現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【ヤングタイマー試乗】フィアットX1/9はイタリアの神ミッドシップマシン!

ここから本文です

【ヤングタイマー試乗】フィアットX1/9はイタリアの神ミッドシップマシン!

掲載 更新 29
【ヤングタイマー試乗】フィアットX1/9はイタリアの神ミッドシップマシン!

フィアットがちょうど50年前となる1972年にデビューさせた小型ミッドシップスポーツカー、X1/9。開発コードをそのまま車名に採用したこのモデルに対し、果たして皆さんは、どんなイメージをお持ちだろうか? 左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない筆者の偽らざるイメージは、超絶カッコイイけど……超絶壊れる、というものだった。

周囲で所有していた、あるいは噂で聞いたX1/9はトラブルが多く、そのせいか素晴らしい個体に出会う機会がなく、この仕事を初めて四半世紀になるが、今の今まで取材(試乗)する機会に恵まれなかったのだ。

【動画あり】「EVパンダ」初試乗! 「日産リーフ」のモーター搭載で加速感ハンパない!

ガンディーニがデザインした永遠の名作

話を続ける前に、簡単にモデルプロフィールを振り返っておこう。

1969年のコンセントモデル『ラナバウト・バルケッタ』に端を発する、ベルトーネ在籍時代のマルチェロ・ガンディーニがデザインしたスタイルは、同時期に登場したランボルギーニ・カウンタックやランチア・ストラトスと並ぶ、永遠の名作と呼んで差し支えないだろう。

当時X1/9が画期的だったのは、量産メーカーであるフィアットが量産車のコンポーネンツを活かして作ったことで、後にトヨタMR2というフォロワーを生んだことはよくご存知かと思う。

デビュー時は128スポルト・クーペと同じ1290ccの直4SOHC(75HP)を搭載し、1978年末、リトモ用の1498cc(85HP、北米&日本仕様は66HP)へ変更、トランスミッションも5速化された。北米仕様を中心にインジェクションも存在する。1982年にはベルトーネ・ブランドとなり、1989年まで生産された。

ワンオーナーのノンレスア&ノン鈑金という奇跡の1台

取材車は1982年式で、フィアット・ブランドのキャブレターモデル。日本へは東邦モータースが輸入した車両で、いかにもキレイでとにかく見た目がシャキっとしているので、フルレストアを受けたのかと思いきや、何と走行距離わずか1万3200km、ワンオーナーのノンレストア&ノン鈑金という奇跡の1台だった。

取材の経緯としては、筆者がよく取材などで出入りをしている横浜のイタフラ専門店『エスパート』に入庫しているのを見かけ、こんなコンディションのいいX1/9には二度と出会えないと思い、取材を申し込んだのが約2年前。

新車で購入した最初のオーナーは車庫保管で、しかも長く乗らない時は足まわりのヘタリを抑えるためタイヤを外してウマに載せていたほどだった。そのため当初は最低限の整備で済ませる予定だったが、エスパートの鶴岡省一郎さんは元エンジニアで、これだけの個体を見て、「次の方にはとっておくのではなく乗ってもらいたい」と思いエンジニア魂に火がついたのか、手を付け始めたらいろいろと気になってきて、他の作業と同時進行していたら約2年かかってしまったそうだ。

内外装は元々キレイなので特に手を付けず、例えば燃料タンク内の錆を落として樹脂のコーティングをしたり、今の暑さに耐えられるようにラジエーターのファンをシングルからツインに変更したりと、乗るための整備をしっかり行った。実はベルトーネ・ブランド時代に新車を販売&整備した経験もあり、「昔お世話になったクルマなのでちゃんとした形で遺してあげたい」という思いもあったそう。「これは新車の時よりコンディションがいいかもしれません」と笑顔を浮かべる。

ちなみに当時扱っていた新車はヘッドライトを開けたら水が溜まって金魚鉢みたいになっていたり、登録で陸自に行く途中に止まったり、エピソードには事欠かなかった様子。しかも車両の価格が高くないので、購入するユーザーも整備にそれほどお金をかけないため、コンディションのよくない中古車が多々流通したのではないか、というのが鶴岡さんの見立てだ。しかし整備性は悪くなく、北米でも販売していたのでパーツも意外とあるそう。

