2019年11月21日、アルファ ロメオ初のSUV「ステルヴィオ」のディーゼルモデルに「スポーツパッケージ」が新たにくわえられた。ガソリンモデルには従来から設定があったわけだけれど、これを機にガソリンモデルもディーゼルのスポーツパッケージと同じ装備に変更されて新登場とあいなった。
【主要諸元(2.2 ターボディーゼル Q4 スポーツパッケージ)】全長×全幅×全高:4690mm×1905mm×1680mm、ホイールベース2820mm、車両重量1820kg、乗車定員5名、エンジン2142cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(210ps/3500rpm、470Nm/1750rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ235/55R19、価格666万円(OP含まず)。まず外観の違いからご紹介すると、スタンダードのステルヴィオが18インチの5本スポークのアルミホイールを履いているのに対して、スポーツパッケージは19インチの5ホール・アルミホイールになる。1970年大阪万博の、サクラのマークみたいなホイールも、チラリとのぞくブレーキ・キャリパーが赤く塗られるのも、これまでのスポーツパッケージとおなじだ。
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異なるのは、ウィンドウのモールディングがクロームではなくてブラック仕上げになり、ベースモデルにはないブラックのルーフレールが追加される点。
内装は、スポーツ レザーステアリング・ホイール、スポーツ レザーシート、レザー ダッシュボード/ドアパネル、harman/kardonプレミアムオーディオシステム、LEDアンビエントライティングなどを備える。
華やかなアルミのフットレストや、アルミ仕上げのペダルなどスポーツパッケージならではの装備も見逃せない。メーター ナセル上の部分はレザーで覆われ、赤いスティッチが入っているだけで、ググッとグラントゥリズモ度が跳ね上がる。
ギャラリー:走り屋のためのSUV! アルファロメオ ステルヴィオ試乗記低く、そしてワイドはインパネ。スポーツパッケージのインテリアパルネは、アルミニウム。harman/kardonプレミアムオーディオシステム(14スピーカー/900W アンプ)は標準。「ALFA DNAドライブモードシステム」は標準。3種類のドライブモードから選べる。写真の「d」はもっともスポーティな走行モード。シート表皮はレザーが標準。フロントは電動調整&ヒーター機構付き。リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。ラゲッジルームの通常時容量は525リッター。テールゲートは電動開閉式。ラゲッジルームフロア下には、小物入れも。仕切りがあって使い勝手に優れる。ステアリング・ホイールは、大型のパドルシフト付き。アナログタイプのメーター。中央のインフォメーションディスプレイはフルカラー。インフォテインメントシステムはApple CarPlayやAndroid Autoに対応。19インチ ホイール&タイヤと、イタリアらしい天然素材と職人仕事がくわわったことで、価格は、ガソリン モデルで699万円、ディーゼルで666万円と、それぞれベース モデルより31万円のアップ。注目したいのはディーゼルで、なんとガソリン モデルより30万円近くもお求めやすくて、しかもガソリン モデルにはないフォグランプまで設けられているのだ。ディーゼル エンジンはガソリンより高いのが常識なのに……。
飛ばすほどに好印象とはいえ、である。筆者は2019年に都内で開かれたステルヴィオ2.2ディーゼルに試乗したとき、実のところ、ピンとこなかった。乗り心地は硬すぎるし、ディーゼル音もガラガラしていて「なんだかなぁ」と、思ったのである、正直な話。
まして今回のスポーツパッケージは19インチである。タイヤは235/55のピレリ「スコーピオン ヴェルデ」、ランフラットだ。乗り心地はいっそう硬い。やっぱり、硬いよ、と札の辻の角にあるFCAジャパンで拝借し、走り出した途端そう思った。
WLTCモード燃費は16.0km/L。燃料タンク容量は64リッター。ところが、翌日早起きして、小雨のなか、箱根まで往復してみたら印象が一変した。このクルマ、地平線までぶっ飛ばす覚悟でアクセル ペダルを床まで踏みつけると、印象が一変する。飛ばすほどに乗り心地がものすごくスムーズになる。低速でハーシュネスはあるけれど、ドンバタンというタイヤ&ホイールのオーバー サイズ感はまったくない。
2142ccの直列4気筒DOHCディーゼルターボにしても、中途半端にアクセルを開けていると、フラット トルクはよいのだけれど、くぐもったガラガラ音に気をとられて、もっさり感が先にきてしまう。だから、こいつは典型的なもっさりディーゼルだな、と、筆者は思い込んでいた。その不明を恥じなければならない。全開にすると、まるでガソリンのアルファ ツインカムのような乾いたサウンドを発し、ディーゼルとは思えぬ伸びやかさで回転を積み上げるのだ。
