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シボレー コルベット Z06が目指した、さらなる高みとはなにか? 気迫の走りを気合で御する悦びが、そこにあった【試乗】

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シボレー コルベット Z06が目指した、さらなる高みとはなにか? 気迫の走りを気合で御する悦びが、そこにあった【試乗】

シボレー コルベット(C8型)は2019年に登場した。FRに別れを告げると同時に最新のテクノロジーを採り入れることで、欧州のスーパースポーツにも負けないモデルとなった。これをさらに強化してレーシングスペックを手にしたモデルがZ06だ。ここでは飽くなき速さの追求が具現化した最強モデルに秘められた実力をご覧いただこう。(Motor Magazine2023年12月号より)

レーシングカーと並行して開発されたコルベット「Z06」
世界に名だたるハイパフォーマンスなスポーツカー、その認知度については基本的に欧州ブランドの独壇場だ。それは能力を証明するステージでもあるモータースポーツでの発信力が図抜けていたこともあるだろう。それも含めて、露出機会を巧みに操るブランディングの巧さも無視はできない。

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だとすればその機会を利用して、スポーツカーとしての名声を確たるものにしようと考えたのが2000年前後のアメリカ車、GTカテゴリーにおけるダッジ ヴァイパーでありシボレー コルベットである。

とりわけコルベットは2000~2010年、C5~C6世代の間に、マーケティング的にもっとも重要なル・マン24時間レースでの常勝組へと成長。欧州ではごく一部のマニアに支えられてきた銘柄が、ピークには年間1万台規模でユーザーを増やしていくほどの人気を集めた。10年代には市販車としても著しい成長を遂げたC7世代が再びル・マンで優勝、再びコルベットの天下が訪れるかのように思われたわけだ。

が、以降はミッドシップ勢の台頭によりC7の戦績は沈み続けてきた。もはやFRレイアウトで勝てる場ではないほどに、周囲のパフォーマンスが上がったという側面は否めない。車体をより速く前に進めるには後ろにエンジンを置くしかない。コルベットが60年以上にわたって描き続けてきた理想像は、幾度もコンセプトカーとして世に示されてきたリアミッドシップだったわけだが、結果的にそれが勝つための必然として実現したことはなんとも感慨深い。

かくしてMR化を果たしたC8コルベットにおいて、その核心であるLM−GTEカテゴリーでの勝利のためにファクトリーレーサーのC8.Rと完全並行で開発されたのがこのZ06だ。

ちなみにC8.Rは2023年のル・マンにおいて悲願のクラス優勝を果たしたが、GMはこの春に実質ワークスでのレース参戦終了を発表。24年以降はカスタマー向けにGT3カテゴリー用のレーシングカーの供給とサポートを行うとしている。当然ながらそのGT3モデルもZ06がベースとなり、たとえばエンジンはパーツの7割程度が共用になるという。

レースにルーツがあると実感させる仕様のエンジン
エンジンの型式名称はLT6。GMのV8としてはお馴染みのコードながら、伝統のOHVユニットと共通するのはボアピッチのみ、つまり完全新設計のDOHCユニットだ。

排気量5.5Lを生み出すボア✕ストロークは104.3✕80.0 mmと今日びの自動車用エンジンとしては極端なショートストロークで、鍛造クランクは高回転・高出力化を前提とするフラットプレーンを採用する。二次振動の増加を抑えるためにショート化によるピストンスピード低減と併せて、鍛造チタンコンロッドや超ショートスカートの鍛造アルミピストンなどムービングパーツの軽量化を徹底した。

これらのパーツを供給するオーストリアのパンクル社は、F1やモトGP向け車両の高精度な鍛造部品を開発するほか、市販車ではカワサキのZX-10RR用のコンロッドやピストン等を手掛けている。とあらば、GT3車両と7割の部品を共有するという話もむべなるかなといったところだ。

そういう本気の背景を見ていくにつけ、現行のスポーツカーでもっとも成り立ちが似ているクルマといえばポルシェ911GT3だということが伝わってくる。

排気量やエンジン骨格は異なれどレーシングユニットとしての転用も前提とした設計、スペック的にいえば1シリンダー辺りの体積やボアストローク比、圧縮比、リッターあたりの出力などは非常によく似ている。その数値に至るチューニングの追い込みぶりもまた然りだ。

ちなみに日本仕様のZ06は、最高出力は規制の関係で本国仕様とは異なる排気系を採用するため646psと24ps低い。が、その発生回転域は8550rpmと、メーターパネル上ではまさにイエローとレッドの境界線上だ。つまり8600rpmとメーカー側が指定するレッドゾーンまで、きっちり回し抜くことですべてを出し切る、強烈な仕様となっている。

このZ06と同様に、GTカテゴリーのベース車両としての立ち位置を指向する同級のモデルとして考えられるのはアストンマーティンヴァンテージだ。また、前型がGT3カテゴリーでの最大勢力と化したメルセデスAMG GTも、先日発表された新型でその流れを継承するとみるのが自然だろう。

これらが搭載するのはツインターボのV8だが、Z06は自然吸気という点が、市販モデル同士で見てもひとつの個性となっている。ちなみに自然吸気の高回転型マルチシリンダーユニットを搭載する同級のスポーツモデルといえば、他にはレクサス LC500やランボルギーニ ウラカンといったところだろうか。

加速感、音、乗り心地などすべてのフィーリングがレーシー
Z06が搭載するLT6の回転フィールは、その向こうにレーシングユニットの存在があることを存分に感じさせてくれる。

シュンシュンと軽々吹けるというよりは、ギャンギャンと適度な摺動感を伝えながら吹けるそれは、いかにもきっちりとクリアランスが締められたエンジンの趣だ。さりとてピックアップが重いわけではなく、ブリッピングではバイクのようなレスポンスを示してくれる。

アウトプットもいかにも自然吸気の力感だ。低中回転域のトルクはさすがにターボユニットのようにはいかないが、そのぶん回すほどにパワーが二次曲線的に伸びていく。

8000rpmオーバーまでストレスは感じないが、フラットプレーンならではの細かな振動がエンジンとともに走るライブ感を高めてくれる。サウンドは澄んだ高音というよりは中音成分が多いが、その音圧の強さがクルマの性格と合っている。

乗り心地は、はっきりと硬い。さりとて、ワイドフェンダーに収まるタイヤの強烈な幅広ぶりを知れば十分許容できる範疇だ。運動性能的にもタイヤの存在感が強く、公道レベルでは前輪でグイグイと曲がっていく感が強く現れる。ロードゴーイングレーサーという成り立ちを隠そうともしないシャシのキャラクターを知るには、やはりクローズドコースに持ち込むのが筋だろう。

それでもそのドライブが退屈でないのは、エンジンの図抜けた存在感によるところが大きい。絶滅危惧種の自然吸気にして、ここまでギチギチに攻めたユニットに触れられるという幸せが味わえる。

そういうスポーツモデルはもはや数えるほどしかない。この期に及んでGMがコルベット Z06を作った価値は、クルマ好きにとって計り知れないものがある。
(文:渡辺敏史/写真:伊藤嘉啓、井上雅行)

シボレー コルベット Z06 クーペ 3LZ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4685×2025×1225mm
●ホイールベース:2725mm
●車両重量:1720kg
●エンジン:V8DOHC
●総排気量:5454cc
●最高出力:475kW(646ps)/ 8550rpm
●最大トルク:623Nm(63.6kgm)/ 6300rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●タイヤサイズ:前275/30R20、後345/25R21
●車両価格(税込):2500万円

[ アルバム : シボレー コルベット Z06が目指した はオリジナルサイトでご覧ください ]

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