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クルマ好きの味方、スズキ好調! クルマ界イチ速くて、安くて、旨い! その理由を探る

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クルマ好きの味方、スズキ好調! クルマ界イチ速くて、安くて、旨い! その理由を探る

 スズキは昨年11月、2021年度上期(4~9月)期連結決算を発表したが、それによると売上高は1兆6735億円(前年同期比31.8%増)、営業利益が991億円(同32.3%増)、当期純利益が1005億円(同85.0%増)と増収増益となった。

 薄利多売を地で行くアルトやワゴンR、スペーシアといった軽自動車のほか、コスパに優れたスイフト&スイフトスポーツなどを揃える国内4輪事業はもとより、グローバルではインドなどで確固たる存在感を放っているスズキだが、「商売のやり方の巧さ」について分析する。

スズキ新型SUV「S-CROSS」への期待と秘かに進むHV戦略の行方

文/井元康一郎、写真/スズキ、ベストカー編集部

[gallink]

■うま味がないと言われる日本市場で稼ぐスズキ

 スズキが業績好調だ。昨年11月11日に発表した2021年4-9月の6カ月決算では売上高1兆6736億円、本業での儲けを示す営業利益は991億円。過去最高だった2018年の同期にはまだ遠く及ばないが、コロナ禍の後遺症や半導体不足などさまざまな逆風が吹くなか、トヨタ自動車に次ぐ利益率を叩きだしたのは中小メーカーとしてはこのうえない健闘ぶりと言えるだろう。

昨年12月にフルモデルチェンジし、9代目となったアルト。最近はハイトワゴン車の人気に押され気味だったが、ハイブリッド仕様による環境性能を取り入れてきた今モデルはヒットの予感

 実はグローバルで見ると、決して状況がいいとは言えない。インドをはじめとする新興国市場で巨額の利益を出すのが同社の経営の特徴であったが、今期のスコアを見るとインド市場でトップシェアを維持している合弁会社、マルティ・スズキは販売台数こそ大幅回復したものの、収益的には赤字すれすれ。インド以外のアジアや欧州の利益も低水準だ。

 その苦境を救ったのは、人口減やクルマ離れでウマ味はもはやないと言われることの多くなった日本市場だ。営業利益991億円のうち、実に3分の2以上にあたる665億円を日本で稼ぎ出したのである。

 もし、スズキが日産やホンダのように日本事業が慢性赤字体質だったら今頃はひとたまりもなく赤字転落していたことだろう。

■日本でのスズキの強さはハズレのない商品ラインナップにあり!!

 輸出比率が高いわけでもなく、高価なクルマが売れているわけでもない。また、日本での販売台数も半導体不足の影響で、コロナ禍に見舞われた昨年よりさらに減少している。

 にもかかわらず、日本でこれだけ手堅い収益を上げられている要因として、いのいちに思い浮かぶのは、スズキのニューモデルの「空振り率」が近年、目に見えて低下していることだ。

 自動車メーカーは口先はともかく、本心では最初から売れなくてもいいなどと思ってはいない。どんな薄利多売であってもこれなら利益が出るという値段で思惑どおりの台数が売れれば必ず儲かるのだ。

 もちろん現実は厳しい。クルマの価値づけがうまくいかず、コストの高いクルマを儲けの出ない価格で売らざるを得ないこともあるし、そもそも販売台数が低迷して当初の想定が狂うことも多々ある。

日本市場でのスズキの強みは、ユーザーの心を掴む巧みな商品戦略にある。単にファミリー向けの軽自動車や小型車ばかりではなく、ジムニーのような趣味性の高いモデルもラインナップする

 失敗が多ければ利益が低かったり、赤字になったりする。気まぐれな消費者のマインドや世の中の潮流に常に振り回される。正しさだけではうまくいかないのが自動車ビジネスの難しさだ。

 その難しいビジネスにおいて、スズキはここ数年、新商品を当てまくっている。2017年末に発売した軽スーパーハイトワゴンのスペーシア、2018年発売のジムニー/ジムニーシエラ、2020年発売の小型トールワゴンのソリオ、そして昨年発売したスライドドア装備の軽トールワゴン、ワゴンRスマイルなどなど。

