タイプRほどの刺激は欲しくない走り好きにオススメ
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ホンダ シビックRS」。ホンダを代表する名車「シビック」、同車を愛するファンにはたまらないグレード「RS」が現行モデルにも登場します。プロトタイプに試乗したレポートをお届け。タイプRとも違う、RSの走りとは?
ホンダに10カ月だけ生産された「シビックRS」があった! エンジン屋の名にふさわしいパワフル&低燃費なパワーユニットとは?【国産名車グラフィティ】
RSの名に恥じない仕上がりに
ホンダ「シビック」のマイナーチェンジでもっとも興奮したのは、「RS」グレードの復活だ。
1972年誕生の初代シビックに、走りの性能を際立たせたRSが存在していた。そのポジションを現行ではタイプRが踏襲しているように思われている。だが、タイプRは超激辛スポーツにまで昇華し、ボディサイズも拡大している。それを過剰すぎると持て余してしまい、シビックが描くスポーツの世界に踏み切れないユーザーも少なくないと聞く。
ターゲットはそこだ。タイプRほどの過激な性能は求めないものの、標準グレードで満足できない、いわば「ちょうどいい」スポーツ性能を盛り込んだのがRSというわけなのだ。
フロントグリルは「アコード」風の台形になり、より精悍な顔つきになった。ディテールはほとんどブラック化している。インテリアもブラックを基調としており、パイピングはレッド。いかにも走りのモデルであることを主張する。
搭載するエンジンは直列4気筒1.5Lターボであり、6速MTと組み合わされる。ハイブリッドの設定はない。182psの最高出力と240Nmの最大トルクに変更はない。
そう、ここまでの情報から想像できるのは、動力性能や操縦性はこれまでの標準のシビックのレベルであり、アピアランスだけを強調した「似非スポーティモデル」。ただ雰囲気だけをアグレッシブにしただけの軟弱モデルだと……。だがホンダは、数値に現れない特性を徹底的に磨き上げたのだ。
走りはじめた瞬間に驚かされたのは、エンジンレスポンスが鋭いこと。アクセルペダルの踏み込みに対して軽やかにパワーがみなぎる。スペック上での差はないが、パワーアップしたかのような印象だ。しかも、アクセルオフでの回転のドロップが素早い。フライホイールの回転慣性重量を低くしたようだ。
従来モデルで不満だったのはエンジン回転の鈍さだった。回転の上昇もドロップも緩慢だったから、走りが興醒めだった。今回のRSではそこにメスが入れられた。回転計の針が躍動する感覚は、RSの名に相応しい。
ホンダの6速MTは、世界一ではないかと思うほど小気味いい。ストロークが少なく節度感がある。スパスパと決めると快感が走る。その喜びを、一層ダイレクトに味わえるようになった。感動的ですらある。
開発陣に聞けば、フライホイールを軽くしたばかりか、エンジンマッピングにも手を加えている。エミッションとのバランスを探るのに苦労したという。ただ、軽量素材に変更しただけではなく、深いところまで細工の手は行き届いているのである。
エンジンレスポンス以外にも気持ちよさを徹底追求
ホンダは2040年までに、すべての内燃機関からの撤退を表明している。だが、それまでにはまだ16年もの期間がある。内燃機関開発の手を緩めることはせず、まだまだガソリンエンジンの持つ走りの楽しさを追求してくれているのだ。
そこまで気持ちが走っているのだから、操縦性関係にも力が込められているのはあきらかだ。車高が5mmダウンしたばかりか、コイルスプリングやスタビライザーのバネ条数を高めている。
地を這う感覚は一層強くなった。前後にグッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2の235/40R18が組み込まれているが、そのスポーティタイヤがスキール音を上げる直前まで攻め込んでも、不自然なロール姿勢に陥ることはなかった。つねにフラットライドをキープしているのである。
ダンバーの減衰力も数値には変更はないものの、径の拡大やバルブの変更によって、初期の応答性を高めたという。どうりでシャープに反応するものだと感心した。それよりも際立っていたのは、ステアリング応答性が鋭いことだ。コーナを前にややアップテンポに切り込むと、曖昧さがなく切り込んでいく。ことさら身構えずに切り込んだとたん、ハッとしてしまった。
その理由はフロントコンプライアンスブッシュのラバーを液封式からソリッドに改めたためだ。ステアリングのトーションバーも、レートで60%も強化させたらしい。
不思議に感じたのは、アクティブサウンドコントロールが組み込まれていないことだ。日ごとに強化される騒音規制によって、そもそもエキゾーストサウンドは大人しくなる一方である。シビックRSもエンジンレスポンスがシャープになり、フットワークも軽快になった。できればそれに見合うサウンドがほしいところである。
ちなみに、乗り心地に悪化の気配はない。たしかにホンダの狙い通り、RSはタイプRではトゥーマッチと感じるユーザーにとって理想的である。日常的に味わえるホンダスポーツの誕生を歓迎したい。
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みんなのコメント
パワーウエイトレシオではBRZ/GR86どころかスイスポにすら負け1.4のコンパクト以下では話にならない。
それにシビックの馬力は182馬力トルク24.5kgf・mだが先代CR-Vも同じ1.5ターボだったがレギュラー仕様なのに190馬力トルク24.5kgf・mで、ハイオク仕様のシビックよりも馬力が出ている。よって無駄なハイオク仕様だ。
RSはレスポンスやハンドリングが向上しても肝心な出力そのままでは亀のまま。
それだけでなくFK7の最大トルク発生回転数がMT(1900~5000rpm) CVT(1700~5500rpm) に対しFL1は(1700~4500rpm) とトルクバンドは狭くなって退化している。
しかもCVTの市街地とMTの高速以外の燃費が悪くなっているオマケ付きだ!