手持ちのスマホやタブレット、パソコンなどが「どこで生産されているか」を気にする人は少ないだろう。それよりも、ブランドをはじめ、スペックやデザイン、価格を重視してチョイスしているはず。しかし、クルマの場合はどうだろうか? どこで生産されているかは、スマホよりも気になる人も多そうだ。TEXT◎塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)
Lynk & Co 03を富士スピードウェイでテストドライブ!!
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「Lynk & Co(リンク・アンド・コー)」3番目のモデルとなる「03」が富士スピードウェイでローンチイベントを開催した。
2017年11月に中国で初めて発売された第1のモデル「01」は、ボルボXC40と同じ「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャ)」を使い仕立てられたSUVで、エンジニアリング的には「Lynk & Co版XC40」といえるモデルになっている。
第2のモデル「02」は、「CMA」を使ったコンパクトクロスオーバーで、2020年には欧州市場にも導入されるという。なお、「02」は中国では2018年6月の導入以降、販売台数は増えていて、9月の販売台数は約5500台だという。
そして今回、富士スピードウェイの本コースで1周だけ試乗が許されたセダンの「03」もボルボの「CMA」を採用。中国市場で人気のセダンとすることで、さらなる拡販が狙える売れ筋モデルの登場といえるのだろう。
エンジンはボルボ自社製となる「Drive-E」の1.5ℓ直列3気筒ガソリンターボで、組み合わせるトランスミッションは7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)。最高出力は180ps、最大トルクは265Nmとアナウンスされている。なお、今回試乗したガソリンターボに加えて、近い将来プラグインハイブリッドも追加するとしている。
なお、ボルボも「Drive-E」の直列3気筒エンジン搭載をすでにアナウンス済みなので、同じエンジンが今後XC40に積まれることになるはずだ。
なお、ボルボは当初「Drive-E」戦略として、「排気量2.0ℓ以下、4気筒以下」としてきたが、2.0ℓの直列4気筒エンジンにターボ、ターボ+スーパーチャージャー、あるいはターボ+スーパーチャージャーにモーターも組み合わせXC90といった巨体に対応してきた。ここで1.5ℓの3気筒を搭載するということは、3気筒の二次振動など、音・振動面の課題を克服できたと考えていいのだろう。
青と黒のボディカラーをまとった2台用意の試乗車のタイヤは、両モデルともにグッドイヤーのイーグルF1(225/45R18)。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤがマルチリンクで、前後のトレッドは1597mmと公表している。
デザイン担当のシニア・バイスプレジデントのアンドレアス・ニルソン氏は、グループインタビューで私の質問に対し、「見えない部分はボルボとほぼ同じエンジニアリングであり」、「見える部分、内装やボディカラーなどはLynk & Co向け」と語っていた。つまり、中身はボルボ、見た目はLynk & Coオリジナルと理解すればいいのだろう。
また、同氏は、Lynk & Coモデルには、東(中国)西(スウェーデン)の要素を融合させたと語っている。個人的には、内・外装ともに見たことのない個性が表現されていて、国籍(ブランド)不明のモデルというムードが漂っている。
爬虫類系と評されているフロントマスクはセダンでも、SUVのようなボリューム感があり、サイドもフロントからの流れでボリューム満点だ。リヤはワイド感を抱かせる印象的なテールランプを中心に、力強さとスポーティムードが強調されている。
エクステリアの質感はまずまずという印象で、気になったのはリヤバンパー下の造形と質感。黒い樹脂パーツと、ディフューザー風のデザインが少し日本人には安っぽく見えるかもしれない。
一方の内装は、ボルボの縦型タッチスクリーンを横向きにしたようなタッチ式ディスプレイを中心に配されていて、ドライバーに操作系を少し傾けたコクピット風の設計になっている。ドライバーの印象を左右するメーターペネルの質感、視認性もとくに問題はない。
助手席前のハニカム状の加飾などは、ボルボでは採用しそうにないテイストで、この辺りからは何となく中国風味が伝わってくる。内・外装ともにボルボが得意とするスカンジナビアン・デザインではないのは確かだ。
さて、前置きが長くなったが、ペースカーの先導のもと、ゆったりした速度で富士スピードウェイの本コースに向かう。シフトレバーはシフトバイワイヤ化されているような軽い操作感で、パーキング用の「P」ボタンがシフトレバーから独立。ユニークなのがマニュアルシフトで、レバーを右に倒すとプラス、左に倒すとマイナス。パドルシフトも用意されていて、こちらはオーソドックスに右側がプラス、左側がマイナスとなっている。
気になっていた直列3気筒の音・振動だが、アイドリングから静かで、教えてもらわないと3気筒とは気がつかないだろう。少なくても昔のようなラフな回り方や音・振動はなく、かなり洗練されている。発進時から力強く、少し発進時の飛び出し感があるように思えたのは、中国人の好みに合わせてあるのかもしれない。
踏み初めのアクセル操作に対してわずかに過敏なところはあるものの、7速DCTのスムーズな変速も白眉といえる仕上がりだ。極低速域の発進マナーは、いち早く採用してきたフォルクスワーゲンも苦労してきたが、「03」のそれは些細な指摘に過ぎず、そこから速度が上がっても減速していってもギクシャクした感じはほとんど抱かせない。
DCTといえば、フォード・フォーカスは、ゲトラグフォード製の「PowerShift」を搭載していた。日本導入時のそれはやはり極低速域においては洗練度不足だったし、ルノーがカングーやカジャーで採用しているゲトラグ製の「EDC」と呼ばれるDCTと比較しても、Lynk & Co「01」の方が1枚も2枚も上手。ボルボのDCTもゲトラグ製だったが(現在はアイシン・エィ・ダブリュ製多段ATに移行)、こうしたDCTと比べても完成度は高く感じた。
本コースで速度を上げていくと、「エコ」モードに入れても思いのほかにパワーがあり、街中で多用しそうなパーシャル域からの加速フィールにも不満はない。さらに、おそらく(中国語表記だったので定かではないが)、「ノーマル」、「スポーツ」モードに入れていくと力強さが増し、「スポーツ」と思われるモードにすると、エンジン回転が高まり、アクセルのツキもグッと良くなる。
試乗した本コースは、非常に良好な路面ゆえ、乗り心地の判断はできないものの、ボルボXC40を思い起こさせるようなゆったりした動きが印象的だ。パワーステアリングもボルボのようにやや軽め。
コーナーではそれほど飛ばさなければ安定志向のボディコントロール性を見せながらも、少し速度を上げるとそれまでの姿勢から意外とボディの傾きが大きくなる(それでも接地感は失われない)など、ハンドリングからボルボらしさが伝わってくるのは、エンジニアリングを共通化していることからも当然かもしれない。
走りを支えるパワートレーンもシャシーも中国製という先入観を打ち破る仕上がりの高さを見せつけたLynk & Co 03。ボルボは最上級セダンのS90を中国生産に切り替えている(日本への限定導入車はスウェーデン製)。生産国で抱く先入観はそろそろ捨てる時が来ているのかもしれない。日本市場では、右ハンドル化(イギリス、オーストラリア向けとして設定する予定だそう)、そしてデザインがどう受けるかが成功の鍵を握りそうだ。
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