■ライバルを脅かす売れゆきを誇る、「スペーシア」と「ソリオ」

 このなかで注目に値するのはスペーシアとソリオだ。まずはスペーシア。スズキはもともと軽スーパーハイトワゴンでは弱く、ダイハツタント、ホンダN-BOXの後塵を拝していた。

 が、スズキは諦めることなく、驚異的な粘りをもってユーザー心理を研究し、ついに現行モデルになってかつての王者タントを抜き、圧倒的ナンバーワンだったN-BOXの背後を狙うくらいの人気モデルになった。

今や軽スーパーハイトワゴン3強の一角を占める人気モデルとなったスペーシア。当初はノーマルモデルとカスタムといった他社でも人気の定番モデルを投入 

その後追加されたスペーシアギア。ここにスズキの販売戦略のうまさが光る。他車部品を流用しながらハイトワゴンに新風を吹き込むSUV風に仕立てたセンスのよさが光る

 もう一台のソリオはフルモデルチェンジによってクルマとしての出来が驚異的に上がった。日産ノートやホンダフィットにとっての最大の脅威は、クラストップのトヨタ「ヤリス」ではなくソリオだと、両社の販売会社のセールスマンは口を揃える。

■コンパクトー本で勝負すると宣言して以降、すべてのモデルの完成度が高まった 

 筆者は昨年、ソリオで東京と大阪の間を1200kmほどドライブしてみたが、ハッキリ言って完成度は素晴らしいものがあった。新東名の120km/h区間でも直進性はみごとなもので、山岳路でも速くはないものの操縦性が素直で不安感がきわめて小さい。

しぼむ日本市場でのソリオの健闘も光る。派手さはないが、2代目となり考え抜かれた使い勝手のよさや走りのよさはライバルのルーミー以上の魅力を感じる

 車内は静かで乗り心地は快適。そして燃費も新東名をはじめ流れの速い高速主体で18km/L台、一般道のバイパス主体で22km/L台と申し分ない数値だった。

 スズキのクルマ作りが近年、非常に手堅くなってきたのには理由がある。きっかけは2015年、これからはサブコンパクト以下だけで勝負をすると宣言したことだった。

 今年一線を退いた名物経営者、鈴木修氏は「われわれは大手さんが旨味がないからやらないようなことをコツコツやるのが本分。安いクルマのノウハウでは絶対に負けないことを目指す」と語っていた。

■バジェッドブランドながら、着実に利益も確保! 電動化時代でも強みを活かせるか?

 決して派手な大ヒットを飛ばそうとしたり、クラスナンバーワンを狙ったりしない――こういう自制心を持つことはクルマ作りにおいては案外難しいことなのだが、スズキは自らのポジションをみだりに高く置かず、バジェット(お買い得)ブランドで行くとハッキリ宣言することによってその自制心を作り出した。それがいいクルマづくりにひと役買っていることは間違いないだろう。

 ちなみにそのポリシーはスポーティカー、スイフトスポーツなどにもしっかり生かされている。1トンを切る車重に最高出力140psの1.4Lターボエンジン。例えばトヨタGRヤリスのように先鋭的ではないが、腕次第ではわりといい勝負になるくらいの速さを持ち、お値段はおおむね半額。クルマ好きの若者へのファンサービスとしてはこのうえないモデルになっている。

スイフトとスイスポ。ともにリーズナブルな価格ながらトータルバランスの優れたクルマだ。ぜひ初めてのマイカーとしての選択肢に入れて欲しい。運転する楽しさを感じることができるだろう

先代アルトワークス。軽さと専用チューニングのトルクフルなエンジンにより、軽自動車ではナンバー1の走行性能を誇った。残念ながら今のところ、新型には設定されていない

 もちろんスズキの将来が安泰というわけではない。電動化への対応は必須であるし、その時代に今までと同様、お買い得車戦略で強みを発揮できるかどうかも確定していない。

 が、現状のビジネスでしっかり利益を出せていることは生き残りを賭けた新たな戦いに挑むには有利だ。インドはじめ新興国ビジネスが従前の高収益体質に戻れば、利益水準は跳ね上がるだろうし、研究開発にかけられる資金も潤沢になる。

 スズキがこれからの激動の時代をどう渡っていくか、またその過程でターゲット層である庶民ユーザーにどんな新しい提案を見せてくれるか、楽しみなところである。

[gallink]

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