仕事と趣味で大活躍のピックアップトラック
荷台の広さ、多用途性、快適性、走行性能といったさまざまな観点から、筆者(英国人)が特に注目している最新ピックアップトラックを10台紹介する。
【画像】いすゞの「最新モデル」がカッコいいぞ!【いすゞDマックス(欧州仕様)を写真でじっくり見る】 全37枚
ピックアップトラックは商用車としての実用性やタフさと、乗用車のような乗りやすさ、性能を併せ持つ。農業や建設業に使う人もいれば、趣味のアウトドアや日常使いに選ぶ人もいる。
近年は、SUV並みの快適性と洗練性、デザイン、ファミリーカーとしての汎用性で、多くのユーザーを魅了している。少数ながらバッテリーEVも選べるという状況だ。
日本ではあまりメジャーな存在ではない(軽トラを除く)が、米国や新興国市場だけでなく、欧州市場でも一定のシェアを持つ。
今回はあえて、欧州で販売されているモデルからベストを厳選した。見た目やドライビング・エクスペリエンスにうるさい欧州のユーザーは、どんなピックアップを選ぶのか。
1. フォード・レンジャー
長所:幅広いエンジンラインナップ、正確で落ち着いたハンドリング、競争力のある価格設定
短所:EV版は(まだ)ない、高性能モデル「ラプター」は実用車ではない
2023年、第3世代となる新型フォード・レンジャーが欧州に導入された。レンジャーは、英国などで最も人気の高い小型トラックだ。そのため、フォードもかなり力を入れて開発している。
1990年代後半の初代レンジャーはマツダとの共同開発で誕生したが、新型は第2世代(T6)のプラットフォームを発展させたものをベースに、フォルクスワーゲンとの協業により完成した。フォルクスワーゲンからはアマロックとして販売されている。
新型レンジャーは、フォードの象徴的トラックであるF-150のデザインの影響を受けつつ、スクエアで無骨な外観になった。さらに、最新の縦型タッチスクリーンやデジタルメーターが導入され、デジタル感がアップ。インテリアのレイアウトと素材の質感も著しく向上している。
エンジンラインナップは拡大され、標準車には最高出力170psまたは205psの4気筒ディーゼル、240psのV6ターボディーゼル、そして高性能モデル「ラプター」には最高出力210psのディーゼルと292psのV6ターボガソリンが用意される。
2025年には、ガソリンベースのPHEV(プラグインハイブリッド)版が登場する予定だ。
4気筒ディーゼルエンジンは、強力なトルクだけでなく、優れた洗練性を持っている。10速AT(エントリーモデルのみ6速MT)も、動きがなめらかで快適である。
運転してみると、同クラスの乗用車と比べても妥協点がかなり少ない。リーフスプリング式リアアクスルは硬めのフィーリングで、ゴツゴツ路面や段差では多少気になるものの、それほど不快感はない。一方、ステアリングはトラックとしては異例なほど正確で、一体感があり、適切なボディコントロールとグリップを備えている。
ダブルキャブ仕様が一般的だが、シングルキャブ仕様も用意されている。ただし、シングルキャブの装備はベーシックなもので、非力なエンジンとMTしかない。
荷台はユーロパレットを積めるほど広くなり、最大積載重量は仕様によって異なるが、1035kgから1207kgまで対応する(レンジャー・ラプターは少ない)。
レンジャー・ラプターには、ダカールの砂丘を走るようなフォックス製サスペンションが装備されている。ロングトラベルのスプリングとダンパーにより、ラフな地形でもとんでもないスピードで走破することができる。さらに(お財布には優しくないが)、3.0L V6ツインターボガソリンエンジンは最高出力292psと非常にパワフルだ。
手頃な価格設定、幅広いモデルの選択肢、オンロードとオフロードでの走りの進化により、今最も注目したいピックアップトラックとなっている。
2. トヨタ・ハイラックス
長所:優れた実用性、高い耐久性、トヨタディーラーの充実したサービス
短所:4気筒ディーゼルエンジンは少しうるさい
