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これが超精密販売戦略! アクア爆売れでもヤリスとの同士討ちなぜ起こらない

掲載 25
これが超精密販売戦略! アクア爆売れでもヤリスとの同士討ちなぜ起こらない

 2021年7月の新型登場以来、好調な売れ行きを見せているトヨタ アクア。小型/普通車の販売1位であるヤリスに次いで2位につけている。

 ヤリスは人気を大きく落とすことなく、そしてアクアもヤリスに食われることなく共存できている。同じコンパクトカーのカテゴリでありながら『同士討ち』が起こらない理由を渡辺陽一郎氏が解説する。

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文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA

[gallink]

■GRヤリスやヤリスクロスを除いたヤリスとアクアを比べると……

2021年7月登場のトヨタ アクア。ヤリスに次ぐ販売台数2位だが、GRヤリスとヤリスクロスを除いて比較した場合の販売台数はヤリスを大きく上回る

 2021年7月に発売されたアクアの売れ行きが好調だ。ノーマルエンジンを用意しないハイブリッド専用車だが、2021年9月の登録台数は1万1137台、10月には7643台に達して、小型/普通車の販売2位になった。

 小型/普通車の販売1位はヤリスだが、この登録台数には、ヤリスのほかにSUVのヤリスクロス、少数ではあるがスポーツモデルのGRヤリスも含まれる。ヤリスクロスとGRヤリスは、一般的にはヤリスとはカテゴリーの異なる車種だろう。

 そこでコンパクトカーのヤリスのみの台数を算出すると、2021年9月は5800台、10月は4980台であった。アクアに比べて大幅に少ない。ヤリスの売れ行きは、アクアの50~65%に留まる。

 ヤリス(ヤリスクロスとGRヤリスを除く)の登録台数では、対前年比でも興味深い傾向が見られる。2020年は9月に1万4650台、10月も1万190台を登録したから、2021年9月は前年の40%、10月も49%しか売られていない。ヤリスの売れ行きは前年に比べて半減している。

 その一方でSUVのヤリスクロスは、2021年9月が6370台、10月は5280台だから、ヤリスよりも多い。ヤリスクロスが本格的な販売を開始した2020年10月は、6900台だったから、2021年10月は減少したものの対前年比は77%を保っている。

■ヤリスを上回るアクアの魅力とは

アクア車内。ヤリスに比べて後席の足元に余裕があり、居住性に優れている

 この販売推移からも分かる通り、アクアの販売は好調で、ヤリスの登録台数は大幅に下がっている。ヤリスは、ハイブリッドシステムやプラットフォームなどを共通化したアクアにユーザーを奪われた。その理由は、アクアとヤリスハイブリッドを比べると分かりやすい。

 ボディは両車とも5ナンバーサイズで全幅も1695mmだから等しいが、全長はアクアが4050mmでヤリスは3940mmだ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)もアクアが2600mm、ヤリスは2550mmという違いがある。

 そのために居住性はアクアが快適で、特に後席の足元空間が広い。身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間は、ヤリスは握りコブシ1つ少々だが、アクアは2つ弱が収まる。ヤリスの場合、後席に背の高い同乗者が座ると窮屈だが、アクアなら4名で快適に移動できる。

 アクアはヤリスに比べて内装も上質だ。アクアのGやZでは、助手席の前側に装着されるアッパーボックスのフタなどに、合成皮革を巻いている。ヤリスの内装はコンパクトカーの平均水準だが、アクアはミドルサイズカーに近い。

 直列3気筒1.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドシステムは、基本的に両車とも共通だ。ウェブサイトやカタログに記載されるエンジンやモーターの性能数値も等しい。

 しかし運転感覚は異なる。ヤリスハイブリッドの駆動用電池はリチウムイオンだが、アクアの売れ筋グレードにはバイポーラ型ニッケル水素を使う(価格が最も安いアクアBはリチウムイオン)。

 バイポーラ型ニッケル水素は電池の性能が高く、例えば巡航中に登り坂に差し掛かってアクセルペダルを踏み増した時など、アクアは駆動力の盛り上がり方が力強い。

 通常のエンジン車でいえば、実用回転域の駆動力が高い印象だ。ヤリスハイブリッドの車両重量(2WD)は1050~1090kg、アクアは1080~1130kgと若干重いが、売れ筋グレードで動力性能を比べるとアクアに余裕がある。

 アクアは遮音も入念に行われ、ヤリスハイブリッドに比べてノイズが小さい。ヤリスハイブリッドの場合、登坂路などでは3気筒エンジンの粗い音質が気になることもあるが、アクアは違和感を抑えた。

