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なぜミシュランのタイヤは魅力的なのか?

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なぜミシュランのタイヤは魅力的なのか?

ミシュランの新しいタイヤをテストした今尾直樹が、あらためて同ブランドの魅力を考えた!

殿堂入り

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3月中旬、日本ミシュランタイヤが新商品の試乗会を栃木県栃木市にある駆動系部品メーカーのプルーピング・グラウンドで開いた。新商品は2種類。スポーツ・タイヤの「パイロット・スポーツ5」と、SUV用コンフォート・タイヤの「プライマシーSUV+」である。

パイロット・スポーツ5用の試乗車にはトヨタの「カローラ・スポーツ(1.8リッター直4+電気モーターのハイブリッド)」が用意されており、筆者はその乗り心地の滑らかなことに内心、舌を巻いた。雑味がなくて、じつにスッキリしている。う~む。こんなに気持ちのよい乗り心地のカローラは乗ったことがない。

じつはこの印象、試乗コースの確認のためにカローラの助手席に乗せてもらって下見したときに得たもので、しかもこのときのカローラが履いていたタイヤはパイロット・スポーツ5ではなくて、先代の同4だったというのに……。ミシュラン、おそるべし!

パイロット・スポーツはフランスの大手タイヤ・メーカーにして名門ミシュランがモータースポーツ活動から得た技術をフィードバックしてつくっているストリート用スポーツ・タイヤで、新しいパイロット・スポーツ(PS)5は、2016年に発売されたPS4の新型、ニュー・タイプになる。クルマでいえば、フルモデルチェンジで、トレッドのデザイン、構造、コンパウンドから、すべてが新しい。

ちなみに、PS4(プレステじゃないですよ~)は発売以来、日本最大級のクルマSNSサイト「みんカラ」の投稿にもとづくパーツ・オブ・ザ・イヤーのタイヤ(スポーツ)部門で年間大賞1位を3年連続で受賞、2020年と2021年には年間大賞「殿堂入り」を果たしている。

「殿堂入り」とは、「過去数年間で不動の支持を集め続けたパーツに送られる称号」で、一般からの投稿にもとづく、とされるこの賞の「殿堂入り」に選ばれたことを日本ミシュランタイヤは大いなる栄誉だと考えている。

某国産タイヤとの違いにビックリ!

PS4で高く評価されているのは、ドライはもちろん、ウェットでのグリップ、ハンドリング、そして乗り心地であり、見た目のカッコよさ出そうで、6年ぶりの全面改良にあたり、性能面ではこちらの2点を重視したという。

1.高いグリップ力がもたらすウェット&ドライ性能
2.走りを愉しむ優れた操縦安定性

これらふたつのポイントをプレスに確かめてもらうべく、ミシュランはテスト車としてカローラ・スポーツを3台用意、それぞれにPS4、PS5、それに某国産メーカーのスポーツ・タイヤを装着し、われわれを待っていた。タイヤ・サイズはいずれも225/40R18である。

1を確認するテストは、プルービング・グラウンドのウェット・ハンドリング路である。日本ミシュランタイヤのテストによると、このプルービング・グラウンドのウェット・ハンドリング路でPS5を履いたトヨタ「86」のラップ・タイムは、PS4と較べて、最速で約1.7%、平均で約1.5%短縮。タイヤを換えるだけで、60秒のコースでおよそ1秒速くなったという。

これは新しいトレッドのデザインと、シリカをより多く配合した新しいコンパウンドによるもので、ドライ路面のタイムはさほど変わっていない。と聞くと、なあんだ、と筆者なんぞは思ってしまうけれど、ドライ性能を落とすことなく、ウェット性能を上げているのだから、スゴイですね~という話だ。

実際、PS5のウェット性能は確かにPS4を上回る印象だった。当日は小雨が降っており、散水装置の活躍は目立っていないのにハンドリング路の路面は濡れていた。PS4で走ったときは、比較の対象がないので、コースのむずかしさに頭を抱えるのみだったけれど、PS5に乗り換えるとビックリ! PS4よりステアリング・フィールはよりしっかりしていて、アンダーステアが出ない。だからアクセルを開けられる。接地感がより高まっていて、アクセルをより開けているからだと思うけれど、PS4のときよりトラクション・コントロールの作動を示す警告灯の点灯回数が増え、ABSの作動は減っていた。