トヨタ・ハイラックスは1960年代後半から世界各地で販売されており、汎用性、信頼性、耐久性の高さで定評がある。最新モデルにはフル装備の高級グレード「インヴィンシブル」が導入され、魅力を幅を広げた。ここ数年、欧州市場シェアを独占してきたフォード・レンジャーに異議を唱えた唯一のトラックである。
どの仕様においても基本的に快適で、インテリアの質感も高く、一部のライバル車より洗練されていて使い心地が良い。また、ハンドリングと乗り心地には安定感があり、狭い街道路でも取り回しがしやすいよう、ちょうどいいサイズにおさまっている。
2019年の改良では、バンパーデザインを変更し、装備の一部を見直したほか、アクティブ・セーフティ・システムを強化。翌年には再びシャシーと内外装を改良し、乗り心地とハンドリングのレベルをさらに一段階引き上げ、新グレードとしてインヴィンシブルXを追加した。
その後、ダカール・ラリーでの活躍を記念して「GRスポーツ」が設定され、最近もまた「GRスポーツII」が登場した。ただ、オンロードでは優れた走行性能を発揮するが、オフロードではフォード・レンジャー・ラプターに敵わない。
欧州では現在、最高出力150psの2.4L直4ディーゼルと204psの2.8L直4ディーゼルが用意されている。後者の方が洗練性が高く、性能も優れているが、ライバルの多気筒エンジンほどの面白みはなかった。
実用性の高さは抜きん出ており、その余裕ある最大積載量は多くのライバルを上回る。ダブルキャブ仕様が一般的だが、2.4Lモデルではシングルキャブ仕様とエクストラキャブ仕様が選べる。
3. いすゞDマックス
長所:タフでお値打ち、英国の農家からは高い評価を得ている
短所:乗り心地とハンドリングが粗い、ディーゼルエンジンのパワー不足
一般的なドライバーには馴染みの薄いいすゞだが、欧州ではDマックスが静かに、しかし根強く支持されてきた。2021年に登場した新型は、見た目も中身も全面的に刷新されている。
Dマックスには必要最低限の機能のみを与えられた「ユーティリティ」から、強化サスペンションやオフロードタイヤを備えた「アークティック・トラックス」まで、さまざまなモデルが用意されている。さらにシングルキャブ、ダブルキャブ、エクステンデッドキャブと選択肢は豊富だ。
厳しいことで有名な衝突安全テスト、ユーロNCAPで5つ星(最高得点)を獲得したほか、インテリアも使いやすく、先代モデルより格段に進化している。ラダーフレームを採用しているため、乗り心地やハンドリングではライバルに劣る面もあるが、非常にタフで、オフロードでも高い性能を発揮する。
遅れをとっているのはパワートレインだ。先代と同じ1.9Lディーゼルを使用し、静粛性は高くなったものの、最高出力162psと力不足が否めない。6速ATでも6速MTでも、0-100km/h加速に13秒近くかかる。
しかし、価格設定がハイラックスなどを下回っていることから、多少の欠点も許容されるだろう。
4. フォルクスワーゲン・アマロック
長所:乗用車としても親しみやすく魅力的
短所:兄弟車フォード・レンジャーより価格が高い
どちらかというと乗用車に近い、いわば「ライフスタイル系」のピックアップトラックの人気の火付けが初代フォルクスワーゲン・アマロックである。当時、多くのメーカーからも豪華装備のモデルが販売されていたが、アマロックほど多面的な魅力を持つものはなかった。トラックとしての実用性を持ちながら、内外装の質感はゴルフのように親しみやすいものであった。
新型アマロックは、フォードとの共同開発によって誕生した。開発の主導権を握ったのは、販売面で期待の大きいフォードであり、第2世代レンジャーのプラットフォームの改良版をベースとしている。ルーフパネル、ドアハンドル、サイドミラーハウジングなどがレンジャーと共通だが、がっしりとしたアグレッシブな印象となっている。
インテリアにはフォルクスワーゲン独自の素材が使われており、質感はかなり高い。装備も充実しており、快適で乗りやすく、SUVに近い感覚を覚える。
エンジンは複数あり、中でも最高出力240psの3.0L V6 TDIディーゼルと10速AT、フルタイム四輪駆動の組み合わせがよく選ばれている。ハンドリングは良好で、初代モデルよりも快適性が向上した。しかし、リーフスプリングのリアアクスルは依然として騒がしい。
