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EVであっても貫かれるポルシェブランドの哲学

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EVであっても貫かれるポルシェブランドの哲学

正直驚いた。まさか、こんなに凄いクルマとは思わなかった。そう、ポルシェ初のピュアEVセダンのタイカンである。

ラッキーにもLAで行われたWCOTYこと世界カーオブザイヤー試乗会で乗れたのだが、完全に予想を上回っていた。

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ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCAN

2019年に発表され、予約注文の受付をスタートさせたタイカン。まず、4S、ターボ、ターボSの3グレードが導入される見込みで、価格は未定となっている。

単純にメッチャクチャ気持ちのいいクルマ、超濃厚ポルシェ風味なのである。加速にせよハンドリングにせよ、ヘタなガソリンポルシェよりポルシェっぽいと思った。電動化で逆に味が研ぎすまされた、と感じるほどに。

私は別のコラムにも書いているが、このタイカンはある種のテスラ・モデルSキラーではあると思う。それはポルシェが初のEVを2ドアスポーツではなく、この大きめの4ドアセダンから作ったことからも予想できるし、ボディサイズは全長4963×全幅1966×全高1378mmで、テスラ・モデルSの全長4970×全幅1964×全高1445mmに酷似。全高のみタイカンの方が低いが、そこには明確なメッセージが見て取れる。「ウチの方が運動性能は高いぞ」という。

ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCAN

車内には新しくタイカン用に開発されたインターフェースを備える。タッチ操作や「ハイ、ポルシェ」で起動するボイスコントロールなどが用意される。

小沢は夏に上海で行ったタイカンエンジニアとのインタビューを未だに覚えているが、彼は「テスラはライバルではない」と一応否定した後に「ただ、本物のクルマが欲しいんじゃないでしょうか」と言った。ウチの方が本物のスポーツEVを作れると言わんばかりだ。

そうでなくともテスラの北米を中心とする販売数は物凄く、小型のモデル3が加わってからますます加速。2018年の世界販売はポルシェ25.6万台でテスラ24.5万台。うかうかすると追い越されかねない。この辺りで、どっちが上かハッキリさせてやる! と勝負に出てもおかしくないはずなのだ。

ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCAN

EVモデルのためフロントも積載スペースとして活用できる。トランクスペースはの積載量は81Lとなっている。

微妙に異なるテスラとのアプローチ実際、タイカンはテスラに出来ない事ばかりやっている。まずボディだが前述通り全高は67mm低く、重心高は911と同等レベルというし、フロアの低さはハンパじゃない。小沢が中に座ってみたところ、フロア下に93.4kWhの巨大リチウム電池が収められているとは思えない前後シート床の低さだった。

ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCAN

リアのトランクスペースは366L。全長5m弱のボディサイズを考えるとやや小さ目だが、普段使いではまったく支障がでないレベルだろう。

なによりスタイリングは流線型のポルシェそのもの。大量の電池を収めるためもあってか、箱型デザインになってしまったテスラとは全然違う。

それでいて実用性も高く、前後シートに身長176cmの小沢が余裕で座れる上、トランクスペースはフロントが81L、リアが366Lとなかなか。バカ広いモデルSにはかなわないものの、大型セダンとしては十分合格点だろう。

ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCAN

ブレーキフィールにこだわるポルシェらしく、機械式ブレーキと回生ブレーキの切り替わりなどで違和感はなし。走行モードによっては回生ブレーキを完全にオフにすることもできる。

一方、動力性能は意外にも露骨なテスラキラーではない。当初リリースされた2グレードのうちターボSのオーバーブースト時のピークパワーは761psで、ターボは680ps。同じ前後ツインモーターのモデルSのパフォーマンスモデルは796psだからテスラに負けている。0-100km/h加速も、完全同一条件で測ったデータではないがテスラが2.7秒のところをターボSは2.8秒。これも前述エンジニアにぶつけたところ「アチラは最初だけでしょ」と言った。

そう、EVはモーターやバッテリーの発熱で性能のピークをなかなか維持できない。まさにテスラがそうなのだが、ポルシェ・タイカンは26回連続で0-200km/h加速をしてもパフォーマンスは変わらないというし、先日も24時間連続走行を敢行、3500kmを走り切った。

これまた暗に「実力はテスラの比じゃないでしょ」というわけだ。

ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCAN

通常の400Vでなく800Vの電圧を備えた初の市販車となるタイカン。これにより高出力での充電が可能で、約5分の充電で最大100kmの航続が可能になる。最大航続可能距離はターボSで最大412km。

EVの味付けがみんな一緒は間違いなによりもLAの峠で乗って驚いた。走り出して5mで「ポルシェだ」と実感する。キモは加速の滑らか具合で、ガソリン版ポルシェと同質の押し出され感なのだが、より研ぎすまされているのだ。

ステアリングフィールはさらにそれ以上。ボディサイズはデカいが、重心が低いお陰もあってロールらしいロール感はなく、切ったら切った分だけ曲がり、しかもステアリングのレスポンス、反力が超キモチいい! ずっと曲がっていたくなる走り味で、これまで以上の濃厚ポルシェ風味なのだ。

さらにWCOTYで乗れたのは出力の低いタイカンターボだが、680psのオーバーブースト状態で発進加速を試みた。すると「ウィィィン」という合成音と共に宇宙戦艦ヤマトがワープするように加速。とんでもないGだが、それでもモデルSの全開加速ほど気持ち悪くならない。コントロールされつつも速い。

ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCANマジメな話、これぞ本物のEVスポーツだと思った。同時に「EVはどこが作っても同じ」としたり顔で言われがちだがそれはウソだと確信した。エンジンと違い、型式別に振動の出方がさほど変わることのない電気モーターだが演出で味は変わる。十分に、いままでにないキモチ良さを演出できるのだ。

一方、テスラとは違うところもあった。分かり易いのは運転支援機能で、タイカンにはACCを始め、一通りの機能が付けられるが、ことさら自動運転度の高さをうたったりはしない。

ブレーキも回生機能は付いているし、度合を数段階で調節できるが、アクセルオフしてもさほど強い減速Gはかからず、日産リーフのようなワンペダル運転はできない。なによりあのビッグなキャリパー&ブレーキをみればわかるが、普段の停止力の90%は回生ブレーキによるとは言うが、おそらくハイスピードからのフルブレーキングは油圧ブレーキが多く使われているはずだ。

メーター類、インフォテインメントシステムもすべてディジタルディスプレイだがデザインはアナログ。この辺り、テスラ的なサイバー感覚はない。そういう意味では、タイカンはガチンコテスラキラーではない。あくまでもポルシェが作ったポルシェらしいEVの範疇を出てないのだ。

ポルシェ タイカン|PORSCHE TAYCANでも、おそらく客の一部はテスラからの買い換えも出てくることが予想される。それはEVを好むリッチマンが、新しいもの好きで、タイカンはそれに十分かなう新しさと、他にはない魅力を兼ね備えているからだ。

確かに今までにない超濃厚バーボンウィスキーみたいなテスラは斬新で楽しい。でも、これまた濃厚で斬新かつ上品な一流プレミアム赤ワインも飲みたくなるじゃないですか、お金さえあれば!

つくづくプレミアムEVの世界から今後目が離せないと思ったタイカン初試乗なのでありました。

文&写真・小沢コージ 編集・iconic

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