現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜミシュランのタイヤは魅力的なのか?

ここから本文です

なぜミシュランのタイヤは魅力的なのか?

掲載 22
なぜミシュランのタイヤは魅力的なのか?

ミシュランの新しいタイヤをテストした今尾直樹が、あらためて同ブランドの魅力を考えた!

殿堂入り

29歳、フェラーリを買う──Vol.147 連載終了の理由

3月中旬、日本ミシュランタイヤが新商品の試乗会を栃木県栃木市にある駆動系部品メーカーのプルーピング・グラウンドで開いた。新商品は2種類。スポーツ・タイヤの「パイロット・スポーツ5」と、SUV用コンフォート・タイヤの「プライマシーSUV+」である。

パイロット・スポーツ5用の試乗車にはトヨタの「カローラ・スポーツ(1.8リッター直4+電気モーターのハイブリッド)」が用意されており、筆者はその乗り心地の滑らかなことに内心、舌を巻いた。雑味がなくて、じつにスッキリしている。う~む。こんなに気持ちのよい乗り心地のカローラは乗ったことがない。

じつはこの印象、試乗コースの確認のためにカローラの助手席に乗せてもらって下見したときに得たもので、しかもこのときのカローラが履いていたタイヤはパイロット・スポーツ5ではなくて、先代の同4だったというのに……。ミシュラン、おそるべし!

パイロット・スポーツはフランスの大手タイヤ・メーカーにして名門ミシュランがモータースポーツ活動から得た技術をフィードバックしてつくっているストリート用スポーツ・タイヤで、新しいパイロット・スポーツ(PS)5は、2016年に発売されたPS4の新型、ニュー・タイプになる。クルマでいえば、フルモデルチェンジで、トレッドのデザイン、構造、コンパウンドから、すべてが新しい。

ちなみに、PS4(プレステじゃないですよ~)は発売以来、日本最大級のクルマSNSサイト「みんカラ」の投稿にもとづくパーツ・オブ・ザ・イヤーのタイヤ(スポーツ)部門で年間大賞1位を3年連続で受賞、2020年と2021年には年間大賞「殿堂入り」を果たしている。

「殿堂入り」とは、「過去数年間で不動の支持を集め続けたパーツに送られる称号」で、一般からの投稿にもとづく、とされるこの賞の「殿堂入り」に選ばれたことを日本ミシュランタイヤは大いなる栄誉だと考えている。

某国産タイヤとの違いにビックリ!

PS4で高く評価されているのは、ドライはもちろん、ウェットでのグリップ、ハンドリング、そして乗り心地であり、見た目のカッコよさ出そうで、6年ぶりの全面改良にあたり、性能面ではこちらの2点を重視したという。

1.高いグリップ力がもたらすウェット&ドライ性能
2.走りを愉しむ優れた操縦安定性

これらふたつのポイントをプレスに確かめてもらうべく、ミシュランはテスト車としてカローラ・スポーツを3台用意、それぞれにPS4、PS5、それに某国産メーカーのスポーツ・タイヤを装着し、われわれを待っていた。タイヤ・サイズはいずれも225/40R18である。

1を確認するテストは、プルービング・グラウンドのウェット・ハンドリング路である。日本ミシュランタイヤのテストによると、このプルービング・グラウンドのウェット・ハンドリング路でPS5を履いたトヨタ「86」のラップ・タイムは、PS4と較べて、最速で約1.7%、平均で約1.5%短縮。タイヤを換えるだけで、60秒のコースでおよそ1秒速くなったという。

これは新しいトレッドのデザインと、シリカをより多く配合した新しいコンパウンドによるもので、ドライ路面のタイムはさほど変わっていない。と聞くと、なあんだ、と筆者なんぞは思ってしまうけれど、ドライ性能を落とすことなく、ウェット性能を上げているのだから、スゴイですね~という話だ。