ピックアップトラックにも乗用車のような質感と親しみを求めるなら、アマロックがおすすめだ。
5. KGMムッソ(旧サンヨン・ムッソ)
長所:コストパフォーマンス、荷台の柔軟性、居住空間
短所:快適装備が少ない、乗り心地が粗い
手頃な価格のピックアップトラックが、韓国のKGM(旧称:サンヨン)から発売されている。ムッソという車名は、韓国語で「サイ」を意味する。バジェットカーのイメージが強いブランドだが、ムッソは十分なハンドリングと牽引能力、実用性を持っている。
比較的パワフルな最高出力202psの2.2Lディーゼルを搭載し、ブレーキ付きトレーラーならAT車で最大3500kg、MT車で3200kgの牽引力を誇る。
荷台長が1300mmと短く、少々特殊なフォルムに見えるが、キャビンには4人の大人がゆったり乗れるだけの広さがある。また、全長も短いため、狭い街中での取り回しに優れている。最上級グレードの「サラセン」では荷台が1610mmに延長され、フォード・レンジャーやトヨタ・ハイラックスよりも長くなる。
運転してみると、意外にもコーナリングが得意であることがわかった。グリップとロール制御が優れており、小径のステアリングホイールはかなり軽く、ライバルよりもセンターフィーリングが良い。ロードノイズや風切り音の少なさも同様だ。
乗り心地は許容できる閾値をわずかにクリアする程度だが、エンジンは低回転域でトルクフルで、巡航中はトランスミッションとの相性も良く静かだ。
来年、KGMは新型SUVのトーレスをベースにした電動ピックアップトラックを発売する予定だ。
6. マクサスT90 EV
長所:コストパフォーマンスが高い
短所:質感は高くない、落ち着きのない乗り心地
欧州では商用車の電動化が着々と進んでいるが、ピックアップトラックはまだまだ「これから」といったところ。希少な電動トラックの1つがマクサスT90 EVだ。
中国の巨大企業SAIC(上海汽車)が所有するマクサスによって、欧州市場を強く意識して開発された中型トラックである。英国では1000kg以上積載できるが、他の国や地域では1000kg未満に制限される。
マクサスは、SAICが英国の商用車メーカーであるLDV(旧:レイランドDAF)を買収した際に誕生した。そのためか、T90 EVは特に英国販売に力が入っており、60店舗からなる現地ディーラー網を通じて、税抜き5万ポンド(約950万円)弱から発売されている。電動商用車のため従来のディーゼル・トラックよりも税制優遇が厚く、大幅な節税になる。
最高出力204psの電気モーターを搭載しており、パワーと加速力、ドライバビリティは十分だ。しかし、パワートレインは近代的だが、内外装はかなり地味で、装備もまばらだ。
乗り心地とハンドリングは、ピックアップトラックであることを考慮してもやや粗い。特に乗り心地は、積載能力強化のために損なわれている。
実走行での航続距離はおよそ320kmで、高速道路を多用する場合はもう少し短くなる。
7. イネオス・グレナディア・クォーターマスター
英国の大手化学会社であるイネオス・グループの自動車部門(イネオス・オートモーティブ)は、大型SUV「グレナディア」を販売している。そのピックアップトラック版がクォーターマスターだ。
価格は6万6215ポンド(約1260万円)から。弊誌はまだ試乗できていないが、走りはSUVのグレナディアに非常に近いはずだ。ボディはSUVより305mm長く、荷台は長さ1564mm、幅1619mmで、標準的なユーロパレットを積める大きさだ。
最大牽引能力3500kg、最大積載量は835kgまたは760kg(ガソリン車とディーゼル車で異なる)。積載量はやや少なく、また高価であるため商用車というよりは高級乗用車と見るべきだろう。とはいえ、荷台には400Wの電源と4つのタイダウンリングが装備され、テールゲートはオープン時に225kgまで支えられるなど、実用性は低くない。
