■なぜプリウスベースのキャンピングカーを制作?
キャンピングカーといえばトラックをベースにした「キャブコン」、ハイエースのようなワンボックスがベースの「バンコン」、軽自動車ベースの「軽キャンパー」などが定番です。
そんななか、ハイブリッド車の代名詞ともいえるトヨタ「プリウス」がキャンピングカーに変身を遂げています。なぜ、プリウスが選ばれたのでしょうか。
【画像】まるで宇宙船だ! プリウスのキャンプ仕様が登場!(15枚)
キャンピングカー仕様のプリウスは、先代となる3代目(30系)をベースに制作されています。
FRP一体型のシェルを搭載した車中泊が可能なボディとして生まれ変わっており、「プリウスリラックスキャビン」と名付けられています。
製作したのはキャンピングカーをはじめとした、多種多様な車両を手掛ける「かーいんてりあ高橋」です。
クルマの構造は、もともと取り付けられているハッチバックドアは外されているものの、車体そのものはそのままとなっています。
ボディサイズは、全高・全長が3ナンバーの範囲内で、全高は2110mmに抑えられているため一部の立体駐車場も利用することが可能です。
クルマのルーフ部分に取り付けられている、かたつむりの殻のようにも見えるのは2階部分。1階部分と合わせて大人4名から5名が就寝できるスペースが確保されています。
また、室内で着替えもできる空間がセットされており、家族でのキャンプにピッタリのサイズです。
デザインも独特で、今までのキャンピングカーではあまり採用されたことがない流線型のボディデザインが特徴です。
さらに、既存の先代30系に積まれているニッケル水素バッテリーから交流100V電源を取り出すこともできます。
スイッチを押すだけの簡単通電で、最大出力1500Wを超えない器具であれば電子レンジでも利用可能です。
なお、先代30系の燃料タンクの容量は45リッターとなり、燃料満タンで63.6kWh使用可能。1000wの炊飯器を1時間使用した場合でも約63回使用できる計算です。
このようにクルマ1台で一般家庭の約1週間分の電源が供給され、どんな場所にいても安心して家電が使えるのはプリウスならではのメリットといえるでしょう。
また、キャンプで家電が使えるだけでなく、万が一自宅の電気が止まってしまったときでも、予備電源として利用が可能です。
かーいんてりあ高橋の計測では、リッターあたり18kmを余裕で走ることができるため、燃費を気にせずに出かけられるキャンピングカーとして最適な選択肢といえます。
プリウスリラックスキャビンの製作背景について、かーいんてりあ高橋の代表取締役である高橋氏は、以下のように語ります。
「プリウスのハイブリッドシステムは非常に優秀で、「エンジンが作動していなくても車両の電源がONであれば、エアコンが動きます。
この部分に最初に着目して、キャンピングカーとして利用できないかを考え始めました。
ただ、軽量化のためにボディにカーボンが使われていることもあり、ボディカットを施すと安全基準を満たせません。
そこでリアハッチを取り外しただけで、ボディを一切カットしない構造で作ることになりました。
現行プリウス(4代目)は、標準機能としてバッテリーから100V電源の取りだしができるようになりましたが、リラックスキャビンは先代の3代目(30系)の時点で実現しており、未来を先取りしたクルマといえるかもしれません。
反響に関して日本はもちろんですが、海外からの反響のほうが多かったです。
アメリカ、オーストラリアのほか、モンゴルの人からも『売ってほしい』と声を頂いています」
※ ※ ※
また、「移動販売車」としても利用可能で、トレーラータイプの移動販売車ならプリウスがけん引役となり、そのまま発電機として利用することもできます。
発電機と違ってずっとエンジンが回るわけでなく、満充電になれば自動的にエンジンが停止になることから、騒音・環境面でも優れています。
この、プリウスリラックスキャビンは、単なるキャンプを楽しむツールとしてだけではなく、「街乗り」「ビジネス」「災害対策」と多様な使い方ができます。
経済的にもスペース的にも2台目のクルマを持つことが難しい現代において、「1台で全てをまかなえるクルマ」を目指して開発されたのが「プリウスリラックスキャビン」です。
3ナンバーに収まるうえに燃費が良いことで街乗りも軽々とこなすことができ、キャンプの際は大人4人がゆったりと足を伸ばして寝られるスペースが確保されていることから、キャンプや日常生活、万が一の災害時までマルチに活躍できる1台といえます。
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