■どんなクルマ?
目指すは上級サルーン市場
VWアルテオンにワゴン版追加か 打倒A5スポーツバック? 関係者のコメントも
この新顔は、フォルクスワーゲンCC(パサートがベース)に代わる同ブランドの最上位モデルだ。
アウディA5スポーツバックのような5ドア・ハッチバックとすることで、単なるセダンとは差別化を図っている。
けれど、フォルクスワーゲンはこれを「ファストバック」と呼ぶらしい。ハッチバックというと、たいがいはもっと小さくて安い、ありふれたクルマを想起させるから、とのことだ。わかりました。
このスタイリング、特にグリルの水平に伸びるバーとヘッドライトがシームレスにつながる造型は、今後のフォルクスワーゲンモデルに用いられるテイストを示唆するものだ。
ワイド感を強調したインパクトのある顔立ちは、この実用5シーターにスポーツカー風の存在感を与えている。曲線的なリヤ周りやブリスター形状のフェンダー、シャープなプレスラインなども同様の効果をもたらしている。
オプションで20インチのホイールも選択可能で、フォルクスワーゲンがプレス向けに用意した試乗車はこれを履いていた。
ただし、ちょっとばかりスマートすぎて、強烈な個性が感じられなかった、というのが個人的な感想だ。
上級サルーン市場では、フォルクスワーゲンの訴求力は決して強くない。せめてデザインはもう少し冒険して、ブランドバリューの弱さを補ってもよかったのではないだろうか。
アルテオンのプラットフォームは、MQBファミリーに属するもの。とはいえ、ゴルフやパサート、トゥーランやティグアンまで広く用いられるそれらは、もちろんそれぞれ同一ではない。
パサートとのカニバリズムは「覚悟のうえ」
このクルマも、パサートの上屋だけを換えたものではない。自由度の高いシャシーコンポーネンツを利して、ホイールベースとトレッドをパサートより大きく取り、一方でルーフは低め、ドライビングポジションは全く異なるものとなっている。
エンジンは、ガソリンターボとディーゼルを3機種ずつ設定し、グローバルな需要に対応する。トランスミッションはMTとDCT、駆動方式はFFと4WDが用意される。
幅広く、パサートのシェアを奪うことになるのも覚悟の上といったラインナップにおもえる。
最上位機種はガソリンが280ps、ディーゼルがツインターボの240psで、排気量はいずれも2.0ℓ。価格は未定ながら、フォルクスワーゲン筋は、今回乗った仕様のディーゼル車でおよそ£38,000(547万円)程度の値付けになるだろうとしている。
■どんな感じ?
「高級感よりも先進性」は正しいのか?
£40,000(576万円)前後の価格帯に属するクルマとして、CCに欠けていたものをアルテオンは持っている。ボディの大きさだ。古い価値観ではあるが、この長くワイドなボディならば、プライスにも納得できる。
室内に目を転じると、キャビンは広く、ラゲッジスペースは使いやすい。後席は、成人ふたりが快適に過ごすに十分すぎるほどのレッグルームを備えている。
頭上は一般的なセダンより窮屈だが、これは想定内。試乗したエレガンス仕様のフロントシートは、心地よく、調整幅も広い。パサートより座面は低く、ホールド性にも優れている。
相対的にウインドウは上下にスリム。フロントウインドウの下端は肩の辺りに来る。くわえてルーフは低い。合流や車線変更などでは、太いBピラーが気になるかもしれない。
ダッシュボード周辺のテクノロジーは、このクルマのアピールポイントだ。フォルクスワーゲンは、洗練された安全装備やインフォテインメントの方が、50:50の理想的な重量配分や欧風の伝統的な高級感の現代解釈といった要素より、若い顧客層への訴求力があると考えているらしい。
かなり達観した考えだが、それが本当にクルマのセールスポイントといえるのかは微妙なところだ。
2.0ℓディーゼル、驚くほど静か
インフォテインメントは、ゴルフにも設定される9.2インチのガラス製ディスプレイの「ディスカバリープロ」をオプションで用意する。
処理速度は速く、機能も充実しているが、音量やマップサイズの調整ノブやショートカットボタンをなくしたことに不便さはますます強まっている。
「アクティブインフォディスプレイ」ことデジタル計器盤も装備されるが、これは上々のデキだ。もっとも、これよりよくできたデジタルメーターがないわけではないけれど。
走りのスムーズさに関しては、不満はほぼない。機械面の洗練性や一貫して軽く扱いやすい操作系などは、どこをとってもモダンなフォルクスワーゲンのそれだ。
2.0ℓディーゼルは、それなりに回してもよそよそしいほど静かだ。しかし、十分なトルクとレスポンス、そしてDSGの賢い変速ぶりにより、3500rpm以上回す必要に迫られることはめったにない。
なめらかな路面を走る限り、20インチのホイールと低扁平タイヤを履いていてさえ、乗り心地は非常に穏やかだ。サスペンションはパサートの改修版ではなく、フォルクスワーゲンは新たな可変ダンパーとブッシュ類をこのクルマのために用意した。
むろんこれは大径ホイールと底扁平を装着しても、乗り心地を悪化させないよう配慮したものだろう。結果としてアルテオンは、フォルクスワーゲンの既存モデルよりも幅広く優れた運動性を発揮する。
減衰力はコンフォート/ノーマル/スポーツのプリセットされたモードだけでなく、インディビジュアルモードを選択すれば無段階調整も可能となっている。
乗り心地のコントロールが向上したことは歓迎したいが、その成果には注文をつけたい部分もある。
味わい深さに欠ける
このクラスのライバルたちと同様、しなやかな乗り心地と絶縁されたようなステアリングは、車内と外界を極めて効果的に隔絶している。
ダンパーのアップグレードの有無にかかわらず、20インチのタイヤが鋭い凹凸を乗り越える際にはショックが感じられるが、それも我慢できる程度だ。
しかし、このスポーティな風貌から期待される走りを味わうべく、硬めのセッティングを選ぶと、少なからず失望することになる。
標準装備されるプログレッシブ可変レートのパワーステアリングはわずかばかり重くなるが、フィールは乏しいままで、乗り心地は路面状況に左右されやすくなる。
■「買い」か?
BMW、アウディと戦うには力不足
グリップや敏捷性は、アルテオンをこのクラスの標準的なセダンよりスポーティに感じさせるに十分だが、エキサイトするものではない。走り重視のドライバーには、おすすめしかねる物件だ。
それ以外の点では、非常に洗練され、高性能で、しかも素晴らしく実用的であり、ブランド偏重主義のユーザーが進んで買いたがる類のクルマ以上に、クラスを超えた感覚をもたらしてくれる。
となれば、フォルクスワーゲンブランドへのユーザーの見方を変えさせ、BMW4シリーズ・グランクーペやアウディA5スポーツバックの需要に食い込めるだろうか、とも考えてしまう。
しかし、さすがにそこまではいかないだろう、というのが正直な感想だ。
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