日本にはランドクルーザーやジムニーなど世界に誇るオフロード上等の4WDがある。現代ではランドクルーザーこそ世界的な陸の王者だが、かつてオフロードの王者だったのはイギリスのランドローバーだろう(もちろんアメリカのジープもだ)。
1948年の登場から軍用車をルーツに持つランドローバーだが、今やレンジローバーやディスカバリーなどの「汗をかかない」4WDをラインナップする。
ぬるいSUVを一蹴! 現代の恐竜!? クロカン四駆ガチ勢世界選手権
しかしランドローバーの揺るがないDNAは圧倒的な4WD性能。いくら本革シートでエアコンが効いていても、クロカンでも砂漠でもどんとこい。それがランドローバーのDNAだ。
しかし本来「尖っている」はずのディフェンダーに大きな変化が表れた。それが新型でラダーフレームの採用をやめたということ。それゆえ「軟派になった」なんて言われているのだが、わざわざ走破性能を下げることをランドローバーがするはずがない気もする。
ということでオフロードにはちょいとうるさいカメラマンにレビューしてもらった。ちなみに愛車はジープラングラーのオープントップというオフロードガチ勢。
文/写真:池之平昌信
【画像ギャラリー】大英帝国の陸の帝王ディフェンダー! フルモデルチェンジしたワイルドな英国紳士を写真でチェック!!
■御年72歳の「長老」が「タフでワイルドな行動派」にフルモデルチェンジ!
昭和23年生まれの頑固ジジイが、タフでワイルドで洗練された行動派にフルモデルチェンジした
突然ですが、あなたは昭和23年に何をしていましたか?
私の両親はまだ中・小学生。調べてみるとあの美空ひばりさんがデビュー直前の11歳だった年らしい。終戦から3年、たいへんな時期だったんだろうなあ。
さてそんな72年前の1948年に発売となったのがランドローバー・シリーズ1。その後マイナーチェンジ的な改良を繰り返し、様々なボディタイプの製造が続いてきた。他のモデルとの関係もあり「ディフェンダー」という名がついたのが90年。それでもフルモデルチェンジと言わないらしい。
アドベンチャーパックなど、オフロード色の強いオプションパック等も多種用意されているので、きっと自分好みの1台がみつかるはず
よく比較されがちなJEEP(1941~)とメルセデスGクラス(1979~)と同様、ミリタリーとしても有名な世界的タフネス4WDだが、その2車種と大きく違うのは、ほぼそのままの形で現代まで生き残ってきたこと。
屈強なラダーフレームに超ローギアードなミッション。強い男が乗る堅牢なクルマ、陸の王者としてオフロード界に君臨してきたといっても過言でなないだろう。
■野山に鍛えられ都会に磨かれた走り! 不安を覆す極上の乗り心地
4気筒ガソリンターボエンジンは300PS。燃費はWLTCモードで8.3km/Lだ。重く大きな車体には役不足ではないかという不安を一蹴し、ウソのようにスイスイと走る
そんなディフェンダーがついに今年、大きく変わってしまったのだ。
ラダー式を捨てモノコック構造に…。
「あー、陸の王様よ! あなたも世の流れには逆らえず、ついにひよったんですね?」と思いつつ、20年落ちJEEPラングラーオーナーの私は試乗会場へ到着した。
まずは公道ワインディングロードから走行開始。フムフム、素晴らしい!
当然かもしれないが、イヴォークやディスカバリーといった高級SUVのように乗り心地もよく、キビキビと走る。全長5m越、約2.2tもあるロングボディに2Lのガソリンターボでは役不足じゃないの? との不安をみごとに裏切り、8速AT&エアサスでガンガンいける。
シフトダウンしたくなるようなターボラグ、トルクの薄い領域も無いし、重量級SUVにありがちな「コーナーで腰くだけ」みたいなことも皆無。それでいてタイヤはオールテレインのオフロードタイプ。そういったタイヤにありがちなノイズも車内には全然入ってこない静粛性。
■スイッチ操作で本格オフロードモードにチェンジ! 昔の少年は変形に弱い
車内のパネルを操作して「最強オフロードモード」にトランスフォーム! わずか数秒で車高が7cmもアップし、ゴリゴリの4WDに変形だ
「ほほー。王様やりますね! 舗装路完璧です! けどその分、オフロードは、アレなんでしょう?」と、思いつつ高級リゾートホテルの裏山に存在する常設コースへ突撃。
さすが王様! いいコース知ってんなあ。NASCというJAF公認団体が運営するココは、レースなどが開催されるだけではなく、国際ラリーに出場するワークスマシン開発テストにも使用されるという本格的オフロードコースだ。
ここの急斜面やコブは、そのへんのSUVだとバンパーやおなかを擦るわ、ボディーはきしむわ、スタック続出するわ……が必至のコース。
ここでディフェンダーの車内パネルスイッチ(テレインレスポンスなど)がポンポンと押され、4WDシステム、ギア比、ヒルディセントコントロール(HDC)、などが最強モードにセットされた。
するとどうだろう、さっきまで舗装路をスイスイ走っていたSUVの車高が数秒間で約7cmも上昇し、最低地上高、約29cmのモンスター四駆に変身したのだ。ちなみにこの地上高はJEEPラングラーやメルセデスGクラス、ランクル、ジムニーといった本格クロカンモデルの中でもダントツに高い! 恐れいりました!
■まだまだ若いモンには負けん! オフロードに君臨し続ける陸の王者
最新のテクノロジーでドライバーをサポートしながら悪路を駆け抜ける。ラダーモデルの3倍のねじれ剛性をうたうボディは軋む音ひとつ立てない
それだけではない。うねりながら落ちていくかのような急な下り坂では、4つのタイヤ個別にブレーキをかけながら超低速をキープしてくれる。ちなみにこのHDC機能はランドローバーが特許を持っているそうだ! そして登り坂ではデフのロックや解除が自動で頻繁に行われている。
また、視界が悪くても「クリアサイトグランドビュー」等の機能で脱輪等のトラブルもかなり回避できる。そんなゴリゴリの極悪路だろうが、ダカールラリーのごとく砂煙を豪快に巻き上げながら駆け抜けるようなハイスピードコースだろうが、ボディーはビクともしないしミシリともいわない。
「ラダーフレームのほうが頑丈だから…」なーんて、もはやマニアの戯言なのか?「ボディのねじれ剛性はラダーモデルの3倍」というのはどうやらホントのことらしい。
国産新型車の説明会で「今回ボディ剛性は20%アップしました」なんてセリフを聞いて驚いていた自分が情けない。なんせこちらは300%アップなのだから!!
■最新の運転支援システムも装備! 陸の王者はいまだ健在だ
車内の操作系も実に現代的で洗練されている。昼間オフロードを爆走したあとは、タキシードに着替えてレストランに乗りつけたくなる
結局はオンロードもオフロードも非の打ちどころがなく、王者の貫禄さえ見せつけられた。車内も快適そのもので、近代的なナビや、さりげなくコンパクトに集約されたモードセレクト、エアコン等のスイッチ類。ACCなどの近代的運転支援システムも装備されているのだ。
本格オフロードカーとは「アウトドア好きが普段の日常では我慢して乗る」イメージだったが、このディフェンダーの登場でそんな常識は覆された。
90(ショート)が499万円~、今回試乗した110(ロング)589万円~と王者にしては、なかなかお求めやすい価格といえるだろう。
これはもう世界的大ヒットの予感しかしない。このクルマが大ジャンプして疾走するという映画『007』の新作公開(今秋予定)より先にディーラーへ急ごう!!
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まさか、その未舗装の道がオフロードのつもり?