人気モデルや革新的なモデルがあったからこそ今がある
現在、発売されているクルマのなかには、かつてあった先祖の今の姿……ということも多い。言い方を変えれば、そのクルマがあったからこそ、今のクルマがある、ということだ。たとえば、日本に8代目となる新型が上陸したばかりのVWゴルフの先祖が、カブトムシ=VWビートルのように、姿カタチがまったく異なる現代版や、先祖のモチーフをそのまま取り入れた現代版など、進化のし方はさまざまだ。
市場を切り開いた偉大なクルマが敗北! 「後出しじゃんけん」でバカ売れしたクルマ4選
1)ホンダ・フィット
たとえば、日本のコンパクトカー、ファミリーカーを代表するホンダ・フィット。初代は2001年にデビューし、今では4代目となっているが、海外ではホンダ・ジャズという車名で親しまれているホンダの大ヒット作。
プラットフォームはホンダ独創のセンタータンクレイアウトを採用し、コンパクトカーとは思えない広大な室内空間、多彩なシートアレンジ性で人気を博したことは、誰もが知るところだろう。
そんなフィットは突然出てきたわけではない。そもそもは1996年に登場した、シティの後継者となったホンダ・ロゴを先祖に持つコンパクトカーなのである。
シティは楽しさ、デザイン性を重視した、カブリオレまであったコンパクトカーだが、ロゴは一転、コンパクトカーとして本来あるべき姿の実用性重視のクルマに大変身。
3/5ドアのハッチバックボディで、1.3リッターエンジン+CVTを搭載。派生車としてプラットフォームを共用したキャパ、HR-Vも存在した。
ただし、ロゴの人気は思ったほど振るわず、その反省からコンセプトを一新し、センタータンクレイアウトを用いた新プラットフォームを採用するフィットが2001年6月に、ロゴと入れ替わるカタチで華々しくデビューしたというわけだ。
結果、優れたデザイン、走り、パッケージ、シートアレンジ性などが評価され、初代から3代目(~2020年)までの人気ぶりは周知のとおりである(現行4代目もがんばれ!!)。
昭和のクルマ好きなら感涙間違いなしのご先祖さま
2)スバル・フォレスター/XV
雪国で信頼され、定評がある、AWDの駆動方式を貫くスバルには、世界で認められている本格SUVのフォレスターや、インプレッサベースにしてXモードなどを採用し車高を上げたコンパクトクロスオーバーSUVのXVなど、悪路や雪道に強いオールラウンダーが揃っている。
そのフォレスターやXVの先祖と言えるのが、1995年に初代インプレッサをベースに開発された、クロスオーバースタイルのインプレッサグラベルEXだった。
当時、スバルにはレガシイアウトバックの先祖と言えるグランドワゴンも存在したが、そうしたコンセプトの流れにあるのがインプレッサグラベルEXでもあったのだ。
インプレッサスポーツの最低地上高を30mm高め、フロントにはグリルガード、リヤにはスペアタイヤを装着し、クロスカントリーテイストをちりばめ、そして何と言ってもWRXに準じたフラット4のDOHCインタークーラーターボ、220馬力、28.5kg-mのハイスペックユニットを、4速ATまたは5速MTとともに搭載。
今ならかなり面白そうだが、当時のユーザーには何故かあまり響かず、翌年には販売終了。
しかし、時代が違えば人気ぶりはまったく異なるはずで、今のフォレスター、XVにそのコンセプトがしっかりと受け継がれていると思える。
3)トヨタGRスープラ
現在、トヨタを代表するスポーツカー、復活したスープラにも、昭和のクルマ好きなら誰でも知っている先祖がいる。
それはトヨタ・セリカ。トヨタが1970年から2006年まで製造した、国産スペシャルティカーの元祖とも言うべき存在だ。フォード・マスタングのように、フルチョイスシステムを用意したのも初代の人気の秘密で、だるまセリカ、および人気をさらに加速させたリフトバック(2000GT)があった。
じつは、スープラの2代目まではセリカの派生車という位置づけで、北米市場ではスープラと呼ばれていたものの、日本ではスープラではなく、本名(!?)のセリカXXという車名だった。
なぜ、アメリカでスープラに改名したかと言えば、XXは成人映画指定のハードさ(XXX=トリプルエックスとか)を想像させるからである。
そして1986年デビューの3代目セリカ(!?)は、ようやく日本でもスープラと呼ばれるようになったのだ。3代目スープラが3000GTの別名を持つのは、もちろんトヨタ2000GTへのオマージュである。
ちなみに、1980年代は輸出仕様ドレスアップの大ブーム真っ只なかで、2代目セリカXXに北米仕様のSUPRAのエンブレムを張り付けたクルマも多く見られた。
偉大なるご先祖さまを持つ2台と復活で人気爆発の1台
4)ホンダN-ONE
このほかでも有名なのは、ホンダのプレミアムな軽自動車、タイムレスな価値観をコンセプトとするN-ONEだ。
その元祖が、ホンダの乗用車の原点、日本のモータリゼーション、日本のマイカーブームの先駆けとなった、1967年に販売が開始されたホンダ初の量産乗用車/軽自動車、N360(愛称はNっころ)である。
5)トヨタ・ライズ/ダイハツ・ロッキー
また、今、大人気のコンパクトクロスオーバーSUVのトヨタ・ライズ、ダイハツ・ロッキーにも、それほど年代は遡らないものの、トヨタ・ラッシュ、ダイハツ・ビーゴという先祖がいる。
トヨタ・ラッシュとダイハツ・ビーゴは、2006~2016年まで製造され、トヨタ・ライズ&ダイハツ・ロッキーと同様にダイハツが製造し、トヨタがOEM供給を受けるコンパクトSUV。
その当時としては、見た目よりずっと走破性に優れ、ボディ構造に至ってはビルトインラダーフレームモノコックという本格派。運転感覚もけっこう骨太だったと記憶している。
その生産終了から約3年を経て、事実上の後継者として誕生し、時代にあったコンセプトから爆発的な人気を得たのが、トヨタとダイハツがタッグを組んでいるところも変わらないライズ、ロッキーというわけだ。
6)マツダ3
世界的なデザイン大賞を受賞している美しきファストバック、セダンを揃えるマツダ3。その先祖が、直前にあったアクセラだと思うのは間違いだ。
昭和の自動車ファンなら誰でも知っている、ファミリアこそ、マツダ3の遠い先祖ではないか。そのファミリアは元をただせば1963年に初代がデビュー。ただし、アクセラやマツダ3の正当な(!?)元祖と言えそうなのは、1980年に発売され、当時のVWゴルフを思わせる5代目、海外ではマツダ323と呼ばれたBD型だろう。
そう、80年代に大ヒットした(ボクもいすゞ・ピアッツアとともに所有)、ドレスアップブームの火付け役でもあった、第1回日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車のファミリアである。
そのファミリアの後継者が、2003年に登場したアクセラであり、2019年5月にマツダ3として生まれ変わったというわけだ。
ただし、かつてのファミリアが海外でマツダ323と呼ばれていたように、アクセラも海外ではマツダ3というネーミングだったから、現在のマツダ3の先祖は、間違いなくアクセラ、そしてその先祖の、時代を大きく遡ったファミリアということになるだろう。
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なんとなく見た目も似てる?