でも、筆者がホントに驚いたのは、ミシュラン主催の試乗会のため、ここでは名前を明かすことができない某国産メーターのスポーツ・タイヤのダメさ加減だった。ステアリング・フィールはあいまいになり、ブレーキはすぐにABSが作動して減速Gが出ない。乗り心地も、まるで別のクルマ、厳密にいえば、たしかに別の個体ですけれど、微小な上下振動が感じられた。

あくまで筆者個人の印象では、PS4からPS5へ乗り換えたときより、ミシュランから某国産タイヤに乗り換えたときの違いのほうが大きい。ちょっとおおげさに表現すると、ミシュランと某国産タイヤとでは、同じカローラでも1世代違うぐらいに感じる。

そんな感想を日本ミシュランタイヤの方に伝えたら、「そうかもしれないですね」ということだった。というのも、PS5はフルモデルチェンジといっても、先代PS4の延長線上にある。対して、某国産タイヤは某国産タイヤ・メーカーの考え方、思想・哲学によってつくられているからだ。

外周路を使ってのレーン・チェンジとパイロン・スラロームで操縦性を確認するテストでは、正直、筆者にその違いはよくわからなかった。なんとなく、PS5のステアリング・フィールとしっかり感がいちばんだった、とはいえる。急激な荷重変化に対しても、接地面のカタチをなるべく丸く保つケーシングのつくり方の効果、だったのかもしれない。

“映える”タイヤ

3つめのポイントとしてミシュランが主張しているPS5の「見た目の良さ」というのは、「フルリング プレミアムタッチ」というサイド・ウォールのデザインを指している。右手をあげるミシュランマン、昔風にいうとムッシュ・ビバンダムのマークとMICHELIN PILOT SPORT 5の文字が浮き出ていて、地の部分の黒が一部帯状に、ほかの部分の黒よりも濃くなって、ほぼ1周している。

これは、金型加工技術によって表面に細かい凸凹をつけて、光を反射しないようにしているのだそうで、光を反射しないと、ひとの目には黒く見える。それも、ベルベットのような光沢と高級感がある。PS5はSNS時代を意識した“映える”タイヤなのだ。

トレッドに設けられた小さな3つの穴も要注目のアイディアである。携帯の電池の残量表示をヒントにしたというこの穴は、摩耗が進むにつれて外側から消えていく。従来のスリップサインも設けられているけれど、「ウェアー・トゥ・チェック」と名づけられたこの3段階表示によって、ユーザーはタイヤをより長く、安全に使用できる。とミシュランは主張している。なるほど、これなら素人にもわかりやすい。

げにタイヤとは恐ろしきものである。黒い魔性の物体、と申し上げても過言ではない。だって、あくまでミシュラン主催の試乗会での個人の印象ですけれど、ホントに違う。多少コストが高くなっても、自動車メーカーはミシュランを純正装着すべきだ、とすら筆者は思った。それだけで、クルマの上質さが向上するのだから、開発費のことを考えたらメチャクチャ安い。

少なくとも今回のテスト車と同じカローラ・スポーツのオーナー諸兄には声を大にしてお伝えしたい。ミシュラン・パイロット・スポーツに換えたほうがいいですよ~。サイズがあれば、4でもいい。できれば、梅雨が来る前に。

ミシュランは高い、というのは都市伝説

もう一方の新商品の「プライマシーSUV+」は、近年のSUVブームを背景に登場したSUV専用コンフォート・タイヤである。

日本ミシュランタイヤによると、日本市場におけるSUVのシェアは2017年の13%から2021年は23%に増えている。もっと多いと思った……というのが筆者の個人的感想だけれど、問題は国産SUVの新車装着タイヤの83%がサマー・タイヤになっていることだ。

