■そもそも決算書ってどうやって見るの?
突如として、日産とホンダ、そして三菱に関して「経営統合」の報道が出てきました。
先行きが不透明な自動車業界ですが、日系メーカーはどのような状況なのでしょうか。
今回は、各メーカーの2025年3月期 第2四半期決算(半期決算)をもとに「決算の見方」を含めて解説していきます。
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「決算書」は企業の成績表とも呼ばれており、誰もが企業の業績を客観的に判断するこができる資料になっています。
日本の自動車メーカーの決算は1年を4つに分けて発表します。第2四半期は第1四半期を足した「半期決算」、第4四半期は1年を通じての「本決算」として報じられますが、今回は1年の折り返し地点となる半期決算について注目してみたいと思います。
恐らくクルマ好きであっても「決算=我々には関係ない」と思う人がほとんどだと思います。
ただ、自動車産業は慈善事業ではなくビジネスなので。業績如何でやれる事/やれない事は大きく変わります。
例えば、皆さんが大好きなスポーツモデルやモータースポーツ活動はメーカーに体力がないと継続することが難しいです。
過去を振り返ると、リーマンショックの影響により多くの自動車メーカーがモータースポーツから撤退しましたが、これはメーカーの経営悪化(=業績不振)が原因による判断でした。
また、SNSなどで「〇〇が復活すれば絶対に買うのに」、「なぜ〇〇を出さない?」、「あのメーカーはクルマ好きの気持ちが解っていない」と言った話が良く出てきますが、復活させたい想いがあっても業績が伴わないければ実現することは難しいのです。
なので、クルマ好きの皆さんも少しは決算に興味を持ってもらい、お気に入りのメーカー、大好きなメーカーが、今どのような状況に置かれているのかを知ってほしいのです。
そんな決算書は自動車メーカーの企業サイト内の「IR情報」、「投資家情報」などの項目で見ることができます。
パッと見ると「数字ばかりで分からない」と思うでしょう。
最初は筆者(山本シンヤ)もそうでしたが、同業の先輩から「全部解らなくても問題なし。ポイントさえ押さえれば簡単!」と教えてもらいました。
読み解くポイントは大きく3つで、「売上と利益の関係」、「主力マーケット」、「利益増減要因」になります。
まず「売上と利益」です。
売り上げは「お金が入ってくるかどうか?」、利益は「儲かったかどうか?」になりますが、この2つの要素の増減を掛け合わせた4つパターン(増収増益/増収減益/減収増益/減収減益)で判断できます。ちなみに決算では前年度の同期との相対比較で表されています。
「主力マーケット」は日本の自動車メーカーは世界でビジネスを行なっていますが、当然得な地域、不得意な地域があります。
当然、生命線となる地域での売り上げと利益が業績に大きく影響しているのは言うまでもないでしょう。
スズキを除くメーカーの多くが北米と中国に軸足を置いたビジネスを行なっていますが、そこでうまく行かないと全体のリスクを背負う事にもなりかねません。
そして最後の「利益増減要因」ですが、簡単に言うと前年同期と比べてどのような要因で利益が増えた/減ったかを簡単かつ明瞭に確認できるデータになります。
その内訳は「為替変動の影響」、「原材料」、「販売の影響(台数やインセンティブ)」、「諸経費(労務費や研究開発費など)」などがありますが、その増減を見る事により、メーカーがどのようにビジネスを進めているかが解りやすく判断できる材料と言っていいでしょう。
では、実際に日本の自動車メーカーの2024年度中間決算を見ていきましょう。
今回特に注目したいメーカーは、いわゆる勝ち組である「スズキ」と負け組である「日産」です。
■各社の途中結果はどうだった? 注目したいスズキと日産の違いとは
ちなみに今回の中間決算はトヨタ、ホンダ、マツダが「増収減益」となっています。
まずトヨタの利益増減要因は、認証問題による生産停止の影響が大きい事が解ります。
スズキとスバルは「増収増益」。
中でもスズキは売上が11.7%増の2兆8550億円、利益(営業利益)は40.7%増の3349億となっています。
ちなみにスバルの増益要因は為替の影響が大きいですが、スズキはそれ以外の要因が儲けに繋がっています。
一方、「減収減益」だったのは日産と三菱です。
中でも日産の売り上げは1.3%減の5兆9842億円、利益(営業利益)は何と90.2%減の329億円と全く儲かっていません。
この結果から、経営の立て直しに向けて生産能力を20%削減、9000人の人員削減を行なう方針を掲げています。
このように中間決算が「明」と「暗」な結果となった2社ですが、その要因の1つは「アメリカ」と「中国」との関わり方でしょう。
この2つの地域は皆さんもご存じ通り、世界で圧倒的とも言える巨大なクルマ市場です。
ちなみに日産はどちらも重要なビジネスマーケットとなっていますが、最近はこの市場に様々な変化が起きています。
まずはアメリカです。
日本と違って「その場に在庫としておいてある新車を買う」のが一般的です。
筆者も現地のディーラーに行った事がありますが、広大な土地に新車がズラーっと並ぶ光景に圧倒されました。
しかし、コロナの影響と半導体不足でクルマの生産は停滞、一気に供給不足となりました。
この頃はディーラーも売るクルマが無いので苦労したようですが、逆を言えば何もしなくても売れたのです。
ただ、これらの問題が解決すると逆に在庫過多となり、それを売るために値引きに頼るビジネスを強いられています。
ちなみに半期の販売台数は1.6%減の159.6万台とそれほど減っていませんが、この値引きの影響が決算書の減益要因の「販売パフォーマンス(=販売報奨金)」に表れています。
この販売報奨金は他のメーカーも行なっているモノですが、-2000億円と膨大なのはそれに頼らざるを得ない商品側にも問題があったと、筆者は考えています。
ちなみに内田社長は「アメリカの急速なHEVシフトが読めていなかった」と語っていますが、それならばHEV化が更に遅れるスバルも同じく大打撃を受けているはず。
でも、現実はそんな事はありません。つまり、日産はユーザーが求めるクルマを出せていなかったのです。
もちろん、これまで新車投入が全く無かったわけではありませんが、ラインアップを増やせないため一つの車種のカバー領域が広く、それが故にニーズに合致しにかった所もあるでしょう。
■日産の失敗はあの「ダットサン」ブランドの失敗が要因?