最低地上高は264mmで、最大渡河能力は800mm。アプローチアングル35.5度、ブレークオーバーアングル26.2度、デパーチャーアングル22.6度と、ピックアップトラックとしてはトップクラスのオフロード性能を誇る。
8. フォードF-150ライトニング
長所:巨大、速い、快適
短所:巨大、重い、左ハンドルしかない
フォードは、米国の大手トラックメーカーの中で最初に、大型ピックアップトラックF-150のEV版「ライトニング」を導入した。発表自体はテスラ・サイバートラックより早く、結果的に多くのブランドが追随する形となった。
北米では数年前から販売されており、現在フォードはグローバル市場に目を向け始めている。すでにEV大国ノルウェーへの導入が決定し、他の欧州諸国への導入も検討中と言われている。今のところ、左ハンドルしかないものの、弊誌の英国編集部も興味をそそられて試乗した。
結果は期待を裏切らなかった。試乗車は3.1トン強、旋回半径に7.5m以上を必要とする。それでも、0-97km/h加速4.5秒、1/4マイルを13.5秒未満で走破し、いずれも名高いE46世代のBMW M3よりも速かった。
無負荷走行では、F-150ライトニングは航続距離480kmを達成した。重いバッテリーを搭載しているため、最大積載量(800kg)は制限されるものの、建設現場などで電動工具用に最大9.6kWの電力を供給でき、テールゲートに巨大のステップが隠された1.7mの荷台を持つ。さらに、完全独立サスペンションで驚くほど快適な乗り心地と、巨大で快適なキャビンを備えていた。
そのボディサイズや高い価格設定により、従来のF-150ほど普及することはないだろう。しかし、驚くほど汎用性が高いため、さまざまな使い道を想像できる。
9. GMCハマーEV
長所:怪物的な速さ、オフロードで超有能、カニ歩きができる
短所:4トンの車重、入手が難しい
GMCのハマーEVは最も過剰なピックアップトラックかもしれない。最上位モデルでは、最高出力1000psと約138kg-mのトルクを持つトライモーター・パワートレインを搭載し、バッテリー容量は213kWhと巨大で、車両重量は4トンを少し超える。そのため、通常の運転免許では運転できない場合もあり、従来の乗用車や小型商用車というカテゴリーからは少し外れた存在だ。
ゼネラルモーターズのEV専用プラットフォーム「アルティウム」をベースに作られた新世代のEVだが、装甲のようなアンダーボディプロテクトを備え、比類ないオフロード性能を発揮する。前輪と後輪を同じ角度に傾け、まったく旋回することなく横へ移動する「カニ歩き」もできる。
エアサスペンションにより、乗り心地もかなり穏やかだ。しかし、北米市場以外で正規販売される可能性は低く、入手ルートは限られる。
10. ヘネシー・マンモス1000 TRX
長所:究極のステートメントトラック、速い、タフ
短所:15万ポンド(約2850万円)と非常に高価
フルサイズ、左ハンドルのアメリカン・トラックを走らせるのは大変だ。道路標識は小さく見えるし、駐車スペースからはみ出すことも当然で、駐車券の取り逃しなど、さまざまな不便を強いられる。そこまで苦労するなら、いっそのこと「突き抜けた」トラックに乗った方が良いという人もいるだろう。
テキサス出身の悪名高いチューナー、ジョン・ヘネシーによって大改造されたダッジ・ラムのマンモス1000 TRXは、最高出力1012psの6.2LヘルキャットV8スーパーチャージャーを搭載。これまで生産されたピックアップトラックで最速と謳われている。
ヘネシーによれば、全長5.8mの巨体にもかかわらず、0-97km/h加速はわずか3.2秒だという。また、ブレーキ付きトレーラーで4000kg近くまで牽引することができる。
なぜ、こんなクルマを作ったのか? ヘネシーは単に「可能だから」という理由でマンモス1000 TRXを開発した。それ以外の理由はない。
運転してみると、巨大なだけでなく重さもかなり感じられ、静止状態からの加速は思ったほど速くはない。しかし、一旦走り出せば激しい加速性能を見せる。
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