実際、PS5のウェット性能は確かにPS4を上回る印象だった。当日は小雨が降っており、散水装置の活躍は目立っていないのにハンドリング路の路面は濡れていた。PS4で走ったときは、比較の対象がないので、コースのむずかしさに頭を抱えるのみだったけれど、PS5に乗り換えるとビックリ! PS4よりステアリング・フィールはよりしっかりしていて、アンダーステアが出ない。だからアクセルを開けられる。接地感がより高まっていて、アクセルをより開けているからだと思うけれど、PS4のときよりトラクション・コントロールの作動を示す警告灯の点灯回数が増え、ABSの作動は減っていた。

でも、筆者がホントに驚いたのは、ミシュラン主催の試乗会のため、ここでは名前を明かすことができない某国産メーターのスポーツ・タイヤのダメさ加減だった。ステアリング・フィールはあいまいになり、ブレーキはすぐにABSが作動して減速Gが出ない。乗り心地も、まるで別のクルマ、厳密にいえば、たしかに別の個体ですけれど、微小な上下振動が感じられた。

あくまで筆者個人の印象では、PS4からPS5へ乗り換えたときより、ミシュランから某国産タイヤに乗り換えたときの違いのほうが大きい。ちょっとおおげさに表現すると、ミシュランと某国産タイヤとでは、同じカローラでも1世代違うぐらいに感じる。

そんな感想を日本ミシュランタイヤの方に伝えたら、「そうかもしれないですね」ということだった。というのも、PS5はフルモデルチェンジといっても、先代PS4の延長線上にある。対して、某国産タイヤは某国産タイヤ・メーカーの考え方、思想・哲学によってつくられているからだ。

外周路を使ってのレーン・チェンジとパイロン・スラロームで操縦性を確認するテストでは、正直、筆者にその違いはよくわからなかった。なんとなく、PS5のステアリング・フィールとしっかり感がいちばんだった、とはいえる。急激な荷重変化に対しても、接地面のカタチをなるべく丸く保つケーシングのつくり方の効果、だったのかもしれない。

“映える”タイヤ

3つめのポイントとしてミシュランが主張しているPS5の「見た目の良さ」というのは、「フルリング プレミアムタッチ」というサイド・ウォールのデザインを指している。右手をあげるミシュランマン、昔風にいうとムッシュ・ビバンダムのマークとMICHELIN PILOT SPORT 5の文字が浮き出ていて、地の部分の黒が一部帯状に、ほかの部分の黒よりも濃くなって、ほぼ1周している。

これは、金型加工技術によって表面に細かい凸凹をつけて、光を反射しないようにしているのだそうで、光を反射しないと、ひとの目には黒く見える。それも、ベルベットのような光沢と高級感がある。PS5はSNS時代を意識した“映える”タイヤなのだ。

トレッドに設けられた小さな3つの穴も要注目のアイディアである。携帯の電池の残量表示をヒントにしたというこの穴は、摩耗が進むにつれて外側から消えていく。従来のスリップサインも設けられているけれど、「ウェアー・トゥ・チェック」と名づけられたこの3段階表示によって、ユーザーはタイヤをより長く、安全に使用できる。とミシュランは主張している。なるほど、これなら素人にもわかりやすい。

げにタイヤとは恐ろしきものである。黒い魔性の物体、と申し上げても過言ではない。だって、あくまでミシュラン主催の試乗会での個人の印象ですけれど、ホントに違う。多少コストが高くなっても、自動車メーカーはミシュランを純正装着すべきだ、とすら筆者は思った。それだけで、クルマの上質さが向上するのだから、開発費のことを考えたらメチャクチャ安い。

少なくとも今回のテスト車と同じカローラ・スポーツのオーナー諸兄には声を大にしてお伝えしたい。ミシュラン・パイロット・スポーツに換えたほうがいいですよ~。サイズがあれば、4でもいい。できれば、梅雨が来る前に。