乗り出すまでの話が長くなってきたが、最後のもうひとつだけ。撮影でジャッキアップしてリアの下回りを見た時、思わず私は「ダブルウィッシュボーンでしたっけ?」と聞いてしまった。ご存知のようにX1/9は前後マクファーソンストラットで、(事前に資料も見ていたのに)長いアームを見て咄嗟に口走ってしまったのだ。鶴岡さんも「ジャッキアップしてここまで伸びるクルマってないですよね。サスペンションの伸び側をしっかりと確保しているということです」。

反時計回転するレブカウンターで気分が高まる

編集部A君に任せた撮影も大まか終えて、いよいよ試乗の時間がやってきた。天気もよかったのでルーフは外してフロントのラゲッジスペースに入れてもらった。コックピットに滑り込むと、このサイズだからタイトではあるが、ルーフレスであることもあり狭さは感じない。エンジンをかけると1500ccから採用されたという反時計回転するレブカウンターが目に入ってきて、気分が高まる。

1980年代のヤングタイマーカー、特にイタリア車はこの時代から多用されたプラスチックの耐久性の問題で室内があまりシャキッとしていなことが多いのだが、このX1/9はその状態もよく、しかもラジカセもちゃんと作動するというから驚きだ。生憎カセットは持っていなかったが、せっかくなのでFMラジオをかけながら走り始めた。

腕が伸ばし気味となるザ・イタリアンポジションがいかにもイタリア車のX1/9は、車重980kg&排気量1500ccという数字からも想像できるように、トルクがあっていかにも走りやすいというのが第一印象だ。

セッティングがいいのだろう、アクセルのツキも含めてキャブレターの気難しさはゼロで、言われなかったらインジェクションと思うかもしれない。上までちゃんと回る楽しくていいエンジンであるのは間違いないが、アルファロメオやマセラティほど官能的ではなく、いかにも丈夫そうで安心感を覚えたのは、量産車ブランドであるフィアットに今も昔も共通する"らしい"部分と言えよう。

こんな奇跡があっていいのか!

少しカーブが多いセクションでは、ミッドシップらしく後ろにちゃんと荷重がかかっていて、例のストロークの長いリアサスペンションがイメージさせるとおり、リアの懐が深く、余裕を感じることができた。ちゃんと整備された個体自体の素晴らしさと、元々X1/9が持つポテンシャルが合わさり、これが本来のX1/9か! と膝を打つこと多数。ガンディーニのスタイルも天才なら、このパッケージも天才! と思わず叫びたくなった(助手席にA君がいたので自粛)。こんなフルオリジナルコンディションのX1/9に乗ることができるなんて、こんな奇跡があっていいのか! とも。

試乗後、X1/9を知り尽くしている鶴岡さんがドライブする横にも乗せて頂きつつ、その印象も伺った。

「ゼロカウンターでドリフトができる、ミッドシップのお手本のようなクルマです。回頭性が素晴らしいですよね。滑り出しがよくわかりますし、そこから一気に(滑って)いかないんです。少しカウンターをあてて、アクセルを踏むだけ。飛ばす努力がいらないクルマなんです。ジオメトリーの変わり方など、よく考えて作ってますよね。ミッドシップをここまで仕上げたのって、X1/9だけじゃないかと思うんです。プアマンズ・フェラーリなんて言いますけど、下りなら328に負けないと思いますよ(笑)」

日本人のメンタリティにあう

下りなら負けない……。何と浪漫に溢れた言葉か。ロータス・ヨーロッパで並みいる敵に挑んだ漫画『サーキットの狼』の主人公、風吹裕矢が人気を博したように、実に日本人のメンタリティにあう話だ。あと、最後にもうひとつだけ書いておきたいことがある。それはこれも鶴岡さんが教えてくれたことだ。

