■6年ぶりにフルモデルチェンジして3代目を迎えた「スーパーグレート」
日々さまざまな荷物を積んで日本中を走る大型トラックの世界も、乗用車のような先進安全装備を備えるようになっています。そんな「現代の最新トラック」の姿とは、どのようなものなのでしょうか。三菱ふそうの新型「スーパーグレート」試乗会で体感してきました。
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われわれの生活を支えていると言っても過言ではない、物流。その中でトラックによる輸送は約9割を占めています。また、日本の運送事業者における大型トラックの保有率は約48%と圧倒的に多く、大型トラックでの輸送が国内物流の柱となっていることがうかがえます。
ところが物流・運送業界の現場では、トラックドライバーの不足や、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間「960時間」になったことによって輸送力の低下などが懸念される、いわゆる「物流の2024年問題」など、多くの問題が山積しています。
これに対し、輸送の効率化や快適性の向上を図るべく、トラックメーカーも車両の改良に余念がありません。日本を代表するトラック・バスメーカーの三菱ふそうも、2023年10月に大型トラックの「スーパーグレート」を6年ぶりにフルモデルチェンジを行い、経済性・快適性・安全性・および操作性に磨きをかけました。
そこで三菱ふそうでは、2024年7月に新型スーパーグレートの試乗会を実施。筆者(遠藤イヅル)も同社の喜連川研究所(栃木県さくら市)のテストコースおよび周辺の公道で試乗して、その実力を確かめてきました。
■新開発12.8リッターエンジンの採用で力強い走りと燃費の良さを両立
三菱ふそうスーパーグレートは1996年に登場。2017年には21年ぶりのフルモデルチェンジを行い2代目に発展しました。そして今回のフルモデルチェンジで3代目を迎えた新型スーパーグレートは、2代目の美点を引き継ぎながら、さらなる進化を遂げています。
まず目を引くのは大きくイメージを変えたフロントマスクです。キャビンは従来の形状を踏襲していますが、フロントには、かつての三菱ふそうの大型トラック「Fシリーズ」や「ザ・グレート」をほうふつとさせる「ブラックベルト」を新たに採用。基本的に無塗装の樹脂とすることで、パーツ製造時のCO2を削減しています。
また、バンパーのコーナーをフラッシュサーフェイス化して滑らかな空気の流れを作り、空力性能を向上。荷台高さいっぱいまで持ち上げたスーパーハイルーフも設定され、燃費の改善を図っています。
スーパーハイルーフ設定車では、頭上空間を大幅に拡大。スーパートップシェルフの採用で収納力も増えており、定評があった車内の快適さも一層向上しています。インテリアカラーにスタイリッシュな赤色を追加したことも、大きなトピックです。
エンジンにも注目。先代モデルでは、燃費性能・環境性能を高めた7.7リッターの「6S10型」と10.7リッターの「6R20型」ダウンサイジングエンジン(いずれも直6)を搭載していましたが、新型スーパーグレートでは6R20型に代わり、新開発の12.8リッターエンジン「6R30型」を新たに設定しました。
排気量の追加で低速トルクが増大したため、大型トラックに求められる力強さを実現したいっぽう、燃費性能も向上。「2025年度重量車燃費基準(JH25モード)にも適合しています。
試乗では、10.7リッターの6R20型エンジンを積んだ先代モデルも使い、斜度8~10%の上り坂を乗り比べるプログラムを実施。先代・新型どちらもフル積載のイコールコンディションでしたが、新型の走りは明らかにパワフルでした。
面白いのは、性能の額面数字です。6R20型・6R30型ともに、最高出力394ps(290kW)/1600rpm・最大トルク2000N・m(204kgf・m)/1100rpmで、発生回転数まで一緒です。しかしまず先代に乗り、そして新型に乗り換えてみると、トルクの出方や加速力がまったく異なっていることがわかりました。
斜度10度の状態で坂道発進を試みても、その違いは絶大。旧型がやっと登っていくようなイメージなのに対し、新型はやすやすと発進していきました。
■精度がさらに向上した先進予防安全システムを実際に体感
このほかテストコースでは、さらに精度を向上した先進予防安全システムを体感する機会がありました。
