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新型ロールス・ロイス・ファントム試乗 類を見ない高級感と高品質 不動の最高峰

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新型ロールス・ロイス・ファントム試乗 類を見ない高級感と高品質 不動の最高峰

もくじ

どんなクルマ?
ー 自動車のラグジュアリーさを極める8代目
ー 流麗さを増したスタイリングと、充実の機能

初試乗、ボルボXC40 制約多くも工夫で克服 小型SUVをリードできると判断

どんな感じ?
ー 居心地が悪く感じるほどの静寂
ー 0-100km/h5.1秒でも、エンジンの存在は彼方
ー すべてが息を呑むほど素晴らしい
ー 幽霊のように引き寄せられる中毒性

「買い」か?
ー たぐいまれで申し分のない、究極の1台

スペック
ー ロールス・ロイス・ファントムのスペック

どんなクルマ?

自動車のラグジュアリーさを極める8代目

8世代目となったロールス・ロイス・ファントムは昨年の10月に全世界へと発表された。

このクルマこそ、自動車のラグジュアリーさを極めた最高峰の存在。この言葉に、だれも疑問は持たないのではないだろうか。

ロールス・ロイスによると、車内のノイズは旧型と比較して75%以上も軽減しているという。そもそも旧モデルでも、まったく騒がしいものではなかったけれど。

その静寂によって、恐らく運転感覚の質も一層優れたものになっているだろう。驚くことに、かなり多くの割合でファントムのオーナー自らが、大きな3スポークのステアリングホイールを握っているため、これは読者が想像する以上に重要なことなのかもしれない。

エクステリアデザインも、明らかに進化はしている。しかし、クルマ全体が発する荘厳な印象には大きな違いはなく、その姿は国立歴史博物館に収蔵できそうにも思える。

高まる期待を抑えつつ、クルマの観察を始めてみる。

流麗さを増したスタイリングと、充実の機能

ファントムのスタイリングは全体的に柔らかみを帯びたデザインとなり、緊張感が漂うハンドポリッシュのパンテオングリルは、さらに大型化された。滑らかさを増したボディ全体のデザインにも、より自然に調和しているように感じられる。その先端に羽ばたく女神、スピリット・オブ・エクスタシーは、先代よりも路面から15mmほど高い位置に備え付けられている。

サスペンションは、物理的な入力だけでなく、フロントウインドウに搭載されたカメラで路面を解析し、1秒間に100万回もの計算による制御にも応じて動作する。8速ATは衛生からのデータを用いて予測的に変速に備え、大径タイヤの内側にはロードノイズを抑えるためにスポンジ層が付け加えてある。

クルマ1台に対して40万ポンド(6000万円)も支払うのだから、これくらいの機能は盛り込まれていても然るべき、とも思えるけれど。

このフラグシップモデルにはすでに海外で試乗済みで、ロールス・ロイスが目指したという極めて高い乗り心地品質を、実際に英国の道で確かめることを心待ちにしていた。

その仕上がりはどれほどなのか、実際の走りで確かめてみよう。

どんな感じ?

居心地が悪く感じるほどの静寂

われわれがクルマを評価するなかで、「魂に響く」といった感覚を語るとき、内燃機関が発する音質を軸のひとつとする場合が多い。また満足できるシャシーの身のこなしを得ているかどうか、充分な経験にもとづいて評価することも重要な要素となる。そしてクルマへ地道に改良を加えて、優れた水準にまで高めていくことは困難な作業だと思うが、それを目の当たりにする機会は少ない。

このファントムこそ、特別な世界観で、それらを満たした存在だ。

ツインターボを搭載したV12エンジンは、目覚めていることに気づかないほど静かに、650rpmという低回転でアイドリングをする。

クルマに乗り込んだら、ボタンを押せばドアが閉まり、外界から遮断される。一般的なドアハンドルが備わっていないのだ。

8代目のファントムへと乗り込むと、信じられないほどの静けさで居心地が悪く感じてしまうほど。まるで、目的地へ向かう列車にちゃんと乗っているのか、向かいのホームを出発する列車と間違って取り残されたのか、不安にかられるように。

スロットルレスポンスは少し緩慢に感じられるかもしれないが、許せてしまう範囲だろう。

0-100km/h5.1秒でも、エンジンの存在は彼方

クルマが動き出すと、6.75ℓエンジンの存在ははるか彼方に感じられる。ちなみに新しいファントムでは、ドライブシャフトを追加して、フロントタイヤを駆動させることも可能となった。

メカニカルな要素は目につかないように配慮しているためか、タコメーターも備わらない。その代わりに、どの程度パワーに余裕があるのかを教えてくれるメーターが付く。

普通に運転する範囲なら、潜在能力の30%も使えば充分な走りを披露してくれる。しかし、40mmはある分厚いフロアカーペットめがけてアクセルペダルを踏み込めば、0-100km/h加速を5.1秒でこなす。

