戦前・戦後の「最高速」競争
今年4月に開幕した北京モーターショーで、「EXE181」と名付けられた電動ハイパーカー・コンセプトが公開された。英国をルーツとするMG社が創立100周年記念で製作したもので、超低車高とセンター配置のシングルシートが特徴だ。
【画像】1人乗りの過激ハイパーカー登場【北京モーターショー2024で公開されたMG EXE181コンセプトを写真で見る】 全13枚
未来的なコンセプトカーだが、実は67年前の名車「EX181」からインスピレーションを得ている。「EX」とは「Experimental(実験的な)」の意で、当時の陸上速度記録を塗り替えた歴史がある。
この物語を正しく語るには、時代をさらに遡る必要がある。1930年、エンジニアでありレーシングドライバーであったジョージ・エイストン氏とアーネスト・エルドリッジ氏は、MG創業者のセシル・キンバー氏と手を組む。エイストン氏が経営するパワープラス社のスーパーチャージャーを使用して750ccクラスの最高速記録を奪い、両社のプロモーション材料とした。
ベースとなったのはMGの新型Mタイプ・スポーツカーで、エンジン出力を3倍の60psに増強し、流線型ボディの「EX120」を作り上げた。そして、フランスのモンレリー・サーキットで750cc車として初めて最高速度160km/hを超えた。
エイストン氏は激しいクラッシュで入院を余儀なくされたにもかかわらず、次の「EX127」の製作に取りかかった。風洞実験によって空力性能をさらに高め、ドライビング・ポジションを低くした。このマシンは750ccクラスの速度記録を190km/hまで引き上げることになる。
1934年、エイストン氏は1100ccクラスにも狙いを定め、MGのKタイプ・スポーツカーをベースに「EX135」を製作。最高速度190km/hを記録した。
数年後、EX135は伝説的なエンジニア、リード・レイルトン氏によって改良され、低く滑らかなカプセル型ボディを獲得。そして1939年5月、レーシングドライバーのゴールディ・ガードナー氏の運転により、ドイツのアウトバーンの長い直線区間を使い、1100ccおよび1500ccクラスで320km/hを超える記録を打ち立てた。
EX135はポテンシャルが高く、戦後何度も改良が加えられ、最終的には350cc、500cc、750ccのクラスでも記録を更新した。
記録を脅かすような競争相手が少なかったにもかかわらず、MGは挑戦をやめなかった。1954年、カプセル型ボディにモーリス・マイナーの948cc 4気筒Aシリーズエンジンの改良版を載せた「EX179」を開発。ドライバーを引退したエイストン氏がプロジェクト責任者となった。
しかし、EX179は期待に応えることができなかった。結果的に、1939年以来MGが保持してきた1500ccクラスの記録を塗り替えたのは、1957年の「EX181」だった。
平たい車体に押し込まれるF1ドライバー
MGの研究開発では、餅を引き伸ばしたような平らなボディで、左右の後輪をぐっと近づけるのが理想的とされた。後部にはフィンが取り付けられ、ドライバーは小さなキャノピーの中に入ることになった。
都合の良いことに、英国のトップF1ドライバーであるスターリング・モス氏は身長170cmと比較的小柄であった。それでも車内には最低限のスペースしかなく、つま先はノーズにほぼ触れ、脚にステアリングラックが当たっていた。エンジンはリクライニングシートの真後ろにある。
このデザインは風洞実験でも効果があったようで、EX179に比べて前面投影面積が10%減少し、空気抵抗は30%も減少した。
ちなみにエンジンは、MGの新型Aスポーツカーに搭載されていたダブル・オーバーヘッド・カムの4気筒Bシリーズで、ショーロックのスーパーチャージャーと84%メタノール燃料を使い、7300rpmで300psを発揮する。それゆえ、このEX181は「轟音の雨粒(Roaring Raindrop)」とも呼ばれた。
同年8月、EX181はMGの英アビンドン本社から米ボンネビル・ソルトフラッツに輸送され、モス氏はヴァンウォールでのペスカーラGP優勝直後にイタリアから駆けつけた。
雨で記録挑戦が中止になるのではと心配されていたが、最終日の午後、モス氏はMGに乗り込み、ステアリングホイールを握った。その数分後、ジョージ・エイストン氏が計測小屋から395km/h(時速246マイル)を達成したことを確認。
その2年後、今度はフィル・ヒル氏の手によって410km/h(時速255マイル)を記録し、2000ccクラスの記録を塗り替えた。
これがMGにとって最後の記録挑戦となった。もし、今年北京で披露されたEXE181がマーケティングツールなら、やるべきことは1つだ。
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