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合理化? コストカット? 日本市場軽視? なぜ日本車のモデルチェンジサイクルは長くなったのか

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合理化? コストカット? 日本市場軽視? なぜ日本車のモデルチェンジサイクルは長くなったのか

 1980年代くらいまでの日本車は、ほとんどのクルマが判で押したように発売後2年でマイナーチェンジ、ほぼ4年周期でフルモデルチェンジを行っていた。2018年1~12月の販売台数ランキングを見ても、6年以上経過しているモデルがかなり目につく。

 かつては日本車に比べてモデルチェンジサイクルが長い、と言われていた輸入車よりも長くなっているのは明らかで、現在は日本車のモデルチェンジ状況が大きく変わってきている。

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 フルモデルチェンジの一番の目的は、クルマのリフレッシュにある。マイチェンや一部改良を細かく展開しているといっても根本的な魅力アップにつながるとは思えない。

 それにもかかわらず日本車のフルモデルチェンジサイクルが長くなったのは、合理化として当然の成り行きなのか? 単なるコストカットなのか? それとも低迷する日本市場は諦めて軽視しているのか? などなど、クルマの販売状況に明るい渡辺陽一郎氏に分析してもらった。

文:渡辺陽一郎/写真:平野学、TOYOTA、ベストカー編集部

売れているクルマはモデル末期までコンスタントに売れる

 最近の日本車は、フルモデルチェンジの周期が長い。過去を振り返ると、1980年代の中盤までは、フルモデルチェンジが4年ごとに行われていた。この周期が1990年代に入ると長くなり、今では大半の車種が6年以上だ。

 売れ行きの下がった車種が放置されるのはわかるとして、販売が好調なのに、フルモデルチェンジの周期が長い車種も多い。2018年(暦年)に小型/普通車で最も多く売れた日産ノートは発売から6年半、2位のトヨタアクアも7年を経過する。このほかトヨタヴォクシー&ノアは5年、トヨタヴィッツは8年、日産キューブは10年、トヨタエスティマは13年という具合で、設計の古い主力車種が目立つ。

 フルモデルチェンジの周期が長くなった背景には、複数の理由がある。

 まずはクルマの売れ方が以前とは変わったことだ。フルモデルチェンジの周期が4年だった時代は、一新すると販売台数が大幅に伸びた。そこから次第に下がり、2年後のマイナーチェンジで再び少し盛り返す。そしてさらに2年を経て人気が下がったところで、フルモデルチェンジするパターンだった。

 ところが今はクルマが日常生活のツールになり、フルモデルチェンジを実施しても販売は急増しない。クルマが身近な存在になったため「新型車が登場したから急いで買おう!」という新車効果が薄れた。

 その半面、販売力の高い実用的な車種は、発売からモデル末期まで安定して売れる。そうなるとフルモデルチェンジを急ぐ必要はないため、周期が伸びた。

 例えば先代ホンダN-BOXは、2011年12月に発売されて好調に売れ、モデル末期だった2016年も軽自動車の販売1位だった。国内の総合順位もプリウスに次ぐ2位だ。先代N-BOXは合理的な設計で魅力が色褪せず、長い間にわたり好調に売れた。現行型も同じだろう。

 ノートも発売から6年半を経過するが、2018年には小型/普通車の販売1位だった。2016年にe-POWERを加えたとはいえ、シンプルなデザインの視界が優れたボディ、後席にも快適に座れる居住空間などによって売れ行きが下がりにくい。歴代スズキワゴンRにも当てはまる話だが、販売の上位に入る実用的な車種は、常に好調な売れ行きを保つ。

 逆に市場性の乏しい車種は、発売後早々に売れ行きを下げてしまう。その後は何をやっても販売は伸びない。つまり今は以前と違ってクルマが目新しさでは売れず、飽きずに長く使える優れた機能や割安な価格が重視される。

 フルモデルチェンジの周期が伸びた理由として、デザインが安定成長期に入ったこともあるだろう。例えば1957年に発売された初代プリンススカイラインと、1968年に発売された3代目の日産スカイラインでは、約10年の隔たりでも外観がまったく違う。

 ところが2006年に発売された12代目の先代スカイラインと2014年の現行型では、基本デザインに大きな差はない。発売から13年を経たエスティマも、さほど古くは感じない。このようにデザインの変化する速度が下がったことも、フルモデルチェンジが長期化した理由だろう。

耐久性の向上、ユーザーの使用年数が大きく変化

 クルマの耐久性が向上したことも見逃せない。1980年頃までの日本車は、生産から10年も経過すると、相当に老朽化した。ボディの下側やドアには錆が生じて穴が空いたり、インパネの上面が日焼けしてザラザラになった。

