2026年からアルピーヌが現在のルノー製パワーユニット(PU)を使用できなくなり、ライバルメーカーの“カスタマーチーム化”する可能性が浮上している。
その可能性が現実のモノとなれば、どのメーカーがアルピーヌF1にPUを供給するのか? レギュレーションを見てみると、いくつかの興味深い動きが見えてくる。
■ルノー、自社製PUを放棄!? 傘下アルピーヌF1を2026年から“カスタマーチーム化”する計画を検討
現行PUでライバルメーカーから後れを取る上、次世代PUの開発能力に疑問符が付くルノー。仮にフランス・ヴィリー=シャティヨンのルノー・スポール・レーシング本社がF1活動から外れ、PU開発・製造を停止した場合、傘下のスポーツカーブランドとして戦うアルピーヌは別のメーカーからPUを調達する必要がある。
各陣営が既に2026年以降の計画をかなり固めている現状では、ライバルPUメーカーと新たに供給契約を結ぶことは容易なことではない。しかしF1レギュレーション上の枠組みとして、アルピーヌが来年5月15日までに契約を結ぶことができなくても、2026年のPU供給は約束されている。
というのも、2026年のテクニカルレギュレーションでは、メーカーはFIAからの要請を受けてPUを供給できるキャパシティを確保することが義務付けられているのだ。そのため各チームはPUがないという状況を避けることができる。
供給数はレギュレーションに記載された方程式に基づいており、それで定義された“T”に相当するチーム数にPUを供給する意思がメーカーには求められる。
方程式は次の通りだ。
[T=(NTOT-A)÷(B-C)]
T……小数点以下切り上げ。
NTOT……11に設定される。この数字はn年の「エントリー済み競技者の総数」に関係しており、競技者数が12を越えた場合、この数値は見直される可能性がある。
A……新PUメーカーとn年の供給契約を締結している競技者(ワークス/ファクトリーの競技者を含む)総数
B……n年のPUメーカーの総数
C……n年の新PUメーカーの総数。
2026年にルノーがPUサプライヤーから撤退し、メルセデス、ホンダ、フェラーリ、レッドブル・パワートレインズ(RBPT)、アウディというラインアップとなった場合、Tを導き出す方程式は以下のようになる。
11-3(新PUメーカーであるRBPT、アウディのPUを使うチーム数)÷5(PUメーカー総数)-2(新PUメーカー数)。つまり、8÷3で2.66となり、小数点以下切り上げで「T=3」となる。
現時点で2026年に3チームへPU供給を行なうのはメルセデスのみ。ワークスチームに加え、マクラーレンやウイリアムズともカスタマーPU供給契約を結んでいる。
レギュレーション上では、契約を結んでいないチームにPU供給を行なうメーカーとして、供給数が少ないメーカーが最初に選ばれる。
2026年の場合、フェラーリがワークスとハースに、RBPTがレッドブル・レーシングとRBにPUを供給するため、1チームのみにPUを供給するメーカーはアウディとホンダだけとなる。
しかしレギュレーションでは「新PUメーカーは上記の供給義務に従う必要はない」という条項が記載されており、アウディはアルピーヌへの供給を負担する必要はない。
つまり、アルピーヌに契約がなかった場合、ホンダがワークス供給を行なうアストンマーティンと並行してカスタマーPU供給を義務付けられ、契約をまとめなければならないことになる。
しかし、これらの仮説は全て、アルピーヌが自らPU供給契約を結べなかった場合に限定した話。メルセデスはレギュレーション上で最大限の供給数を満たしているものの、アルピーヌへPUを供給する可能性もあるのだ。
将来的なレギュレーションの一部として、供給可能なチーム数の上限が設けられた。PUテクニカルレギュレーション付則5の第1.2条3項には次のように記されている。
「FIAが別途合意しない限り、ホモロゲーションPUを製造する各PUメーカーは(T+1)チームを超えるPUを直接的または間接的に供給してはならない」
現時点ではルノーを含め2026年には6メーカーが揃うことから、T=11-3÷6-2=2であり、ワークス、マクラーレン、ウイリアムズにPUを供給するメルセデスは既にT+1に達している。
しかしルノーが正式に撤退を決定しPUメーカーが5社となった場合、Tは3に跳ね上がり、メルセデスがその気になれば4チーム目に供給することができるのだ。
ルノーとアルピーヌがどのような決断を下し、財政面でも競争面でもどういった形が最善だと考えるのか、注目が集まっている。
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