■快適性に勝るのはアクアか

乗り心地や走行性能などは全般的にアクアが上回っている

 同等のことが乗り心地にも当てはまる。ヤリスハイブリッドでは、特に14インチタイヤ装着車は、低燃費指向のタイヤも災いして乗り心地が粗い。路上の細かなデコボコを伝えやすいが、アクアでは、14インチタイヤを装着するのは価格が最も安い燃費重視のBだけだ。

 アクアの売れ筋グレードは、前述の通りホイールベースも50mm長いので、ヤリスハイブリッドに比べて乗り心地が快適に感じる。

 峠道に乗り入れると、ボディが軽くホイールベースの短いヤリスハイブリッドが機敏に曲がるが、居住性、内装の質、乗り心地、動力性能、直進安定性などは全般的にアクアが上まわる。ヤリスハイブリッドは典型的なコンパクトカーだが、アクアはボディサイズも含めて上級指向を強めた。

 燃費性能は、ボディの軽いヤリスハイブリッドが有利だ。2WDの場合、ヤリスハイブリッドXのWLTCモード燃費は36.0km/Lだから、日本で購入可能な4輪車では燃費数値が最も優れる。最上級のZでも35.4km/Lと良好だ。

 アクアはリチウムイオン電池のBは35.8km/Lだが、電池出力を高めたバイポーラ型ニッケル水素を採用するXは34.6km/Lで、GとZは33.6km/Lになる。

 価格も比べたい。アクア2WD・Zは240万円、ヤリスハイブリッド2WD・Zは232万4000円だが、装備に差がある。

 ヤリスハイブリッドZに、アルミホイール(8万2500円)と100V・1500Wの電源コンセント(4万4000円)をオプション装着して装備水準を合わせると、総額は245万500円に高まり、これらを標準装着するアクアZの240万円を上まわってしまう。

■ヤリスの魅力はノーマルエンジン設定と燃費

ヤリスはノーマルエンジンも選べるのがメリットだ。ハイブリッドで比較すると燃費でアクアを上回る

 このようにアクアはヤリスハイブリッドよりも商品力が高く、価格は割安だ。多くのユーザーにとって、アクアはヤリスハイブリッドよりも買い得と受け取られ、販売も好調だ。この影響も受けて、ヤリスの登録台数は前年の50%以下まで下がった。

 それならヤリスの1番のメリットは何かといえば、アクアでは選べないノーマルエンジンの設定だ。1.5Lノーマルエンジンを搭載するヤリスZは、ハイブリッドZに比べて価格が35万3000円安い。しかもヤリスのノーマルエンジンには、1.5Lに加えて1.0Lも設定され、後者の価格は1.5Lをさらに14万3000円下まわる。

 価格が最も安いヤリス1.0X・Bパッケージは、衝突被害軽減ブレーキを省いたから推奨できないが、1.0Xであれば安全装備を充実させて価格は145万5000円だ。

 販売店では「ヤリスの1.0Lエンジン車は、営業などに使う法人向けとされるが、実際には一般のお客様も購入されている。長距離の移動がなく、買い物などに使うなら、1.0Lエンジンでも十分だ」という。

 以上のようにアクアは、コンパクトなハイブリッド専用車として、さまざまな機能を高めて価格は割安だ。ヤリスは、ハイブリッドについてはアクアに比べて機能が見劣りするが、燃費性能では上まわる。そして価格の割安な1.0Lと1.5Lのノーマルエンジンは、アクアでは得られないヤリスならではの価値だ。

 従ってコンパクトカーを選ぶ時、ハイブリッドならアクアを推奨する。前述の通り機能や装備の割に価格が安く、特に最上級のZは内容を充実させて買い得だ。

 ノーマルエンジンなら必然的にヤリスになる。基本的には動力性能に余裕があって燃費性能も優れる1.5Lを推奨するが、価格を抑えたいなら設計の古い1.0Lでも良いだろう。

 このように両車とも異なる特徴を備えているので、ヤリスは対前年比を減らしながらも、販売面では両立できている。この背景には、トヨタの強力なディーラー網と販売力があることも見逃せない。

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みんなのコメント

25件
  • こんなもんどっちがどれだけ売れたって同じトヨタなんだから関係ねぇべさ。
  • 元々トヨタは身内で食い合っても、結果として他社のシェア食えればいいという感じ。
    体力あるから可能な戦略。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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