■息を呑むほど美しいピニンファリーナデザイン
比較的余裕のある大人のための輸入オープンスポーツといえば、人気が高いのはポルシェの「718ボクスター」や「911カレラ カブリオレ」あたりだろうか。
【画像】イタリア生まれのロマンチスト「初代アルファ ロメオ スパイダー」を見る(7枚)
それらはもちろん素晴らしいオープンタイプのスポーツカーだが、何というかこうステレオタイプすぎる気がしないでもない。
「ステレオタイプで構わない!」という人もいらっしゃろうが、もしも「それはちょっと避けたいな……」とお思いなら、“ネオクラシック”と呼ばれることが多い1980年代から1990年代あたりの輸入オープンスポーツに注目してみることをおすすめしたい。
それらはちょっと古い世代ゆえ、純粋な走行性能は最新世代のオープンカーと比べればかなり低い。だが、ドライバーとセットになった際の「たたずまい」は、正直申し上げて現代のギラギラ系オープンカーに乗る場合の数倍は素敵なものになるはずだからだ。
そして、そんな場合におすすめしたいネオクラシックな輸入オープンカーのひとつが、アルファ ロメオ「スパイダー」である。
アルファ ロメオ スパイダーは2011年まで、けっこう現代的な意匠とハードウエアを備えたモデルが製造されていた。だが今回おすすめしたいのはそれではなく、1966年から1993年までの長きにわたり販売された初代スパイダーだ。
●バッティスタがデザインした初代「スパイダー」
初代アルファ ロメオ スパイダーのベースとなったのは1962年登場の「ジュリア」というスポーツセダン。それのオープン版が、まずはアルファ ロメオ「1600スパイダー デュエット」という名前で1966年に登場した初代スパイダーだった。
ちなみにアルファ ロメオ スパイダーのデザインは、アルファ ロメオの社内デザインチームではなく、イタリアが世界に誇るカロッツェリア「ピニンファリーナ」が担当した。そしてこの初代スパイダーは、ピニンファリーナの創始者であるバッティスタ・ファリーナが息子に家督を譲る直前に手がけた「最後の作」といわれている。
御大バッティスタの筆による最初の世代は、テール部分がまるでボートのようなロマンチックな形状であったため「ボートテール」あるいは「シリーズ1」と呼ばれるが、1970年のマイナーチェンジでスパイダーのテールはスパッと切り落とされかのような「カムテール」となり、「シリーズ2」とも呼ばれるようになった。シリーズ2は、テール形状の関係でトランクスペースは拡大されたが、形状としてのロマンティシズムはやや減じた感がある。
1983年には2度目のマイナーチェンジが実施され、フロントグリルと一体化した大型バンパーや、リアスポイラーと一体化した大型リアバンパーを採用。この世代は「シリーズ3」と呼ばれるが、シリーズ3からはカーエアコンの装着も可能になった(逆にいうとシリーズ1&2はエアコン無し)。
そして1990年には最後の改変がおこなわれて「シリーズ4」となり、これが前述のとおり1993年まで販売された。シリーズ4はテールデザインとダッシュボードのデザインを大きく変更するとともに、パワーステアリングが標準装備に(シリーズ3まではいわゆる重ステだった)。そして5速MTに加えて3速ATの仕様も用意し、エンジンは最高出力126psを発生する2リッター直列4気筒の1種類のみとなった。
■シリーズ4以外はすでに絶滅危惧種
意匠およびたたずまいのロマンティシズムは最初のシリーズ1こそが最強だが、シリーズ1の流通は今やほぼ皆無で、それどころかシリーズ2とシリーズ3もほぼゼロ。したがって、初代アルファ ロメオ スパイダーを買う場合は自動的に「シリーズ4」すなわち最終型の一択となる。
ロマンティシズムにはやや欠けるシリーズ4だが、それはあくまで「シリーズ1と比べれば」という話。その他の一般的な(あえて悪くいうなら、ありがちな)オープンカー各種と比べるならば、最終型のシリーズ4もバリバリのロマン派。またパワーステアリングやエアコンがごく普通に付帯しているという点も、飾るためではなく「たまに運転して楽しむために買う」という場合には有利に働くだろう。
●品良く「美しい」カーライフをはじめてみよう
さまざまなマイナーチェンジを重ねてそれなりに進化したシリーズ4のアルファ ロメオ スパイダーだが、それでも基本設計的には「1960年代のクルマ」であるため、速いとかコーナリング性能が凄いとか、そういったことは一切ない。
しかしその分だけ、筆者を含むミドル世代までの人間にとっては「映画のスクリーンやテレビを通してしか知らない」往年の2座式オープンカーの優美な世界観と意匠をリアルに今、そしてパワーステアリングなどのそれなりの快適装備も付いた状態で堪能できる──というのが、初代アルファ ロメオ スパイダーというクルマの最大の魅力であり、他のクルマでは絶対に味わえない唯一無二のストロングポイントなのだ。
専門店で完全メンテナンス済みの個体を買えばさほど頻繁に壊れるクルマでもなく(とはいえメンテナンスフリーでは決してないが)、中古車の相場もせいぜい170万円から260万円ぐらい。
「美しいモノ」を好むすべての大人に、ぜひ一度はチェックしてみていただきたい存在だ。
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みんなのコメント
今はもうクラシックカーのつもりで手間暇かけるつもりじゃなきゃ無理。
流麗とも言えないしオープンってだけのダサい車