ミシュランは高い、というのは都市伝説

もう一方の新商品の「プライマシーSUV+」は、近年のSUVブームを背景に登場したSUV専用コンフォート・タイヤである。

日本ミシュランタイヤによると、日本市場におけるSUVのシェアは2017年の13%から2021年は23%に増えている。もっと多いと思った……というのが筆者の個人的感想だけれど、問題は国産SUVの新車装着タイヤの83%がサマー・タイヤになっていることだ。

ミシュランの従来のこのセグメント用の「プレミアLTX」はM+S(マッド&スノー)で、筆者なんぞはSUVにはM+Sがよく似合う。と思うけれど、時代遅れの考え方なのである。

さてそこで、新たにプライマシー・シリーズに加わったSUV+の特徴は次の3つとされる。

1.安心感をもたらすドライ&ウェット性能
2.快適なドライブを演出する優れた静粛性
3.SUVを支える高速安定性とハンドリング性能

テスト車としてトヨタ「ハリアー・ハイブリッド」(2.5リッター直4+電気モーター)が3台用意されており、プレミアLTX、プライマシーSUV+、そして某国産タイヤがそれぞれ装着されて、私たちを待っていた。サイズはすべて225/65R17である。

テストその1は、外周路を走行し、レーン・チェンジとスラロームをおこなう。ただし、3つのタイヤのちがいは、静粛性も含めて、しかとはわからなかった。従来のプレミアLTXに較べ、新しいトレッド・ブロック・デザインによりパターン・ノイズを約28%低減しているということだけれど、雨でウェット路面だったから、パターン・ノイズはおのずと低くなる。

テストその2は、ウェット・ブレーキング路で行った。スタート地点からアクセルを全開にし、80km/h以上でブレーキング・ポイントに突入、そこでフル制動をかけ、制動距離の違いを見る。これを2回ずつ試みた筆者のデータは、プレミアLTXが27.8mと28.5m、プライマシーSUV+が25.3mと25.9mだった。タイヤの違いで、2m以上も制動距離が短くなったのだ。

ミシュランは同様のテストをホンダ「CR-V」で試み、旧型のプレミアLTXで31.18m、新型のプライマシーSUV+で28.43mというデータを得、新型は旧型比で約8.2%短く止まることができる、と主張している。

ここでも驚いたのは某国産SUV用タイヤの結果だ。それぞれ31.0mと30.8mで、プライマシーSUV+とは5m以上の差がつき、しかも急制動時にステアリング・フィールが曖昧になって、滑っている感じ。クルマがちょっと斜めになりそうになったりして、スタビリティも劣っていた。

このテスト結果を踏まえて、個人的に、少なくともトヨタ・ハリアーのオーナー諸氏に声を大にして申し上げたい。ミシュラン・プライマシーSUV+に交換したほうがよいですよ~。できれば、梅雨が来る前に。

なお、SUV用スポーツ・タイヤとして、ミシュランはすでにパイロット・スポーツ4SUVというタイヤをラインアップしている。今回のプライマシーSUV+が加わったことで、スポーツ・タイヤは「パイロット・スポーツ」、コンフォート・タイヤは「プライマシー」、M+Sタイヤは「クライメート」というシリーズの構成をよりわかりやすくしようとしているのだ。

最後に、パイロット・スポーツ5はフランス、中国、日本で共同開発されており、日本市場ではサイズによってタイ、もしくは中国製が導入される。コストダウンのため、というより、地産地消につとめることで温暖化ガスの排出を抑える、というのがその狙いとされる。

パイロット・スポーツ5は本年1月28日に発表され、3月8日から順次発売になっている。サイズは17インチから21インチまで、全部で43サイズ。

プライマシーSUV+は、本年2月25日発表で、5月19日から順次発売となる。サイズは15インチ から20インチまで全28サイズ。

価格はどちらもオープン。日本ミシュランタイヤのひとによれば、ミシュランは高い、というのは都市伝説に過ぎず、確かにミシュランはプレミアムではあるけれど、他社のタイヤに較べて、ビックリするような差があるわけではないという。