 しかし今は10年前に生産された2009年式のクルマが普通に走っている。「10年を経過したから、廃車にして新型を買おう」という話にならず、クルマを乗り替える周期が伸びた。

 昔は初回車検すら取らずに買い替える、少なくとも4年ごとに乗り替えるユーザーも多かったが、今は7~8年とされる。これもフルモデルチェンジの周期が伸びた理由になり得る。

 乗用車の平均使用年数(平均寿命)は、1980年頃は8年だったが、1990年には9年、2000年は10年、2010年以降は大幅に伸びて12~13年に達する。このように乗り替える周期と平均使用年数が伸びれば、頻繁にフルモデルチェンジを繰り返す必要はない。

 日本の自動車メーカーが、国内市場に取り組む姿勢も大きく影響した。

 1990年頃までは、日本のメーカーは世界生産台数の約50%を日本国内で売っていた。それが国内の景気悪化と海外市場の開拓によって後者の比率が高まり、2000年頃には、日本のメーカーは世界生産台数の65%を海外で売るようになった。2010年以降は80%に達する。

 言い換えれば今の日本メーカーの国内販売比率は20%以下だ。現在日産などは、国内が10%、海外が90%という販売比率になっている。

 こうなると日本のメーカーが、日本の市場に力を入れにくくなり、結果的に軽く扱っているように映る。商品開発も北米や中国を優先させ、日本市場の順位は下がった。

 そうなれば国内には新型車が投入されない。日産の新型車は1~2年に1車種程度だから(グレード追加などを除く)、古いクルマばかり増えてしまう。

 以前に比べると、開発すべき分野が増えたことも、フルモデルチェンジの周期を伸ばした。電動化を含めた環境対応、安全性能、運転支援や自動運転など、将来に向けて開発の必要な分野が多い。そうなれば新車の開発費用が削られて周期も長引く。

 深刻な話では、車種の廃止も挙げられる。例えばトヨタは、2025年をメドにディーラーの全店が全車を扱う方針を打ち出した。

 これはトヨタ店やトヨペット店といった4つの販売系列が形骸化することを意味する。全店が全車を扱えば、系列化のメリットがなくなるからだ。日産やホンダも、かつては系列を持っていたが、全店が全車を売るようになって廃止された。

 さらにトヨタは、全店が全車を扱うのに併せて、車種数を半減させるという。系列のために用意されたヴォクシー/ノア/エスクァイアといった姉妹車に加えて、設計の古い車種も廃止するようだ。

 開発者や販売店の話を総合すると、現時点で13年を経過したエスティマ、9年を経過したマークXは廃止されるという。日産からも「発売後10年を経過したキューブは、もはや次期型がなく、現行型で最後だろう」という話も聞く。

 このようにフルモデルチェンジの周期が長いと思われていた車種が、実際には次期型を開発しておらず、現行型で最後になるケースも多い。メーカーの都合がいい時期、タイミングで、生産と販売を終える。

フルモデルチェンジの頻度はメーカーの日本市場での本気度

 それにしてもフルモデルチェンジは、クルマが進歩するうえで不可欠の世代交代だ。フルモデルチェンジの周期がむやみに延びるとクルマの進化も滞る。特に先進的な安全装備や電動化技術の搭載は、マイナーチェンジや一部改良では対応できず、フルモデルチェンジを要することが多い。

 従って日本市場における新型車の発売やフルモデルチェンジの頻度は、日本市場に向けたメーカーの本気度といえるだろう。

 そのために人気の下がったセダンは、概してフルモデルチェンジの周期が長い。またコンパクトカーにも同様の車種がある。現行型が生産を終えて次期型にバトンタッチするには、現行型が定められた一定の台数を生産せねばならないからだ。

 それよりも少ないと、開発費用などを回収できないから生産を続ける。コンパクトカーのような低価格車は生産すべき台数も多いから、不人気だと周期も長引いてしまう。

 軽自動車は、一部の商用車などを除くと、フルモデルチェンジの周期が全般的に短い。国内市場に本気で取り組み、車種を数多くそろえながら、巧みな商品開発で売れ行きを伸ばしているからだ(今は新車販売されるクルマの40%近くが軽自動車)。プラットフォームやエンジンを共通化してコストを抑えていることも、フルモデルチェンジを行いやすくしている。

 従ってクルマを買う時には、適度な周期でフルモデルチェンジを行っている車種を選びたい。緊急自動ブレーキを作動できる安全装備などの設計が新しく、それ以外の機能についても、日本のユーザーを大切に考えて開発しているからだ。

文:ベストカーWeb 市原信幸
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