アンドロイド携帯などに搭載されているナビアプリ「Android Auto(以下Aオート)」と、iPhone、iPadなどの「Car Play(以下カープレイ)」。採用するクルマは増え続けているが、これってほんとにカーナビの代わりになるのだろうか?
講談社ビーシーから東京スカイツリーまでの一般道 約10kmを走り、カーナビとの違いを検証してみた。
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※本稿は2018年10月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年10月10日号
■Android Auto、Car Playはカーナビの代わりになるのか?
この2つのアプリ、基本的な機能は同じ。Android携帯やiPhoneなどとクルマを有線(USBケーブルやLightningケーブル)で接続して、スマホの機能の一部をクルマに搭載されているディスプレイオーディオで使用できるというもの。Aオートはアンドロイドスマホ専用で、カープレイはアイフォン専用だ。ナビゲーションのほか、音楽を聞いたりメッセージを送受信したりなどもできる。
これまでカーナビがAオートやカープレイに対応しているというパターンが多かったのだが、このほど、カーナビが搭載されずディスプレイオーディオのみという潔いクルマが登場した。三菱の新型車、エクリプスクロスの上位モデルだ。
今後もこういうクルマが増えるかもしれないので、Aオートやカープレイがカーナビの代わりになるのかを中心に、いろいろ検証をしていく。
■クルマにUSBケーブルで接続するだけ
エクリプスクロスを例に、使い方を紹介しよう。
まずはクルマのUSBポートにアンドロイドスマホまたはアイフォンを接続する。画面に「Android Auto」または「Car Play」と表示されたら、それをタップするだけだ。これで使えるようになる。
使い方も簡単で、マップボタンを押せばナビ機能が起動する。音声入力ボタンを2秒押すと音声入力ができる状態になるので「東京スカイツリー」と言えば目的地までのルートが表示される。画面上の案内開始ボタンを押せば案内がスタートする。簡単だ。
■検証ポイントをおさらい
Aオートやカープレイは、通信機能やGPS機能はスマホのものを使う。つまり、スマホにおけるGPS機能の弱点がそのまま、Aオートやカープレイの弱点となるわけだ。
カーナビは本体に地図を搭載しているが、スマホは搭載していない。そのため、使用中は必要に応じてインターネットから地図をダウンロードする。走行中は高速で移動しているため、地図のダウンロードが移動に追いつくのか確認する必要がある。
現在位置が正しく表示されるかも心配だ。スマホの地図アプリを使うと、たまに現在位置が大きくズレることがある。これはカーナビにもある問題だが、Aオートやカープレイだとどの程度問題になるか確認しておきたい。
ルート提案内容も、カーナビとAオート、カープレイで違うはずだ。実際に目的地までにかかった時間も気になるところだ。
今回は、講談社ビーシーから東京スカイツリーまでの約10kmを「Aオート」「カープレイ」「社用車のカーナビ」を使って実際に走行して検証した。社用車カーナビを5点として、最後に採点を行う。
〈検証ポイント〉
(1)ルートと実際の走行時間
(2)走行中の使い勝手
(3)GPS(位置情報)
(4)その他使い勝手
■検証(1) ルートと実際の走行時間
それぞれの道順提案結果を地図にまとめた。
Aオートは東京ドームと後楽園の間を通る交通量の少ないルート。カープレイは外堀通りを通る「名所ルート」、東京ドームや浅草松坂屋など観光地のド真ん中を行く。カーナビはこの2つの複合ルートという具合だ。
Aオートのグーグルマップは渋滞情報も持っているが、カープレイのマップは渋滞情報を持っていない。なので、渋滞などお構いなしに最短ルートを提案してきたのだ。ただし、カープレイの案内したルートは観光名所が見られて、走っていて楽しかったことは付け加えておく。言問橋(ことといばし)から見るスカイツリーは大迫力だった。
■検証(2) 走行中の使い勝手
ルート案内中の画面はカーナビが使いやすい。走行車線のガイドや、交差点手前で詳細が表示される機能はやはり便利で、これに慣れ親しんでいるとAオートやカープレイは不便に感じると思う。これら機能は複雑な交差点などで特に威力を発揮する。Aオートにも走行車線のガイド機能はあるが、表示が小さくてわかりにくい。ただ、ないならないでなんとかなることもわかった。
Aオートはマップ上で常に別ルートを表示し、現在のルートとの時間差を表示してくれる。渋滞回避の判断やルートを間違えた際に便利だ。
目的地の入力は今回の検証ではAオートとカープレイのほうが音声入力ができるぶん使いやすかった。音声入力のあるカーナビであればこの差はなくなるだろう。
