デザインはこれまでの正常進化
8代目ゴルフは、現行モデルのMQBプラットフォームを改良したものが使われる。前ストラット式、後マルチリンク式のサスペンションには、アダプティブ・ダンパーが組み合わされる。
新型の開発に関わっているエンジニアの話では、特にステアリングの精度に注力したという。現行型の電気機械式パワーステアリングは大幅に改良され、フィードバックとダイレクト感が向上するようだ。
新型ゴルフのデザインは、これまでの慣習どおり、先代から劇的に変わることはない。ポロ、ティグアンに続きVWで3番目に売れているこのモデルには、世界中に多くのファンがいる。その期待が裏切られることはないだろう。
ウェルシュは次のように語っている。「初代から2代目に変わったときと同じです。違いはとても小さく見えますが、明らかな進化を遂げています。よりダイナミックになります」
ウェルシュによれば、Cピラー上のルーフラインをわずかに低く、ベルトラインを高くすることで、よりダイナミックさが増したという。
「現在のゴルフは、水平方向を強調したデザインになっています。これは視覚的に速そうに見せるという効果があります。それをわたしたちは、さらにダイナミックにしました。しかし、ロゴを見なくても誰もがゴルフだとわかるでしょう」と、ウェルシュは語った。
VWは新しい電気自動車ブランドのIDに、従来のモデルとは差別化したデザインを与えようとしているにもかかわらず、ID.3のフロント・ライトのデザインは、新型ゴルフにも反映される。ウェルシュは、ボンネットの新しいロゴから左右に伸びるフローティング・ライトが、ゴルフにも採用されることを認めた。このエンブレムは、欧州以外では発光する仕組みを備えるが、欧州では法規制で認可されない。
インテリアは2段階の進歩
新型ゴルフのインテリアは、ウェルシュの言葉によれば「2段階」の進化を遂げるとのこと。これが目で見てわかる最大の変化になるだろう。
すでに公開されているスケッチに「実車もかなり近いものになる」と、ウェルシュは言う。このインテリアには、伝統的なコクピットに備わる要素の多くが見当たらない。メーター類はほとんどなく、代わりに2つの10インチ・スクリーンと、ヘッドアップ・ディスプレイが備わる。
「ボタンも減らし、音声コントロールを採用しました」と、ウェルシュは述べる。「すべて室内の雰囲気をより良いものにするためです。7色に変えられるアンビエント照明も装備し、クロームの加飾も増やしました。気に入っていただけると思います」
インテリアのデザインは明らかにID.3とは異なるが、シンブルにするという考え方は同じだ。無線アップデート機能などのコネクティビティも、同じものが採用されている。
開発に力を入れている機能の1つが、最大限に快適で安全なドライブを提供するための運転支援システムだ。ウェルシュは次のように説明する。「ゴルフは、いってみればミドル・クラスの中でも低めの位置に属するクルマです。そこにわれわれは、上級クラス並みのテクノロジーを導入します。たとえば、車両対車両あるいは車両対周囲をつなぐ情報伝達システムなどです」
新型ゴルフには、さらなる自動運転化技術も採用される見込みだ。また、カメラが捉えた周囲の様子をコクピットに映し出すエリアビューなどの機能も搭載される。
テクノロジーと環境性能はクラス最高に
8代目ゴルフに3ドア・ハッチバックは設定されないこともわかっている。VWは5ドアとワゴンに集中することでラインナップを整理し、コスト対効果や利益率の拡大を狙う。ワゴン型のヴァリアントはホイールベースが50mm延長され、リアのオーバーハングもハッチバックより長くなる。
VWの販売およびマーケティング担当取締役のユルゲン・スタックマンは、次のように述べている。「長年の間、ゴルフは欧州において、並ぶ者のない首位の座を守ってきました。モデルライフ末期となる現在も、非常に多くの販売を維持しています。われわれの仕事は、この市場シェア1位を堅守することです」
「次世代モデルには、この地位を守るために必要なすべての技術とすべての進歩がもたらされます。明らかに、歴代最良のゴルフとなるでしょう。同クラスで最良のCO2排出量と最高のテクノロジーを備え、そして最もデジタル化が進んだモデルになります」
世間の注目がID.3と分散してしまうことを避けるため、新型ゴルフは発表が遅らされることになった。スタックマンはID.3とゴルフの棲み分けにも留意している。
「ゴルフを選ぶ人の思考と購入理由を見れば、顧客がゴルフに求めるものは変わっていません。かれらはゴルフがゴルフだから好きのです。新しいテクノロジーは好みますが、突飛なものは好みません」
「長期的には、おそらく6年から8年の間には、ゴルフとID.3の顧客は重なっていくことでしょう」
8代目ゴルフが直面する問題
VWのID.3に対する野心に耳を傾けていると、次期型ゴルフの存在を見落としがちだ。VWはID.3の発売初年となる来年の世界販売台数で6桁を目指しているという。素晴らしい。しかし、依然としてゴルフは世界で最も売れているモデルの1つであり、昨年は世界で73万台以上を売り上げた。トヨタ・カローラの93万台にはおよばないものの、ゴルフは欧州で人気が高く、VWはそれを維持したいと考えている。
8代目ゴルフが挑まなければならない難題の1つは、7代目ゴルフが築き上げた全方位にわたる魅力を維持することだ。VWはエンジン・ラインナップやトリムレベルを整理しようとしているが、それで今までのように、あらゆる年代・収入の人々をカバーすることは難しいだろう。
一方で、新型ゴルフに採用される多彩な先進テクノロジーは、これまでゴルフが評判を得てきた人間工学的な使いやすさや、品質に対する満足度を落とすことがあってはならない。特に後者において、ID.3は発表イベントで展示された量産前試作車を見る限り、7代目ゴルフの水準に達しているとは思えなかった。ゴルフの伝統的な美徳のすべてを保つことは、非常に困難な仕事に思われる。われわれは息を詰める思いで、その仕上がりを見守るしかない。
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