この数値はわれわれのお気に入りのホットハッチ、ホンダ・シビック・タイプRに勝る加速力だが、1700rpmで91kg-m以上ものトルクを発するのだから当然だろう。

今回、ロールス・ロイスはねじれ剛性を高めた、オールアルミニウムによる新しいスペースフレーム・プラットフォームを発表した。そして、アダプティブダンパーとエアサスペンション、アクティブアンチロールバーによって支えられる。

加えて4輪操舵も装備しているが、俊敏性を高めると言うよりも、全長5.76mに及ぶ大きなボディの、狭い道での取り扱いを改善する目的だと言っていい。

難敵と言える英国の道だが、ファントムはどう立ち向かうのか。

すべてが息を呑むほど素晴らしい

クルマに乗り込み走り出せば、幅が広くフラットなシートが意味することに、気づくはず。余計なサイドサポートが備わらないのは、それが必要ないからだ。

走行中、絶え間なく動き続けているはずのステアリングやサスペンション、エンジンだが、感動的なほどにその存在感は薄い。まったく無駄のない動きと、極めて低回転でアイドリングをするエンジンがもたらす落着き。あなたがドライバーになったとしても、リアシートで望まれるような運転を正確に実現できるだろう。

ステアリングフィールは軽快で、偏平タイヤを履いているが、狭い道でも自信を持って運転するのに充分な正確性を持っている。この巨体だから、片側1車線の道路はすべて狭く感じてしまうのだけれど。

ステアリングホイールに指先を添えて操作すれば、まったく不安感なく狙った通りのラインでクルマをコントロールすることができる。穏やかな気持で進行方向の道路の状況を予測すればいい。自動車教習所で教わった通りに。

すべてが息を呑むほど素晴らしい仕上がりを見せるロールス・ロイス・ファントムだが、不満を上げるとすれば、外界と隔離されてしまうような感覚かもしれない。たとえスピリット・オブ・エクスタシーから白く渦を巻くのが見えるようなスピードで走っていても、中に乗っている限り声を大きくする必要はまったくない。

まるで、映画で別次元の世界を傍観しているかのように、車窓の景色が感じられるだろう。

幽霊のように引き寄せられる中毒性

ロールス・ロイス・ファントムと比較してしまうと、メルセデス・ベンツSクラスの乗り心地は文化的に劣って感じられるし、ベントレー・ミュルザンヌのサスペンションが生む縦方向の動きは、詰めが甘いように思える。

どちらのクルマも、ドライバーにとってはより魅力的な素質を備えているし、ファントムよりも安価でもある。しかし、自分が幽霊(ファントム)にでもなったかのように、ファントムに惹きつけられてしまうという、パラドックス。

総量130kgにも及ぶ吸音材を用いた車内の静寂性は類を見ないレベルで、高速道路を飛ばしていても、歩いているような速度感覚に陥ってしまう。怖いのだが、これに中毒性があるのだ。

物理的にも電子制御の面でも、クルマに乗る、ということに関して必要最低限のものをドライバーやパッセンジャーに対して表面化させ、不要な情報や複雑な操作は一切求められない。ひとに対してすべての操作を要求する、普通のクルマとはまったく異なる次元だし、大いに歓迎すべき仕上がりだと思う。

ほかにも、8代目となるファントムにはここでは書ききれないほどの要素があるけれど、それはフルバージョンのロードテストに持ち越そう。いくつか気になる点もあり、それにもしっかり触れる予定だ。

「買い」か?

たぐいまれで申し分のない、究極の1台

素晴らしい素材と機能が盛り込まれ、オールドスクールではあるけれど、オールドファッションではない。惹きつけられないわけがない。

クルマの豪奢さだけでなく、まったく新しいシャシーに注ぎ込まれた技術が、上質な乗り心地、静穏さと洗練性を生んでいる。タイヤを4本付けた乗り物に対して、お金の糸目をつけないなら、ファントムは間違いなく、たぐいまれで申し分のない、究極の1台となる。

極めて上質な高級感と完成度において、新たな高みへと到達した8代目ロールス・ロイス・ファントム。その訴求力は揺るぎないものだと言える。

ロールス・ロイス・ファントムのスペック

■価格 36万ポンド(5400万円)
■全長×全幅×全高 5770×2020×1645mm
■最高速度 249km/h
■0-100km/h加速 約5.1秒
■燃費 7.1km/ℓ
■CO2排出量 318g/km
■乾燥重量 2560kg
■パワートレイン V型12気筒6750ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 571ps/5000rpm
■最大トルク 91.6kg-m/1700rpm
■ギアボックス 8速AT

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