次世代EV、来年から製造開始
米カリフォルニア州に拠点を置く新興企業インディペンデント・エレクトリック・ビークルズ(インディEV)は、台湾のフォックスコンと新型EVの製造委託契約を締結した。
【画像】フォックスコンが製造する新興企業のEV【インディ・ワンを写真で見る】 全9枚
この契約で製造されるのは、今年初めにニューヨーク・モーターショーで披露された電動SUV「インディ・ワン」である。
インディEVの創設者兼CEOであるシー・ハイは、「EV市場への参入において、家電製品の世界的リーダーであるフォックスコンと提携することで、インディ・ワンのドライバーを未来へ導くことができます」と述べている。
インディ・ワンの最初の1台は、環境NGO、グローバル・グリーンUSAのウィリアム・ブリッジ代表によって予約されている。同団体は、レオナルド・ディカプリオ、オノ・ヨーコ、ロバート・レッドフォードなどのスターが名誉理事を務めている。
インディEVは2017年に設立され、3年以上前から「ワン」を開発してきた。サイズとしてはテスラ・モデルYとモデルXの中間にあたる中型SUVで、2023年半ばの生産開始予定に先立ち、現在プロトタイプによるテストが行われている。
75kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は370kmを見込む。価格は4万5000ドル(約650万円)から。95kWhのバッテリーを搭載する6万9000ドル(約1000万円)の上位モデルもあり、航続距離は480kmとなる。
車内体験を重視した設計
当初は北米のみで販売されるが、デザイン担当のアンドレ・ハドソンによれば、他の市場のホモロゲーションにも適合するよう設計されているという。いずれは欧州やアジアでも導入される見込みだ。
上位モデルにはVIC(車載統合コンピュータ)と呼ばれる高性能なWindowsコンピュータが搭載されており、ボンネットを開けるとはっきりと見ることができる。このVICの目的は、インディ・ワンを「デジタル・ツールボックス」とすることだ。
アンドレ・ハドソンは、「EV技術の未来は、馬力よりも処理能力で測られるようになると考えています」と語る。
VIC、5G対応、マイク、カメラ(車内向き3台、車外向き2台)を搭載し、移動式ワークスペースとして、コンテンツの撮影・編集・アップロードのハブとして、あるいはAR・VRを用いたビデオゲームのプラットフォームとして機能させることが可能だという。
インディEVでは、乗員が遊べるゲームを独自に開発するほか、サードパーティの開発者にもシステムを開放している。
このように車内体験に重点を置いているとはいえ、インディ・ワンは最高出力477ps、0-97km/h加速4.2秒、最高速度210km/h(いずれも上位モデルの性能)を謳う。単なる「移動手段」として設計されているわけではないようだ。
シャシー技術については、タタやフォーレシアなど外部の専門知識を活用しているとのこと。
デザイナーにインタビュー
AUTOCARは、インディEVのアンドレ・ハドソン氏にインタビューを行った。彼はGMとヒョンデに勤めた経験を持ち、3年前にインディEVに入社。インディ・ワンのデザインを統括している。
――インディ・ワンのスタイリングは、どのようなところから着想を得たのでしょうか。
「外観的にも、デジタルハードウェアのように感じられるようデザインすることが重要でした。これまで多くのEVは、ラグジュアリーで彫刻的な方向へ進んできました。しかし、このクルマのスタイリングは、もう少しすっきりとしていて、シンプルなものです。照明やインディのロゴなどのディテールから、その心臓部であるコンピュータ回路の延長線上にあるように感じられます」
――エンジニアリングの業務はどのようにマネジメントしていますか?
「ロサンゼルスに小さなコアチームを置いています。各領域の開発責任者が、シャシー設計、照明システム、ボディ構造などの分野で、世界中のエンジニアリングパートナーと協働しています。バッテリーモジュールは、テスラの立ち上げに関わったトム・ゲージのもとで自社開発しました」
――インディEVは、創業から6年で製造を始めようとしていますね。これはEVでしかできないことなのでしょうか?
「EVの美点は、多くの部品を既製品で揃えられることです。サスペンションや電気駆動装置(EDU)などのアイテムは、開発の大部分を占めますが、すでに実用化されたコンポーネントを購入することができるのです」
――他にどのように時間を節約したのでしょうか?
「当社は、実績のある技術を(設計に)使いました。同業他社、特に西海岸の新興企業では、EDUを開発したり、アーキテクチャや座席配置、シートを試作したりしているところもあるのです。これは、開発と検証をゼロから始め、その過程で多くの問題が出てくる可能性があります。実績のある技術を使い、コアとなるユーザーエクスペリエンスに集中すれば、開発期間を短縮することができるのです」
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