■検証(3) GPS(位置情報)
エクリプスクロスはディスプレイオーディオにもGPSを搭載しており、スマホのGPSと連携するそうだ。Aオートやカープレイ搭載車の殆どにGPSが搭載されており、スマホと連携するか車載側のGPSのみ使用かの対応がなされるようだ。
Aオート、カープレイともに現在地の誤認識は少なく、誤認識の際もあり得ない場所は指さなかった。アルゴリズムの違いか、Aオートのほうが誤認識が多かったほか、正面方向がフラつきルート再探索を繰り返した。カープレイのほうが落ち着いているといえる。カーナビは誤認識はなかった。さすがだ。
■検証(4) そのほかの機能について
主に音楽再生機能だが、この点はAオートやカープレイがカーナビを上回った。USBケーブル1本で接続でき、複数スマホの切り替えも楽だった。カープレイのほうが対応音楽アプリが多いため、高い点数を付けた。スマホを2台接続し、1台をAオート、もう1台で音楽再生という使い方も可能で、複数人でドライブする際などに便利だろう。ブルートゥース接続よりかなり使い勝手がいい。
そのほかに、受け取ったメッセージの読み上げ機能やオーディオブックの再生なども可能だ。今後も対応アプリが増えるだろう。LINEの対応が待たれる。
■検証結果と結論
ナビ機能としてはカーナビが優秀だったが、実用レベルだったAndroid AutoとCarPlay。交差点の詳細表示はむずかしくとも、走行車線の案内を目立たせたりGPSが不安定な際の挙動を改善すれば、もっと使い勝手がよくなるだろう。
検証(1) ルートと実際の走行時間
1位 Android Auto(5点)……提示された距離 9.1km、予想所要時間 30分 → 結果 39分
1位 カーナビ(5点)……提示された距離 9.5km、予想所要時間 17分 → 結果 31分
3位 Car Play(4点)……提示された距離 8.6km、予想所要時間 16分 → 結果 38分
カーナビが最短で目的地に到着したが、所要時間の見積もりが甘いためAオートと同点とした。
検証(2) 走行中の使い勝手
1位 カーナビ(5点)
2位 Android Auto(4点)
3位 Car Play(3.5点)
Aオートは走行車線表Aオートは走行車線表示のUIの改善を期待したい。カープレイはGoogleマップが使えるようになるまで我慢。
検証(3) GPS(位置情報の精度)
1位 カーナビ(5点)……誤認識 0回
2位 Car Play(4点)……誤認識 1回
3位 Android Auto(3点)……誤認識 2 回
Aオートは車が向いている方向がしょっちゅう揺れるため、一番点数を辛くした。やはりカーナビが一番使いやすい
検証(4) そのほかの機能について
1位 Car Play(7点)
2位 Android Auto(6.5点)
3位 カーナビ(5点)
多機能っぷりはカープレイやAオートがカーナビより上。カープレイの方がアプリが多いため多いため0.5点上乗せした
* * *
結論としては、Aオートやカープレイはカーナビよりは案内機能の質は低いが、充分実用レベルにはあるというのが結論だ。Aオートやカープレイは、クルマの楽しさを広げてくれる素晴らしいツールだ。どんどん進化していってほしい。
むしろ課題は扱う本人の滑舌の進化かもしれない!?
【番外コラム】 ギガが足りないと使い物にならない!?
ギガが足りないとは、月内に通信をしすぎて契約通信量の上限に到達し、速度制限がかかっている状態のこと。これを書いている企画担当も20日頃にすでにギガが足りず通信制限がかかっている状態だ。貧乏は本当に辛い。キャリアによって違うが、速度は128kbps程度にまで抑えられてしまう。
この通信制限がかかっている状態だと、Aオートやカープレイのナビ機能は使い物にならなかった。通信制限がかかった状態で目的地を検索すると、10秒ほど待たされてルートが表示される。ただし、地図がまったくダウンロードされていない状態。ニョロニョロとした線が表示され、時間が表示される。
なので、月末に通信制限がかかるようなスマホの使い方をしている人は、余裕のある通信容量プランに変更するといい。おすすめは使ったぶんだけ料金を支払うプラン。現在の3大携帯キャリアの料金プランの場合、ドコモとauは最大20GB、ソフトバンクは50GBまで段階的に容量と料金が上がっていくプランがある。
格安SIMを使っている場合、大手キャリアと比べて通信速度がそもそも遅い。通信速度が1Mbps程度出れば地図アプリも実用レベルで使えるのだが、12時や18時といったピーク時間に人口密集エリアにいると、格安SIMは1Mbpsを下回る場合がある。一時的に快適に使えなくなる可能性もあるので覚えておいてほしい。
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