マツダが送り込むCX-60はプラットフォームを新開発するのみならず、直列6気筒エンジンを含むパワートレーンも新開発した意欲作!! デザインで熟成の域に達したレクサスRXと一緒に徹底解剖していく。
※本稿は2023年4月のものです
文/水野和敏、写真/LEXUS、MAZDA、ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2023年5月26日号
デザインはRXリードも空力はCX-60に軍配!? ミスターGT-Rの水野和敏がガチ判定
■2台の最新SUVを斬る!
GT-Rほか数々の日産車の設計・開発に携わった水野和敏氏が、今回はマツダ CX-60とレクサス RXを斬る!
マツダがプラットフォームとパワートレーンのすべてを新規開発して送り込んだCX-60と、レクサスの最新モデル、RXです。
CX-60は直列6気筒3.3Lディーゼルターボにマイルドハイブリッドモーターを組み合わせたXD-HYBRID。レクサスRXは直列4気筒2.4Lターボエンジンを搭載するRX350のFFです。RXでは一番ベーシックなモデルです。CX-60のマイルドハイブリッドはFRベースの4WD。最も売れている仕様です。
価格はレクサスが706万円に対しCX-60は547万2000円です。ちょっとレクサスは割高な印象ですね。CX-60は直6の3.3Lディーゼルターボのマイルドハイブリッドで4WDです。
対するRXは直4、2.4Lターボを積んだFFのRX350です。メカニズムを考えると、CX-60のほうがコストはかかっています。しかも今回のCX-60は比較的上級グレードですが、シリーズ中の直4、2.5Lガソリンエンジン搭載車には300万円を切る仕様もあります、頑張っていますね。
■CX-60はフロントセクションのデザインに工夫の余地アリ!?
CX-60はもうちょっとフロントセクションのデザインを工夫すれば、よりFRプラットフォームの特性を活かして躍動感のある演出ができるのに……もったいない。
FFプラットフォームのマツダ車はCX-5でもそうですし、マツダ3でも同じように、ボンネット先端が無駄に10cm以上長く、それが極端なキャビンフォワードとなり車両後ろのボリューム感が足りないプロポーションを作ってきたと、私は指摘し続けていました。
ところがこのCX-60は逆。これまでの反動なのか、フロントを切り詰めすぎです。切り詰めているのに大きな開口の逞しいグリルの枠だけが出っ張り目立って、妙に浮いた印象になってしまっています。しかもグリルのプラスチック感も単独で強調されています。
これはヘッドライトが奥に引っ込みすぎているためです。近くに寄って斜め前から見ればよくわかりますが、グリル前面部に対し、ヘッドライトのレンズ面は10cm以上奥に隠れています。
私ならばヘッドライトのレンズ面を5cm程度前に出します。そうすることでヘッドライトの輝度部分が上質に、グリルの巨大な開口部を演出し、輝きの差が、ボリューム感を上手くコーディネートした前顔になると思います。
■レクサス RXは米国市場を意識した「アメ車顔」
マツダ CX-60は「もうちょっとフロントセクションのデザインを工夫すれば躍動感のある演出ができるのに……」と水野氏。しかし空力的な視点では評価
一方レクサスRXのフロントマスクは、これまた独特です。メイン市場のアメリカを意識した造形です。アメ車的な雰囲気も感じさせます。
空力的な視点で見ると、CX-60は結構積極的に取り組んでいます。フロントバンパー両端部がサイドに回り込む部分の距離やコーナーのRの取り方、フェンダー開口部のフィレットの形状など、しっかりと空気の流れを制御しています。
正面から見たバンパー両端の開口部はフェンダー内部に導風し、タイヤハウスの風を外に吸い出す効果を発揮しています。ホイール面はボディサイドとツライチにしていて、車体側面の風の流れはスムーズです。
フェンダー開口は、前後はこぶし1つ分以下に詰めています。これは頑張りました。ただSUVということもあり、サスストロークを取るため、上部はこぶし1つ分の隙間があります。アメリカ市場を意識したら、SUVであればこの程度の上下開口の余裕は必要です。
フェンダー開口部に関しては、レクサスRXも前後はしっかりと詰めています。これはCX-60と同じです。
RXのバンパー両サイドにスリット状の開口がありますが、ダミーですね。穴は開いていません。しかし、フェンダー内部には風の吹き出し口が開いています。これはフロントグリル部から取り入れた風を、ダクトを通して流しているのです。タイヤハウス内のエア吸出し効果はあまり期待できません。
■デザインの熟成度は対照的
新しいFRベースのプロポーションに挑戦しているCX-60のデザインは熟しきれてはいませんね。Aピラーの付け根。エンジンフード後端がつながる部分が尖っていて浮いて見えます。
これはクレーの造形検討時には綺麗に見えるのです。クレーではパーテーションがないし、反射が小さく陰影が付きにくいため、この程度の段差があるくらいで綺麗に見えてしまうのです。
しかもAピラー付け根のフロントウィンドウ側にはブラックのプラスチックが見えています。これは安っぽく見えるし、デザインの統一感を感じません。バラバラの線がAピラー付け根に集まってしまっています。
