■平成の初めにデビューしたスタイリッシュなクーペを振り返る
今や世界的なブームとなっているクルマといえばSUVです。その反面、需要が低下してしまったのがクーペで、もはや日本では趣味のクルマとなり、ラインナップも数少ない状況が続いています。
クーペは2ドアもしくは3ドアハッチバックのボディで、使い勝手の点ではSUVやコンパクトカー、ミニバンに劣るのは明白です。
一方で、スタイリングや走りの面は大いに優れ、魅力的なモデルといえます。
かつてクーペは走り好きの若者から支持され、またパーソナルカーとして幅広い層から人気を集めていました。
そこで、平成の初め頃にデビューしたスタイリッシュなクーペを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱初代「エクリプス」
三菱は1985年に米クライスラーと提携して、アメリカで合弁会社の「ダイヤモンドスター・モーターズ(現、三菱モーターズ・ノース・アメリカ)」を設立しました。
その後、1989年には現地で企画・開発した3ドアハッチバッククーペの初代「エクリプス」を北米市場で発売。翌1990年から日本にも左ハンドルのまま輸入・販売を開始しました。
初代エクリプスは6代目「ギャラン」をベースに開発された3ドアハッチバッククーペです。
外観はリトラクタブルヘッドライトを採用したフロントフェイスに、伸びやかで空力性能も考慮された流麗かつスタイリッシュなフォルムが特徴でした。
グレードは2タイプあり、上位の「GSR-4」は最高出力200馬力を誇る2リッター直列4気筒ターボ「4G63型」エンジンを搭載し、ビスカスカップリング付センターデフ方式を採用したフルタイム4WDを組み合わせ、トランスミッションが5速MTのみと、ピュア4WDスポーツカーに仕立てられていました。
内装は前述のとおり左ハンドルで、ドライバーが操作することを優先して斜めにレイアウトした空調システムがユニークかつスポーティな印象で、GSR-4にはスポーツシートが奢られました。
初代エクリプスは好景気を背景に一定の人気を獲得し、その後も3代目にあたる「エクリプススパイダー」まで、すべて左ハンドルのまま輸入されました。
●マツダ「MX-6」
すでに景気後退が始まっていた1992年に、マツダの新時代のFFスペシャリティカーとして「MX-6」を発売しました。
外観はロー&ワイドなプロポーションで、かつ伸びやかなフォルムと美しいボディラインが特徴の、華やかな印象の2ドアクーペでした。
グレードはエンジンの違いで2タイプあり、上位グレードは最高出力200馬力を発揮する2.5リッターV型6気筒DOHCを搭載し、下位グレードでも160馬力の2リッターV型6気筒DOHCエンジンを搭載していました。
駆動方式はFFの2WDのみで、トランスミッションは5速MTと4速ATが選べました。
内装はドライバーを包み込むようにデザインされたコクピットでスポーティに演出し、広いグラスエリアによって開放感あふれるキャビンを実現。
また、メーカーオプションで10スピーカーのBOSEサウンドシステムや電動の本革シートを設定するなど、バブル期に開発されたクルマならではといえる装備でした。
MX-6はエレガントなフォルムにV型6気筒エンジンによる余裕ある走りと充実した装備で、ライバルに対してアドバンテージを築きましたが、登場した時期が悪く販売数が伸びることないまま1996年に一代限りで販売を終了しました。
●トヨタ3代目「ソアラ」
トヨタは1981年に、ラグジュアリーなクーペ専用モデルの初代「ソアラ」を発売。初代ソアラは世代を問わず絶大な人気を誇り、後の「ハイソカー」ブームの火付け役となった存在で、1986年に登場した2代目は初代以上のヒット作となります。
そして1991年に登場した3代目ソアラは、それまで国内専用モデルだったのに対し、北米市場でレクサス「SC」として販売するために開発されました。
2ドアクーペのボディは全長4860mm×全幅1790mm×全高1340mmという堂々したサイズで、北米デザインスタジオCALTY社が担当したスタイルは、先代までのボクシーなイメージを一新して曲面を多用し、伸びやかかつ流麗なフォルムを実現していました。
内装はシンプルなデザインながら、上位グレードには本革シートに本木目をインパネに採用するなど、高級パーソナルクーペにふさわしいゴージャスさを演出。
駆動方式は全車FRのみで、エンジンは最高出力260馬力の4リッターV型8気筒DOHC自然吸気と、最高出力280馬力を誇る2.5リッター直列6気筒DOHCツインターボを設定し、後に3リッター直列6気筒DOHC自然吸気が追加されました。
トランスミッションは4速ATを基本として、2.5リッターツインターボ車には5速MTが設定されるなど、エンジンのキャラクターに合わせてスポーツカーの要素も残されました。
また、走行状況により車体の振動やロールなどの姿勢変化を抑える世界初のハイドロニューマチック式「アクティブコントロールサスペンション」や、同じく世界初の後輪自動操舵システム「アクティブ4WS」が設定されるなど、フラッグシップクーペだけあって先進技術も惜しみなく投入されていました。
その後、2001年に発売された4代目ではクーペカブリオレとなり、よりラグジュアリー路線へと変貌を遂げ、日本でも2005年からレクサス「SC」の名に改められたことで、ソアラの歴史は幕を下ろしました。
※ ※ ※
現在、クーペの多くは国内外とも高額なモデルが主流で、もはや絶滅寸前なのが比較的安価な小型のクーペです。
2021年にトヨタ新型「GR 86」とスバル2代目「BRZ」が発売されましたが、同価格帯の直接的なライバルは不在の状況が続いています。
今後、GR 86クラスのクーペが増えることは期待できず、本当に絶滅してしまうかもしれません。
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