まずは、衝突被害軽減ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト6(ABA6)」から。先代モデル搭載の「アクティブ・ブレーキ・アシスト4(ABA4)」に比べ、対象の検出範囲を拡大して制度を向上。見通しの良いカーブでの障害物や、複数の歩行者・自転車を検知することが可能となりました。そこで試乗会では、歩行者に見立てた人形めがけて新型スーパーグレートを時速40km/hで走らせ、人形の直前で急停車するデモも行われました。
このほか、死角の多いトラックの安全性を高める装備として、前方の自転車や歩行者を検知して、メーターパネル内のマルチファンクションモニター内に危険を知らせる「フロント・ブラインドスポット・インフォメーション・システム(FBSIS)」のデモも実施。トラックの直前をスタッフが歩くと、三角形の中に人が描かれた警告アイコンが表示される様子を確認することができました。
先代モデルでも採用されていた、車両左側の対象物を検出すると警報音とピラーに設置した警告ランプによって警告を行う「アクティブ・サイドガード・アシスト」は、新たに車両右側にもレーダーを設置して右側も検出できる「アクティブ・サイドガード・アシスト2.0」に進化しています。
試乗では、高速周回路を走るスーパーグレートの左右からライトバンを走らせ、黄色い警告ランプの点灯を確認。さらにその状態でウインカーを出すと、警告ランプが赤に変わり、車線変更ができない危険な状態であることを教えてくれます。左折時の巻き込み事故防止にも役立ち、直接目視ができない範囲が多い大型トラックでは有用な機能だと感じました。
■豊かなトルクと予防安全システムで高速道路もラクラク
そしてこの日は、喜連川研究所から東北自動車道白河インターまでの往復約140kmにも及ぶ公道試乗も行われました。
筆者が乗り込んだ新型スーパーグレートは、パブコ製のウイングボディを架装したFSモデル(8×4低床、型式:FS84VVZ1TC)でした。
まずは研究所を出発して矢板インターチェンジに向かいます。取り回しの良さ、視界の広さ、ミラー類の見やすさなどにより、とても乗りやすいという印象を受けました。ブレーキのタッチも抜群で、エアブレーキ特有の難しさもありません。
矢板インターチェンジからは、いよいよ高速道路を走行。車両総重量25tに整えられた「フル積載」の状態でしたが、6R30型エンジンのパワーは合流や登坂でも力強い走りを披露。アクセルに対するレスポンスもよく、ストレスのない走りを実感できました。トランスミッションは引き続き採用された12段AMT「シフトパイロット」で、適切なギアをきわめて静かに、かつ自動で選択してくれるため、ドライバーの負荷を大きく軽減します。
排気量拡大はトルクアップ以外にも恩恵があります。低回転域を多用することで、キャブに入り込む騒音や振動を抑制。静かなキャブは、長距離運転時の疲労を軽減します。
抜く車が左右の後方から接近すると、前述の「アクティブ・サイドガード・アシスト2.0」が作動して黄色の警告ランプが点灯。自車がどのような状況にあるのかを容易に理解できるのは、大きな強みです。
全幅が2.5mもある大型トラックでは、車線内の中央をキープするだけでも気を使うのですが、スーパーグレートには、アダプティブクルーズとコントロールステアリング制御による車線維持アシスト機能を加えた、高度運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト2」を搭載しています。先代の2021年モデルから採用された機能で、ドライバーの疲労軽減に威力を発揮します。
高速道路では、ずっとこの機能をオンにして走行。車線維持アシストと適切な車間距離で前車を自動追従してくれるので、運転はほんとうにラクでした。長距離の運転に大きく貢献することは間違いありません。
※ ※ ※
「その進化は、すべての人のために」というキャッチフレーズをうたう新型スーパーグレートは、さらに快適で安全性が高いトラックにモデルチェンジしていました。輸送の効率化やドライバーの待遇改善にも寄与するトラックは、2024年問題に対する解決策のひとつになる、と実感しました。
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壊れない車に乗りたい。