CX-60のドアパネル面には、プジョーに代表されるようなソリッド感と躍動感の演出が欲しい。ウエストラインから下を絞っているため、安定感が薄くなり車幅も狭く見えます。RXは複合した面で、躍動的な表情を作っています。
CX-60は絞ったドアパネルのラインから対象的にリアフェンダーの盛り上がりを演出しようという狙いはわかります。しかし、リアフェンダーアーチ部で凹面を作っているため、「後ろ足で踏ん張る」力強さを感じません。
あわせてリアコンビランプも細い形状のため、ラグジュアリー感も弱い。もっと大きな発光面としてボリューム感を作れば、大地を蹴り上げる力強さが表現できると思います。空力的にも車体後端の風の流れがスムーズになります。
このあたりの見せ方は、レクサスは上手い。リアクオーターにボリューム感があり、後輪がグッと踏ん張っている力強さを感じます。リアコンビランプの赤いレンズが大きく、存在感も感じさせます。
CX-60の床下空力のフラット処理はよく頑張っています。サスペンションアームにカバーが付けられていますし、マフラー本体の形状もフラットです。空力に対する意識は高い。
■空力制御ではCX-60に軍配
後ろ姿を見ると、レクサスRXのリアコンビランプは赤いレンズ面を大きくとってボリューム感を印象付けていることがわかる。CX-60はやや物足りない印象
対してRXの床下はサスアームはむき出しだし、マフラーのパイプやタイコも段差を作っています。床下の風の流れはあまり気にしていない設計です。
エンジンは、RX350は直4の2.4Lターボ。これはNX350などにも搭載されるエンジンで、ポート噴射と筒内直噴を併用して使い分けるシステムでこれは効果的です。
車体構造はトヨタのアッパーミドルFFプラットフォームの構造を踏襲しているので、完成度、熟成度は高いです。ストラット上部はダッシュパネル直付けで、補強パネルが左右にしっかりと渡されていてガッチリした構造。
とはいえ、700万円を超えるレクサスの上級モデルなのだから、サスアッパーやエンジンマウント類は、プレス鋼板製ではなく、アルミダイキャスト製にして制振や剛性を向上させてほしい。他車と比較しコストダウンが見て取れます。
エンジンルームを見ると、ターボの熱が厳しいのでしょう。ダッシュパネル側に遮熱板が設置されています。これは、エンジンルーム内の風の「抜き」がコントロールされていないためです。
上手に上からフレッシュエアを流してアンダーカバーから吸い出す風の流れを作ってやれば、効果的にクーリングができるのです。エンジンルーム内で風が対流してしまっているということです。そしてこの風の対流はリフトになってしまいます。
■今後の欧州規制も視野に入れたCX-60のエンジン
続いてCX-60のエンジンルームを見ましょう。
大きなディーゼルキャタライザーですね。今後さらに厳しくなる欧州規制にも対応させるためです。これがエンジン横にドンと置かれるため、エンジン縦置きで、多気筒化しようとすればV型ではなく、幅を狭くできる直列が必須だったということです。バッテリーはダッシュパネル側に置かれています。
エアクリーナー容量がちょっと小さい。あと1Lは容量を増やしたい。
エンジンの搭載位置を見ると、サスアッパーの位置がちょうど直列6気筒の第2気筒目手前あたり。エンジンの大半は前輪アクスルより後ろに収まるフロントミドシップ配置。
■我が道を行くCX-60のサスジオメトリー
フル転舵した際のタイヤ接地面の傾きの差を見ていただきたい。右のCX-60に対し、左のレクサスRXはキャンバ角が大きい
サスジオメトリーは最近の欧州車で主流のハイキャスターではありません。転舵をしてもネガキャンがほとんどつきません。フロントがこのサスジオならば、リアサスを相対的に多く動かし、前輪の動きは抑えて車両前半部のロール量を減らし、タイヤの接地に必要なキャンバー角度を確保するのが今のセオリー。
しかし、CX-60はこれとは逆に、以前からのサスペンションの前後バランスセットで、リアサスの動きをガッチリ抑えて、フロントをより多く動かしている。そのためフロントの車体のロール量(傾き)が多くなり、ネガティブキャンバー変化量が食われて不足しています。
その後の走行結果では、緩い下りのコーナリングでは、ネガティブキャンバーの不足からフロントタイヤは外側に偏った接地になっていました。中心より内側のグリップ性能の高い部分が上手く使えていません。
もし今のセットアップのように、フロントの動きをメインに多くするのであれば、フロントをハイキャスター化して転舵時のネガティブキャンバーの変化量を増加させて、タイヤの接地面を安定化させる必要があります。
フロントマルチリンク方式が活かし切れていません。セットアップ方法と、ジオメトリー変化量の関係が少し曖昧に感じます。
タイヤ切れ角は大きく、回転半径も小さくできています。FRプラットフォームのメリットです。FFプラットフォームのRXは切れ角が少ない。レクサスRXは最大転舵でCX-60よりも大きなキャンバー角の変化をつけるサスジオです。
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みんなのコメント
直4のRXと直6のCX-60。
RXの方が値段も車格も高いけど、スペックで比べるならCX-60の方が魅力的な車に見えるね。
CX-60は静粛性さえ改善されたなら十分にライバル足り得ると思う。