もしもタイヤを交換する機会があったら、今度はミシュランにしよう。試乗会に参加して、あらためてそう思った私でした。

文・今尾直樹

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「AI EV時代のトヨタ」めざすファラデー・フューチャー、新型EV『FX』最初の試作車が完成
「AI EV時代のトヨタ」めざすファラデー・フューチャー、新型EV『FX』最初の試作車が完成
レスポンス
待ってろスイスポ!!! FF1.3Lターボのピリ辛ボーイズレーサー[新型GRスターレット]は若者にも手が出しやすい250万円で登場か!?
待ってろスイスポ!!! FF1.3Lターボのピリ辛ボーイズレーサー[新型GRスターレット]は若者にも手が出しやすい250万円で登場か!?
ベストカーWeb
F1関係者への入国拒否が続くラスベガス。角田裕毅も足止め「危うく帰国させられるところだった。来られてラッキー」
F1関係者への入国拒否が続くラスベガス。角田裕毅も足止め「危うく帰国させられるところだった。来られてラッキー」
AUTOSPORT web
Team HRC、S耐の2年計画を完遂。初期メンバーの武藤「楽しい環境がいつまでも続けばいいな」
Team HRC、S耐の2年計画を完遂。初期メンバーの武藤「楽しい環境がいつまでも続けばいいな」
AUTOSPORT web
“45年ぶり”マツダ「サバンナGT」復活!? まさかの「オープン仕様」&斬新“レトロ顔”がサイコー!ワイドボディも魅力の「RXカブリオレ」とは?
“45年ぶり”マツダ「サバンナGT」復活!? まさかの「オープン仕様」&斬新“レトロ顔”がサイコー!ワイドボディも魅力の「RXカブリオレ」とは?
くるまのニュース
“ボロボロ”のランボルギーニ「ミウラ」に価値はある? マニア垂涎“ジャンクヤードのガラクタ”がオークションに登場! 気になる価格は?
“ボロボロ”のランボルギーニ「ミウラ」に価値はある? マニア垂涎“ジャンクヤードのガラクタ”がオークションに登場! 気になる価格は?
VAGUE
なんとハイブリッド仕様も!! クラシックなボディに6気筒を押し込んだ[クラウン]セダンがスゴすぎる
なんとハイブリッド仕様も!! クラシックなボディに6気筒を押し込んだ[クラウン]セダンがスゴすぎる
ベストカーWeb
ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
WEB CARTOP
「すごい多重事故…」 関越道で「トラックなど3台が衝突」発生! 2車線が一時通行規制で「通過時間70分」の大渋滞 圏央道も混雑
「すごい多重事故…」 関越道で「トラックなど3台が衝突」発生! 2車線が一時通行規制で「通過時間70分」の大渋滞 圏央道も混雑
くるまのニュース
SS12は“安全上の問題”でキャンセルに。SS11を終えた時点でトヨタ勝田貴元は総合3番手|WRCラリージャパンDAY3午前
SS12は“安全上の問題”でキャンセルに。SS11を終えた時点でトヨタ勝田貴元は総合3番手|WRCラリージャパンDAY3午前
motorsport.com 日本版
コンチネンタル、車内の生体情報を検知する革新的ディスプレイ発表へ…CES 2025
コンチネンタル、車内の生体情報を検知する革新的ディスプレイ発表へ…CES 2025
レスポンス
[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
ベストカーWeb
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
motorsport.com 日本版
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
くるまのニュース
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
バイクのニュース
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
レスポンス
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
ベストカーWeb
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レスポンス

みんなのコメント

22件
  • ミシュランは、ええよ。
    グリップするのに耐久性が高い。
    購入価格は高いけど、結局、コストパフォーマンスが高い。
  • トヨタは足廻りのセッティングが自分達ではどうしようもなくなったら、すぐにミシュランに頼る。
    どうでもいいクルマはエコピアやEC300を買い叩いて新車装着する。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

202.9251.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

39.9450.0万円

中古車を検索
カローラの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

202.9251.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

39.9450.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村