続いて中国です。
モータリゼーションの飛躍的な成長によりマーケットが一気に拡大されました。
世界中のどのメーカーもビジネスを拡大していきましたが、ここ最近は不動産不況をキッカケに景気低迷が続いており、全体の需要は落ち込み始めています。
それにも関わらず、将来の成長を見越して投資を続けてきた影響で生産過剰状態が続いており、その影響から過剰な値下げ競争が行なわれています。
更に中国政府は自国メーカー優遇のために税制優遇、補助金、投資など行なっており、日本を含めた外資のメーカーはより厳しい戦いを強いられていますが、その中でも日産が主戦場とするノンプレミアム市場ではより辛いビジネスとなっています。
実は中国でもアメリカと同じように、ユーザーが求めるクルマが出せていません。
EVのパイオニアにも関わらず電動車の流れに完全に出遅れているだけでなく、各モデルの旧態化も大きな課題となっています。
なぜ、他のメーカーのようにニューモデルが出せないのでしょうか。
それは過去の戦略ミスの尾が響いているからです。日産は2012年ASEANでのビジネスを拡大するために「ダットサン」ブランドを復活。
低価格帯の車両を中心にしたラインナップで新興国需要を狙いましたが、結果は大失敗。
その理由は明確で「やすけりゃ売れるだろう」と言った新興国ユーザーをあまりにもバカにした商品企画が原因だったと筆者は分析しています。
日本のモータリゼーション発展期、日産サニーに対して、「+100ccの余裕」を武器に登場したカローラのほうが売れました。
その悔しさから「隣のクルマが小さく見える」のキャッチで登場した2代目サニー。要するに高価なクルマを買うならば「いいモノ」が欲しい。そんな“心”を当時の日産は忘れてしまっていたのでしょう。
ちなみにこのダットサンの失敗による巨額の損失の煽りを受け、他の仕向け地向けの新車開発も滞ってしまったと言うわけです。
■勝ち組と言える「スズキ」は何が強いのか
一方、スズキはどうでしょうか。
ちなみに主力市場はインド、日本、欧州と他のメーカーとは全く異なります。
過去には北米、中国でもビジネスをしていましたが、北米は2012年、中国は2018年に撤退しています。
スズキが得意な世界2大市場を捨てた決断は、鈴木修会長の動物的な“勘”によるモノと言わることもあります。
しかし、冷静に考えればどちらの仕向け地も大型車や高級車が求められる市場であり、「小少軽短美(しょうしょうけいたんび)」を企業理念とするスズキには「旨味が無い」と感じる部分もあります。
恐らく、他に勝負できる地域がなかったらこのような決断はできていないと思いますが、スズキには「インド」があります。
進出を決めたのは1981年です。インドの国営企業「マルチ・ウドヨグ(後に民営化されてマルチ・スズキとなる)」にアプローチして手を組んで参入。
1983年にはアルトをベースにした「マルチ800」を現地生産。地元メーカーのクルマより低燃費、信頼性の高さ、そして安さが高く支持され大ヒット。以降、スズキとインドとの関係は絶対的なモノとなっています。
ラインアップは日本のモデルとは異なる独自モデルも多く、ニーズに合わせたきめ細かい対応も人気の秘密だと言います。
インドで人気なのは税金の優遇措置が得られる全長4m未満のモデルが主となっています。
それらのモデルは「小さいから我慢」ではなく、高級ブランド(NEXA:ネクサ)や商用車販売店なども用意するなど、日本以上にきめ細やかなビジネスを進めています。
そんなインドで生きる決断をしたのは鈴木修氏(当時は社長)で、「本当は大手と同じように先進国に進出したい気持ちがあったが、『小さなクルマを作ってほしい』と言ってくれる国はインドの他にはなかった。だからインドに行った」と語っています。
ちなみに2023年のインドでの販売実績は179.4万台(市場シェアはトップの41.6%)。ちなみにこの販売実勢はグローバル販売台数の約41%となっています。
今後も経済成長と共にクルマを購入する層の増加が期待されているのでまだまだ伸びるはずですが、その一方で日本や先進国と比べると金融市場が不安定な事もあり、何かあった時には大きな打撃を受ける可能性が無いとは言い切れません。
そういう意味では、「インド一本足打法」のリスクが無いと言えば嘘になりますが、現時点ではまだまだ成長は続くと思われます。
今回は日産/スズキの決算を元にその背景を語ってみましたが、間違いなく言える事は自動車メーカーのビジネスは、どの市場で勝負するにせよ、クルマ、つまり商品で勝負できなければダメと言う事です。
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