創刊以来、65年の歴史を刻むモーターマガジン(MM)が持つアーカイブから、ちょっと懐かしく珍しいクルマを紹介する、大型連休の短期連載企画。第6回は「コスワース」が手を加えたフォード シエラだ。
フォード シエラRSコスワース(1985年)
フォードがグループAツーリングカーレースの出場を目指して作り上げたクルマが、このシエラRSコスワースだ。ロンドン北東のサセックスに本拠地を構えるフォードの特殊車両部門が開発を担当し、ベルギーのフォード工場で生産された。
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そのネーミングからも分かるように、レーシングエンジンのスペシャリストとして名高いコスワース エンジニアリングの手によって開発されたエンジンが搭載されている。フォード製の2Lエンジンブロックにコスワース特製の4バルブDOHCヘッドが架装され、さらにギャレット製のターボチャージャーとインタークーラーが装着され、パワースペックは204psの最高出力と28.1kgmの最大トルクを発生している。
そのハイパワーに見合うかのように、エクステリアもオーバーフェンダーやバンパー一体のフロントスポイラー、そしてなんといっても巨大なリアウイングによって迫力を増幅している。インテリアは、レカロ製のシートや本革巻きのステアリングなどが装着されているが、エクステリアほどの派手さはない。
イグニッションをONにすると、ターボによる排気音の減衰作用もあるが、ハイパワーなパワーユニットとは思えないほどエンジン音は静かだ。スロットルワークに対して回転の立ち上がりはやや重めだが、ターボの過給が始まる2800rpm以前でも実用上の不満のないトルクは発揮されている。
3500rpmあたりからターボによるトルクの増幅が始まり、4000rpm以上になるとスロットルワークでリニアな加速を得ることができる。そのフィーリングはターボというよりは良くできた自然吸気のV6エンジンのような印象だ。
強化されたスプリング&ダンパー、そしてスタビライザーによって、乗り味は相当に締まった感触だ。とはいえ、ダンロップSPスポーツD40タイヤとの相性は良く、路面からの突き上げも少なく不快な乗り心地でない。
ステアリングは、直進部にはわずかにダルな部分を残しているが、少し切り込めばクイックで、しかも安定したアンダーステアに終始してくれるので、ワインディングを走るのが楽しくなる。しかも実際のサイズよりもボディはコンパクトに感じられ、また後方視界をスポイルしているように見える巨大なリアウイングも、ルームミラーから見る必要な後方視界を思ったほど妨げてはいなかった。
過去にもエスコートRS、カプリRSなど、いくつもの傑作を生み出してきたヨーロッパ フォードとコスワースのゴールデンコンビ。このシエラRSコスワースも、本当に走り込むことで、その面白さや実力の深さを堪能できる、素晴らしく味のあるツーリングカーに仕上げられていた。
フォード シエラRSコスワース 主要諸元
●全長×全幅×全高:4390×1720×1360mm
●ホイールベース:2610mm
●重量:1195kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ
●排気量:1993cc
●最高出力:204ps/6000rpm
●最大トルク:28.1kgm/4500rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/50VR15
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