ミシュランの従来のこのセグメント用の「プレミアLTX」はM+S(マッド&スノー)で、筆者なんぞはSUVにはM+Sがよく似合う。と思うけれど、時代遅れの考え方なのである。

さてそこで、新たにプライマシー・シリーズに加わったSUV+の特徴は次の3つとされる。

1.安心感をもたらすドライ&ウェット性能
2.快適なドライブを演出する優れた静粛性
3.SUVを支える高速安定性とハンドリング性能

テスト車としてトヨタ「ハリアー・ハイブリッド」(2.5リッター直4+電気モーター)が3台用意されており、プレミアLTX、プライマシーSUV+、そして某国産タイヤがそれぞれ装着されて、私たちを待っていた。サイズはすべて225/65R17である。

テストその1は、外周路を走行し、レーン・チェンジとスラロームをおこなう。ただし、3つのタイヤのちがいは、静粛性も含めて、しかとはわからなかった。従来のプレミアLTXに較べ、新しいトレッド・ブロック・デザインによりパターン・ノイズを約28%低減しているということだけれど、雨でウェット路面だったから、パターン・ノイズはおのずと低くなる。

テストその2は、ウェット・ブレーキング路で行った。スタート地点からアクセルを全開にし、80km/h以上でブレーキング・ポイントに突入、そこでフル制動をかけ、制動距離の違いを見る。これを2回ずつ試みた筆者のデータは、プレミアLTXが27.8mと28.5m、プライマシーSUV+が25.3mと25.9mだった。タイヤの違いで、2m以上も制動距離が短くなったのだ。

ミシュランは同様のテストをホンダ「CR-V」で試み、旧型のプレミアLTXで31.18m、新型のプライマシーSUV+で28.43mというデータを得、新型は旧型比で約8.2%短く止まることができる、と主張している。

ここでも驚いたのは某国産SUV用タイヤの結果だ。それぞれ31.0mと30.8mで、プライマシーSUV+とは5m以上の差がつき、しかも急制動時にステアリング・フィールが曖昧になって、滑っている感じ。クルマがちょっと斜めになりそうになったりして、スタビリティも劣っていた。

このテスト結果を踏まえて、個人的に、少なくともトヨタ・ハリアーのオーナー諸氏に声を大にして申し上げたい。ミシュラン・プライマシーSUV+に交換したほうがよいですよ~。できれば、梅雨が来る前に。

なお、SUV用スポーツ・タイヤとして、ミシュランはすでにパイロット・スポーツ4SUVというタイヤをラインアップしている。今回のプライマシーSUV+が加わったことで、スポーツ・タイヤは「パイロット・スポーツ」、コンフォート・タイヤは「プライマシー」、M+Sタイヤは「クライメート」というシリーズの構成をよりわかりやすくしようとしているのだ。

最後に、パイロット・スポーツ5はフランス、中国、日本で共同開発されており、日本市場ではサイズによってタイ、もしくは中国製が導入される。コストダウンのため、というより、地産地消につとめることで温暖化ガスの排出を抑える、というのがその狙いとされる。

パイロット・スポーツ5は本年1月28日に発表され、3月8日から順次発売になっている。サイズは17インチから21インチまで、全部で43サイズ。

プライマシーSUV+は、本年2月25日発表で、5月19日から順次発売となる。サイズは15インチ から20インチまで全28サイズ。

価格はどちらもオープン。日本ミシュランタイヤのひとによれば、ミシュランは高い、というのは都市伝説に過ぎず、確かにミシュランはプレミアムではあるけれど、他社のタイヤに較べて、ビックリするような差があるわけではないという。

もしもタイヤを交換する機会があったら、今度はミシュランにしよう。試乗会に参加して、あらためてそう思った私でした。

文・今尾直樹

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みんなのコメント

22件
  • ミシュランは、ええよ。
    グリップするのに耐久性が高い。
    購入価格は高いけど、結局、コストパフォーマンスが高い。
  • トヨタは足廻りのセッティングが自分達ではどうしようもなくなったら、すぐにミシュランに頼る。
    どうでもいいクルマはエコピアやEC300を買い叩いて新車装着する。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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