ジウジアーロによる個性派スペシャリティ買う前に知っておきたいポイント
石川島造船(現IHI)の自動車部門をルーツに持つ「いすゞ(ISUZU)」。1993年に乗用車の生産を中止したが、現在はトラックをはじめとする商用車メーカーとして国内外で存在感を示している。そんな、「いすゞ」を特別な存在だと信仰する旧車好きはいまだに多い。ベレット、117クーペ、ジェミニなどなど1950年代から1993年にかけ名車を数多く世に送り出してきたからだ。
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トヨタや日産とは、ひと味もふた味も違った乗用車を生み出した「いすゞ」。なかでも、とくに強い印象を与えたのが、1981年に登場した初代『ピアッツァ』だろう。このクルマの魅力は、一にも二にもカーデザイン界のマエストロと呼ばれるジョルジェット・ジウジアーロが手がけたデザインであることは間違いない。
1979年のジュネーブショーに出展された初代ジェミニをベースとしたコンセプトカー「アッソ・ディ・フィオーリ」。そのデザインを源流に、実用性や居住性を重視しひとまわり大きなボディを身にまといデビューしたのが『ピアッツァ』で、徹底したフラッシュサーフェイス(極力段差をなくしたデザイン)が施されていた。フロントのオーバーハングを長くとった一方でリアをスパッと切り落としたプロポーションを、”マヨネーズの容器みたいだ”と揶揄する声もあったが、当時の国産車が持ち合わせていない未来的でありつつ優雅さを感じるデザインは、多くの人に衝撃を与えた。
ジウジアーロも初体験だったフェンダーミラー
余談だが、国内ではドアミラーが許可されなかった当時、ピアッツァはフェンダーミラーを装備していたが、そのデザインもジウジアーロだった。多くのカーデザインを手がけてきたが、フェンダーミラーのデザインは初体験だったのである。そして、未来的なデザインを採用しているのはエクステリアだけではなくインテリアも同様。メーターの両サイドにハンドルに手を添えたままライトやワイパーの操作を行なうことができるサテライトスイッチを配したインパネなど、特長のインテリアはいま見ても古くささを感じない。斬新な内外装デザインを身にまとう『ピアッツァ』はスペシャリティカーではあるが、フォーマルにもカジュアルにも使うことができる希有な存在だった。
使い勝手バツグンの高い実用性
希有な存在というキーワードで忘れてはならないのがスペシャリティカーとは思えない実用性の高さ。大人4人がしっかりと座ることができる居住性はもちろん、ラゲッジルームも十分な広さを有しており使い勝手も逸脱。この実用性については、ライバルとなる他メーカーのスペシャリティカーに大きく勝っていた。ピアッツァはスタイリッシュでユーティリティに優れたスポーツクーペが開発テーマではあったが、どちらかというと現在のシューティングブレーク(クーペとステーションワゴンのクロスオーバー)に近いといえる。
そんな美しい内外装フォルムを備えた「ピアッツァ」だったが、パワーユニットやサスペンションの評価はイマイチだったのも事実なのだ。
物足りなさを感じた機能性能
エンジンは、シングルカムとDOHC2種類の1.9リッター直4、そしてデビューから2年後の1984年には2リッター直4・DOHCターボを設定。高級スペシャリティカーとして6気筒エンジンを搭載するライバル車のソアラたちと比べても動力性能は劣っていなかったものの、ユーザーは物足りなさを感じていた。また、サスペンションは、 初代ジェミニと基本的には同じもの。1974年に登場したジェミニのサスペンションをリファインしてはいるものの、性能は見劣りすると当時の自動車評論家が口を揃えた。内外装のスタイリング、ユーティリティはライバル車たちに勝る魅力を持ちながら、相対的に足まわりの実力が見劣りしていたことが、高いポテンシャルを秘めたクルマのわりには、販売台数を伸ばせなかった大きな要因だったことは間違いない。
とはいえ、その美しいスタイリングに惹かれるファンはいまでも多い。現在でも十分通用するエクステリアデザインを備えるピアッツァだが、現在、所有・維持することは可能なのだろうか。
専門家に問い合わせたところ「簡単ではない」という前提の元に、以下の5つの注意点を挙げてくれた。・パーツの流通が比較的良い「ハンドリング・バイ・ロータス」がオススメ
・購入後は、ゴム類、電気系、電子制御系のメンテナンスをすべき
・初期型のデジタルメーターは壊れると修理困難
・車両の状態を的確に教えてもらえるお店で購入すること
・購入後にきちんと整備できるお店や担当者から入手する
いずれにしろ、「ピアッツァ」を乗りこなすには覚悟が必要なのは間違いないようだ。ただ、あの美しいフォルムを備えたクーペを所有するなら相当な覚悟も辞さないという、ピアッツァに心奪われたファンはけして少なくないという。
(レポート:手束 毅)
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