搭載するエンジンは2142cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(210ps/3500rpm、470Nm/1750rpm)。トランスミッションは電子制御式8ATのみ。4500rpmからレッドゾーンなのだけれど、ディーゼルにありがちな頭打ち感がない。天井知らずで、パワーが伸びていく感がある。
最高出力こそ210ps/3500rpmと控えめながら、470Nmもある最大トルクは1750rpmで発生する。100km/h巡航は8速オートマチックのトップで1500rpmほど。そこから仮にアクセルを踏んだとして、まったくむずがることなく1820kgのボディを加速させる。
電子制御式4WDは、常に路面状況を検知し、前後アクスル間でトルクを最適配分。通常は100%後輪駆動で、状況に応じ最大50%のトルクをフロントアクスルに送る。走り屋は感激か足回りのよさは、聖地ドイツ「ニュルブルクリンク北コース」を7分51秒7で走って、SUVの世界最速ラップタイムを記録したステルヴィオ 2.9V6ビターボ クアドリフォリオとの血縁関係を考えれば、むべなるかな。電子制御の足まわりと、510psを発揮する2.9リッターV型6気筒ツインターボエンジンは持たないものの、基本的にはおなじファミリーの血が流れている。硬すぎる足まわりは、超高速セッティングゆえ。
そう、ステルヴィオというのは、高倉健が演じる、「自分、不器用ですから」とみずから告白するような、あくまでピュアでまっすぐな性格の人物ならぬ、クルマなのである。山道でのコーナリングなんて、コーナーのRと速度の関係で、時にやや深めにロールしたりして、ドライバーに“やっている感”を与えてくれる。
ギャラリー:走り屋のためのSUV! アルファロメオ ステルヴィオ試乗記低く、そしてワイドはインパネ。スポーツパッケージのインテリアパルネは、アルミニウム。harman/kardonプレミアムオーディオシステム(14スピーカー/900W アンプ)は標準。「ALFA DNAドライブモードシステム」は標準。3種類のドライブモードから選べる。写真の「d」はもっともスポーティな走行モード。シート表皮はレザーが標準。フロントは電動調整&ヒーター機構付き。リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。ラゲッジルームの通常時容量は525リッター。テールゲートは電動開閉式。ラゲッジルームフロア下には、小物入れも。仕切りがあって使い勝手に優れる。ステアリング・ホイールは、大型のパドルシフト付き。アナログタイプのメーター。中央のインフォメーションディスプレイはフルカラー。インフォテインメントシステムはApple CarPlayやAndroid Autoに対応。足まわりは硬いのに、ロード・ホールディングがいい。4WDシステムは、ふだん100%後輪駆動で、必要であると電子制御が判断したときにのみ最大50%、前輪にトルクを供給する。なので、アンダーステアはほとんどでない。着座位置は高いけれど、不安は微塵もない。このクルマ、姿カタチこそ、5ドアのSUVだけれど、峠に連れて行っても“走り屋仕様”なのだ。
第2次大戦前夜の1935年、ニュルブルクリンクで開かれたドイツ グランプリにおいて、圧倒的に優位なドイツ勢に敢然と立ち向かったタッツィオ ヌヴォラーリ駆るアルファ ロメオ「P3」とおなじ……、という例は古すぎるにしても、いや、グランプリの歴史に残るアルファ ロメオの偉大な勝利をステルヴィオの開発陣が意識していなかったはずはない。ニュルブルクリンクでのSUV最速ラップ挑戦にも、どこかでつながっているに違いない。と、思い直しまして、その古すぎる例をそのまま使うと、P3と同じ熱き血潮がSUVのステルヴィオにも流れている!
そこのところが、ほかのヤツらはわかっちゃいない。ステアリングはクイックで、ロック トゥ ロックは2回転ぐらいしかせず、ディーゼル エンジンはトルキーなのに伸びやかで、乗り心地は飛ばすほどによくなる。しかも、このディーゼル、都内から箱根まで往復しても燃料計はまだ4分の3ぐらい残っているほど、燃費がいい。
こいつのよさはオレだけがわかっている。これって、考えてみたら1980年代の「75」とか「164」とかでも感じたよさとおなじである。「オレだけがわかっているアルファ ロメオのよさ」。
そう思うと、俄然、愛おしく思えてくる。ステルヴィオというのは、たとえディーゼルであっても、走ることにクレイジーな走り屋のためのSUVなのだ。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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