ』に各41台の限定車“ヴェローチェ・スペリオーレ”を導入
AUTOSPORT web
ヤマハ製エンジン搭載! 先進燃料仕様の新型「ド迫力4輪車」! めちゃ“楽しそう”な「ROV」今後の展開は?
ヤマハ製エンジン搭載! 先進燃料仕様の新型「ド迫力4輪車」! めちゃ“楽しそう”な「ROV」今後の展開は?
くるまのニュース
国交省が6月からのトラックの標準運賃8%アップを提言……も法的拘束力なし! それでも苦しいトラックドライバーの救いとなるのか?
国交省が6月からのトラックの標準運賃8%アップを提言……も法的拘束力なし! それでも苦しいトラックドライバーの救いとなるのか?
WEB CARTOP
ドライバーが叫ぶ、悩む。スーパーGTの戦いの裏側を追うドキュメント動画『フォーメーションラップ』が2024年も登場
ドライバーが叫ぶ、悩む。スーパーGTの戦いの裏側を追うドキュメント動画『フォーメーションラップ』が2024年も登場
AUTOSPORT web
記念すべきシビック初PPはAstemo塚越/太田組! ニューマシンは富士スピードウェイで“死角なし”か「全域で良いフィーリングがあった」
記念すべきシビック初PPはAstemo塚越/太田組! ニューマシンは富士スピードウェイで“死角なし”か「全域で良いフィーリングがあった」
motorsport.com 日本版
大型連休「行くと失敗する&意外と穴場」な高速道路5選 大渋滞で「行くと地獄を見る」方面はどこなのか
大型連休「行くと失敗する&意外と穴場」な高速道路5選 大渋滞で「行くと地獄を見る」方面はどこなのか
くるまのニュース
[VW ゴルフ 50周年]第3世代は安全性を重視
[VW ゴルフ 50周年]第3世代は安全性を重視
レスポンス
トヨタ 新型センチュリー【1分で読める国産車解説/2024年最新版】
トヨタ 新型センチュリー【1分で読める国産車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
ゴタゴタ続くレッドブル、それでもフェルスタッペン簡単には離れない? 「金は差別化要素じゃない。パフォーマンスだ」
ゴタゴタ続くレッドブル、それでもフェルスタッペン簡単には離れない? 「金は差別化要素じゃない。パフォーマンスだ」
motorsport.com 日本版
MotoGPカザフスタンGP、大洪水の影響で開催延期。被災地域への負担を避ける
MotoGPカザフスタンGP、大洪水の影響で開催延期。被災地域への負担を避ける
motorsport.com 日本版
<新連載>[低予算サウンドアップ術公開]ツイーターを加えるだけで、音がガラリと別モノに!?
<新連載>[低予算サウンドアップ術公開]ツイーターを加えるだけで、音がガラリと別モノに!?
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

630.0661.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

33.2792.0万円

中古車を検索
ソアラの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

630.0661.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

33.2792.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村