「このクルマ、ウェッジシェイプって言いますけど、ひとつもただの直線がないんですよ」

……はっとした。X1/9を超絶カッコイイと思ったのは、これもイタリアらしく、流麗なフォルムを兼ね備えていたからだった。

クルマの存在、この個体の存在、それに乗れたこと、何から何まで奇跡の連続だった。今結論として、フィアットX1/9を神ミッドシップマシンと書くことを私は躊躇しない。

取材協力=エスパート













【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

【最新モデル試乗】期待のストロングHV登場! SUBARUクロストレックS:HEVの実力
【最新モデル試乗】期待のストロングHV登場! SUBARUクロストレックS:HEVの実力
カー・アンド・ドライバー
新車198万円! スバルの全長4.3m「“7人乗り”ミニバン」が凄い! 得意な「AWD×水平対向エンジン」採用しない“謎のモデル”に注目! 意外な「小型ミニバン」誕生した理由とは
新車198万円! スバルの全長4.3m「“7人乗り”ミニバン」が凄い! 得意な「AWD×水平対向エンジン」採用しない“謎のモデル”に注目! 意外な「小型ミニバン」誕生した理由とは
くるまのニュース
愛車の履歴書──Vol54. 池松壮亮さん(番外・後編)
愛車の履歴書──Vol54. 池松壮亮さん(番外・後編)
GQ JAPAN
トヨタ世界初!謎の「“パイ”エース」に大反響! 屋根なし&12人乗りに「成人式仕様みたい」「オトナも楽しめそう」の声! “マル秘システム”搭載の「ハイエース」がスゴイ!
トヨタ世界初!謎の「“パイ”エース」に大反響! 屋根なし&12人乗りに「成人式仕様みたい」「オトナも楽しめそう」の声! “マル秘システム”搭載の「ハイエース」がスゴイ!
くるまのニュース
頑張れ日産! フェアレディZの2025年モデル発表、あわせて新規注文を再開!
頑張れ日産! フェアレディZの2025年モデル発表、あわせて新規注文を再開!
カー・アンド・ドライバー
もう待ちきれない! [新型GT-R]はなんと全個体電池+次世代モーターで1360馬力! 世界が驚く史上最強のBEVスポーツカーへ
もう待ちきれない! [新型GT-R]はなんと全個体電池+次世代モーターで1360馬力! 世界が驚く史上最強のBEVスポーツカーへ
ベストカーWeb
「ジャパンモビリティショー2024」に若者たちはどう感じたか? 対話と提案で「次世代モビリティ社会」を作る
「ジャパンモビリティショー2024」に若者たちはどう感じたか? 対話と提案で「次世代モビリティ社会」を作る
ベストカーWeb
プライベート空間重視な人におすすめ! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
プライベート空間重視な人におすすめ! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
熊本「交通系ICカード廃止」はむしろ良かった? “大危機”から垣間見える「地方の選択肢」と、都心で広がる可能性とは
熊本「交通系ICカード廃止」はむしろ良かった? “大危機”から垣間見える「地方の選択肢」と、都心で広がる可能性とは
Merkmal
スズキ初ってマジか!! 新型フロンクスの新アイテム採用のヒミツが衝撃
スズキ初ってマジか!! 新型フロンクスの新アイテム採用のヒミツが衝撃
ベストカーWeb
12月7日(土)京都お東さん広場(東本願寺門前広場)で「京都モビリティ会議」開催(入場無料)
12月7日(土)京都お東さん広場(東本願寺門前広場)で「京都モビリティ会議」開催(入場無料)
ベストカーWeb
ルーミー/トール受注再開! 現行は2027年まで販売ってどうよ!? 3年も生き延びるってマジか!? ビッグマイチェンは2025年!
ルーミー/トール受注再開! 現行は2027年まで販売ってどうよ!? 3年も生き延びるってマジか!? ビッグマイチェンは2025年!
ベストカーWeb
全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
ベストカーWeb
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ベストカーWeb
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
ベストカーWeb
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web

みんなのコメント

29件
  • 記憶が正しければ最後期に新車を積んだ輸送船が沈んで引き上げられた水没車が安く売られたんじゃなかったっけ ?
  • 前期高齢者です。X1/9もポルシェ914も一時底値になった時があり、レストアを楽しみながら2台をガレージに並べようか‥と本気で考えた時もありました。が、モタモタしている間にそれは夢になり、もはや殆ど不可能になってしまいました。X1/9は初期の1300cc時代のほうがカッコ良いですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

540.0786.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0755.0万円

中古車を検索
X1の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

540.0786.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0755.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村