トヨタ自動車創立50周年を記念して、1989年(平成元年)に設立されたトヨタ博物館が、2019年4月に開館30周年を迎えた。これを機に本館は「クルマ館」、新館は「文化館」に名称を変更。このたび文化館にオープンした「クルマ文化資料室」を見学してきたのでレポートしたい。TEXT & PHOTO◎木原寛明(KIHARA Hiroaki)
そもそもトヨタ博物館では開館以来、自動車(実車)だけでなく、国内外の自動車文化の関連資料も収集してきた。収集数は書籍、雑誌、カタログが約20万点。その他の資料は約1万五千点にのぼるという。今回紹介する「クルマ文化資料室」では“移動は文化”をテーマにした約4000点の文化資料を展示している。
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クルマ館での自動車約140台による展示が自動車の作り手が紡いできた歴史であるのに対して、クルマ文化資料室には実物のクルマは1台もない。その代わりと言ってはなんだが、展示室中央に置かれた約800台のミニチュアカーから構成されるタイムラインを軸として、モーターショーのポスターや、自動車雑誌などの出版物、カーバッジ、自動車切手など、多用に織りなされたクルマ文化のありようを紹介しているのだ。
展示室に入ってまず驚かされたのは、中央に置かれた1/43スケールのミニチュアカーだ。ヨーロッパ、アメリカ、日本の3つのラインで展示してあり、クルマが生まれた18世紀半ばから現代まで、スタイルの変遷の様子が一目でわかるようになっている。
このミニチュアカーのタイムライン軸に沿って、次の9つのゾーンで文化資料を展示している。
ゾーン1 昔の出版物に見る乗り物文化(錦絵、引札、うちわ絵、すごろく)=約40点
日本では開国、そして明治維新により、江戸時代までにはなかった馬車や人力車、鉄道などの乗り物が登場する。交通手段が近代化していく様子を色鮮やかに描いている錦絵などを紹介。
ゾーン2 自動車と出版物(自動車雑誌、カタログ)=約300点
世界初の自動車雑誌「La Locomotion Automobile」を始まりとし、1894年から2000年頃までにヨーロッパ、アメリカ、日本で創刊した自動車雑誌64冊の表紙でその変遷を紹介。カタログは年代ごとに約150冊を展示。
ゾーン3 自動車ポスター=約30点
ゾーン4 カーバッジ=約400点
自動車メーカーにとってブランドイメージそのものであるともいえるカーバッジは約400点を展示。
ゾーン5 カーマスコット=約180点
1910年頃から1930年代前半にかけてクルマを飾るアクセサリーとして流行。フランスのガラス工芸家ルネ・ラリックが製作したガラス製カーマスコット全29種類の常設展示は世界でも珍しい。
ゾーン6 自動車切手=約1200点
日本でも1950年代から60年代にかけて切手の収集が大流行したが、自動車切手は現在までに世界で1万5千種以上発行されていると言われている。ここでは世界初の自動車切手を含む約1200点を展示。
ゾーン7 自動車玩具・ゲーム=約640点
1950年代に欧米に輸出された日本製のブリキ製玩具、世界初のラジコンカー、プラスチックモデルキット、スロットカー、ミニ四駆、ビデオゲームなど約640点を展示。
ゾーン8 世界のライセンスプレート=約100点
世界各国で走るクルマに取り付けられているライセンスプレートを紹介。
ゾーン9 文学、マンガ、映画、音楽=約130点
クルマが重要な存在として描かれている文学、マンガ、映画、音楽を展示・紹介。
トヨタ博物館ではクルマ文化資料室オープン関連展示として、文化館2階の企画展示室において6月30日(日曜)までの期間、「馬なし馬車から自動車へ」をテーマに、実車8台と雑誌、ポスター等のクルマ文化資料によって紹介するコーナーを設けているほか、開館30周年記念トーク「移動は文化」を次の日程に実施する。
■6月2日(日曜) 移動、旅をテーマに活動する港千尋さんによる「移動はいかに文化を創造していくのか」
■6月16日(日曜) 音楽プロデューサー/モータージャーナリストの松任谷正隆さんによる「『クルマ』と『音楽』について語ろう」
■6月30日(日曜) ラリック研究の第一人者の池田まゆみさんによる「ルネ・ラリックとカーマスコット」
記念トークは各日共通14時から15時30分。先着150名の定員制となっているので、詳細をホームページ等で確認してからお出掛けいただきたい。
■トヨタ博物館
開館時間/9:30~17:00(入館受付は16:30まで)
休館日/毎週月曜日(祝日の場合は翌日)および年末年始
入館料/大人1,000円/シルバー(65歳以上)500円/中高生600円/小学生400円
住所/愛知県長久手市横道41−100
電話/0561-63-5151
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