この記事をまとめると
■2021~2021日本カー・オブ・ザ・イヤーは日産ノートに決定
レーシングドライバーでも操れない! 運転が難しすぎる市販車3選
■COTYは60人の選考委員によって決まる
■選考委員のひとり中谷明彦さんに、今回の配点について語ってもらった
本賞では日産ノートには配点せず!
2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTY)には日産自動車の「ノート、ノートオーラ、ノートオーラNISMO、ノートAUTECH クロスオーバー(以下ノート)」が本賞を受賞しました。おめでとうございます。
ノートは多くの選考委員から高得点を配点され本賞を獲得できた訳ですが、一方で僕のように配点をしなかった選考委員もいます。選考委員の考え方、感じ方は人それぞれで、60人の選考委員の個性や考え方が反映されるからCOTYは面白いなと思います。
僕はノートを10ベストには選出しましたが、本賞の採点では配点しなかった。その理由は先代のノートに比べて後席の居住性が劣っていたからです。ルノーとプラットホームを共有し、走りやデザイン、生産性などは向上しましたが後席に乗車した時の足もとの狭さ、ヘッドクリアランスの窮屈さを感じずにはいられなかった。逆に先代はコンパクトカーとは思えないほどに後席が広く、使い勝手が良かった。その部分だけが劣ってしまったのが残念でならなかったのです。同じ理由で昨年度のCOTYでもホンダ・フィットに配点しませんでした。旧型フィットの後席は広く、リクライニング機構を備え、荷室としての実用性も高かったのに、その美点を何事もなかったかのように消し去ってしまっことを評価することができなかったのです。
今年10ベストに選出されたホンダ・ヴェゼルも同様の理由で、僕の配点枠から多くポイントを引き出すことができませんでした。
レーシングドライバーとして、またテスト・ドライバーとして「走りのよさ」に重きを置いてリポートすることを常々心がけている僕が後席を重視するのは意外に思われるかもしれませんが、かねてより4ドア車であれば後席にも前席同様の配慮をすべきと唱えています。
古くは1970年代。まだシートベルトの重要性があまり大きく捉えられていなかった時代です。ある新型車の発表試乗会に赴き試乗しました。4ドアセダンだったゆえ後席にも乗車してチェックしたところ、後席にシートベルトが見当たらない。開発担当者は前席に3点式シートベルトを採用し安全性を高めたことを力強く説いていたましたが、「後席は?」と尋ねると黙ってしまった。若造だった僕は、まずいことを聞いてしまったのかなとKYな雰囲気を味わいましたが、間もなく全席3点式シートベルト装着が義務化されたのです。
当時はヘッドレストも後席にはなく、4ドアセダンに魅力を感じなかった理由の多くはそのためでした。家族4人でドライブに出かければ前席は特等席で見晴らしもよく装備もいい。後席はおまけの位置で、乗り心地も悪く気分は最悪になる。だから自分が4ドア車を買うなら後席にも十分な配慮をしたモデルを選ぶ。3台乗り継いだE38型BMWの7シリーズは後席のほうがむしろ快適と言えるほどの装備に優れ、快適で価値ある4ドアセダンでした。また最近購入したマツダCX-5は後席にもシートヒーターとリクライニング機構、エアコン吹き出し口が備わり、最低必要条件を満たしたのです。もし後席を軽視するなら2ドアにしてもらいたいと思っています。
最高点を配したのは三菱アウトランダーPHEV!
話が脱線してしまいましたが、そんな訳もあり僕が今回最高点を配したのは三菱アウトランダーPHEVでした。アウトランダーPHEVは先代が2012年に登場しています。その時は「自動車界のノーベル賞」と評価しました。今では世界中の多くの自動車メーカーが三菱方式とも言えるPHEVを開発し採用していますが、制御面での完成度も含めてアウトランダーPHEVのシステムは突出した完成度にあるのです。
単に電動モーターとガソリンエンジンの効率的な制御に留まらず、悪路でのトラクション性能確保、ハンドリング面の秀逸さ、それを引き出すS-AWCの熟成度も高く、最高点を配点しました。室内のデザインや装備、質感も圧倒的に高まり、もちろん4ドアとして素晴らしい後席居住性と装備を備えている。全席シートヒーターは今やSUV車必須装備と言えるし、後席リクライニング機構もなくてはなりません。後席エアコン吹き出し口に後席ドア窓にサンシェードも備えられるなどBMW7シリーズに勝るとも劣らない仕上がりです。今回のモデルではさらに3列シート車もラインアップされ、今後は3列シートヒーターも訴えかけていかなければならないでしょう。
次点にはシボレー・コルベットに高得点を配点しました。新型となったコルベットはじつに素晴らしい。ミドシップ化については賛否両論あるようですが、これほど高い完成度で仕上げられているなら文句なし。現代では他に見当たらないようなOHVエンジンはV8バンクの中央に1本のカムシャフトを配し、両バンクのバルブを稼働させる。OHVは商用車など低速走行でコストダウン要求の大きなモデルに採用されることが多い実用向きエンジン形式と思われていたが、コルベットはそんな考え方を一蹴したのです。1本カムシャフトは両バンクのシリンダーヘッドを簡略化し、重量と部品点数を軽減。重心の低さにも貢献させている。さらにドライサンプ化することでエンジンはより低い位置に搭載されレーシングカーとしても成立しそうな低重心を実現しているのです。
それでいて実用性を犠牲にしていない。ホンダが現行のNSXやS660をリリースした時、多くの期待と高い評価の声が聞かれたが、COTYで本賞を受賞することはできなかった。その一因であったのは実用性の低さに違いありません。NSXもS660もミドシップであることを口実にカップホルダーもちょっとした物入れも備えていない。旅行カバンを積み込んでドライブすることができないスポーツカーに需要があるとは思えない。
だがコルベットにはしっかりとしたトランクスペースが備わっています。フロントフード下に大容量のトランクがあり、リヤエンドにはさらに大きなトランクがある。ここは取り外し可能なルーフの収納スペースでもあるが、普段は大きなトランクとして活用できる。走り、スタイル、サウンド、価格と優れ、加えて実用性も高ければ評価しない理由はないのです。
メルセデス・ベンツCクラスにも高得点を配点しました。その最大の理由は「走りの良さ」でした。後輪操舵システムを備えたモデルはコーナーで完璧なライントレース性を示し、今後は後輪操舵無しではハンドリングは語れなくなると思わせるほどの完成度でした。しかし全車に標準装備されていないことから、コルベットに次ぐ配点になりました。
2021-2022 COTYは僕のなかでこのように完結したのでした。
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