この記事をまとめると
■アメリカの南カリフォルニアでは相変わらず街なかにテスラがあふれている
BYDがメキシコに「用地取得」の噂で戦々恐々! アメリカに進出すれば一気に普及の可能性アリ
■すべてのメーカーがBEV購入に対して魅力的な特典を設けているわけではない
■BEVの乱売傾向は短期的に収束することはない
カリフォルニアの路上ではEVの姿が目立つ
2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大によって事実上海外渡航ができなくなり、それまで毎年9月末に行っていた「南カリフォルニアドライブ旅行」ができなくなった。感染拡大の勢いが収まり、ようやく気軽に海外へ行けるようになった2022年に久しぶりに南カリフォルニアを訪れると、そこにはBEV(バッテリー電気自動車)が溢れていた。溢れているとはいっても、走っているのはテスラ車ばかりであった。たまに韓国系ブランドやGM(ゼネラルモーターズ)のコンパクトBEVも走っていたが、地元事情通にいわせれば、「韓国系BEVは個人所有というよりはたいがいはレンタカーですよ」と冷たいコメントを寄せてくれた。
2023年に訪れても相変わらず街なかのBEVはテスラばかり。東京都内でいえば、山の手とか、城西地域に近い富裕層が多く住む地域へ行けば、VW(フォルクスワーゲン)や、メルセデス・ベンツといったドイツ系や、地元アメリカの新興BEVメーカーの車両も目立っていた。
韓国系もコンパクトモデルだけではなく、ミドルサイズのクロスオーバーSUV風BEVなどが走っており、韓国系とはいえレンタカーだけが走っているというわけでもなさそうであった。
そして2024年に再度訪れると、相変わらずテスラ車を多く見かけるのだが、2023年にはほとんど見かけることがなかった、フォード・マスタングマッハEがガンガン走っていた。年を追うごとにラインアップも増え、普及も進んでいるのだから当たり前ともいえるのだが、その様子にはどこか違和感を覚えていた。
そこで地元事情通に話を聞くと、「カリフォルニア州がモデルイヤー単位で、つまり2035年モデル(2034年秋より切り替え)からBEVとPHEV以外の販売を禁止するというのはご存じかと思います。ただ、州政府としては、それまでも段階的にBEV(PHEV)の販売比率引き上げを要求しております。2026年モデルについては全体の35%、2030年モデルでは68%、そして2035年に100%ということです。この規制値未達成のメーカーへは罰金も科されることになります。2026年モデルといえば2025年秋から切り替えとなります。つまり、BEV(PHEV含む)販売比率をあと1年ほどで35%にしなければなりません。たとえば2023年1月から6月の新車販売台数でみると、全体の約24%となっております。そのため規制クリアのために、いま南カリフォルニアだけを見てもBEVが乱売されているのが実状です」と話してくれた。
地元テレビコマーシャルやディーラーウェブサイトをみると、たとえばヒョンデのアイオニック5の2024年モデルでは、金利0%での60回ローンや、2023年モデル、つまり長期在庫車なら1万4000ドル引きとなっていた。フォード・マスタングマッハEでは36カ月のリース契約での月額リース料金が308ドル(約4万5000円)、シボレー・ブレイザーEV(ピックアップトラックタイプ)で24カ月リースでの月額リース料金が299ドル(約4万4000円)と同クラスICE(内燃機関)車と比べても魅力的なリースプランになっていた。
ホンダとGM(ゼネラルモーターズ)との共同開発車で今年春から発売された、ホンダ・プロローグは、某ディーラーにて24カ月リースの月額リース料金が199ドル(約3万円)となっていた。
規制をクリアするために利益よりも台数重視
すべてのメーカーがBEVに魅力的な特典を設けているわけでもないし、この傾向はBEVだけではくICE車でも見受けられるのだが、「日本に比べればはるかに高金利社会のアメリカで低金利や0%ローンを用意するなど、ここまでの魅力的なファイナンスプランでは利益は取れていないでしょう。まさに規制値クリアするための『利益より台数を売る』という流れにシフトしているブランドが多いですね」(事情通)。
また、南カリフォルニアでクルマに興味のある人や業界関係者と話をすると、「BYD」という言葉がひんぱんに飛び出した。大統領選真っ最中のアメリカでは、民主党、共和党とも大統領候補は中国製BEVのアメリカ進出を関税引き上げなどでけん制している。
南カリフォルニアでも「BYDがメキシコに工場用地を取得した」といった情報が流れており、「メキシコ製」で政府の動きをかわしてアメリカ進出してくるのではないかという危惧も、いまのBEVの乱売ともいえる状況を生み出しているのかもしれない。
まずはカリフォルニア州においては、2025年秋まではBEVをほしいと考えている人にとっては絶好のチャンス到来となっているようであった。
ほぼ100%自然発電による電力で賄い、充電インフラも目に見えて増えているのだが、それでもBEVの増加には対応しきれていないようにも見える。また、単に日々の燃料代をセーブしたいという人を中心に、トヨタを中心とした日系ブランドのHEV(ハイブリッド車)というものも単に人気が高いだけではなく、より広い人にその性能が認知されるようになっており、これもBEV販売へアクセル全開となっていないようである。
2033年から2034年秋あたりをめざしてICE車の駆け込み購入も目立ってくるともいわれているので、BEVの乱売傾向は短期的に収束することはないかもしれない。
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みんなのコメント
まさに対岸の火事
日本勢は地盤固めて頑張っていきます
愚かな政策当局たちだ。